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ひそひそ話じゃないとガチめに怒られるバー、Burp Castle がアメリカじゃなさ過ぎてビビった話

<アメリカのバー事情>

筆者がアメリカで生活しているうえで、どうしても慣れないことが一つある。とにかく、バーがうるさい!

アメリカは、ビール大国である。筆者もビールが大好物なので、かなりの頻度で居酒屋やバーに足を運ぶが、そんな筆者を悩ませ続けるのが、バーうるさすぎ問題である。

日本でのバーの印象は、素敵なドラマが生まれる場所。静かにお酒をたしなみ、恋人たちが愛をささやき、フォーマルな服装に身を包んだバーテンダーが、今宵を彩る最高のカクテルを提供する、そんな大人の社交場である。

アメリカにももちろん、その様なバーはたくさん存在する。ただ、そのほとんどは、特別な日に楽しむ場所であり、ちょっとひっかけに行こうぜって日は、決まって大衆向けの、カジュアルなバーを利用する。

まぁーーーーー、うるさい。クラブですかって音量で流れてる音楽、椅子がたくさん空いているにもかかわらず、謎に立って飲んでいる人。バーテンダーに注文をするときも、友達同士で話すときも、耳元で大声で叫ぶなんかの試合ですか?もしくは、まるで山越しにやまびこで会話してるアンデス山脈の方々ですか?

<頼む、みんな、落ち着いてくれ>

そんな話を筆者の住むニューヨークで友人としていた時だった。「 Burp Castle ってバー、知ってる?」

知らなかったので詳しく話を聞いてみると、「その店にいる店員さん、お客さん、その全てが静かに過ごさなければならない。会話はひそひそ。君にピッタリだと思うよ」

おおぅ、それは筆者にピッタリの店だ。ただ待てよ、あのうるさいバーに居た、アンデス山脈の方々がもしその店にフラッと立ち寄った場合、どうなってしまうんだろう......

うん、店員さん、マジで、キレる

いい!!いいよ、その緊張感。好きだよ!!

<いざ、出陣>

次の日に、全力疾走で向かったのがここ、Burp Castle。外から見た感じがこれだ。

そしてこれは入口のドアだ。まるで、選ばれし者のみが通ることを許される、難攻不落の牙城。うるさくしたら、わかっているな?

さぁ、ここからは細心の注意を払って進まなければならない。心は決まった。行こう。

そうしてドアを開けた瞬間、筆者は衝撃を受けることとなった。

なんか音楽変なんですけどーーーー!!

<衝撃の店内>

もちろん静かにする店なので、音量は最小限に抑えられている。ただ、音量うんぬんではなく、なんというか、ジャンル的に、なんか、もう、すごい。どう説明すればよいか。頭に思いついた言葉を並べるなら、ミサ、仮面舞踏会、秘密結社、知ってはいけない世界の裏側、蝋人形の館、いや、もうむしろ聖飢魔Ⅱ。蝋人形にされるなら、せめて優しくしてほしい。

そしてその次の瞬間、更に筆者を圧倒する、内装の数々に出会う。

......異界の入り口が見えた気がした。それでは皆さん、行ってきます。

極力足音を立てないよう、静かにバーカウンターに向かう。今まで訪れたことのある飲食店、バーの中で、間違いなく一番静かである。店内には、およそ7人ほどのお客さんが居るが、おのおのが思い思いの思考を巡らせ、音一つ立てず、グラスを傾けている。カップル、グループで来ている方々も見受けられるが、やはり噂は本当だった。全員がひそひそ話をしているのである。

さぁ、オーダーをしよう。どうしよう、まずはビールだ。極力バーテンダーとの会話量を減らしたいため、バーテンダーのおすすめをサッとオーダーして終わりにしよう。

そして最初の一言目の音量が、かなり重要になってくるぞ。テンパって小さすぎても聞こえない、とはいえ大きすぎたら蝋人形にされる。よし、慎重にいけよ。

筆者「貴方のおすすめのビールをください」
バーテンダー「ピルスナー、スタウト、IPA、どれがいい?」

......うん、完全にミスった。向こうからしたら、せめてビールの種類だけ決めてくれって話しだ。こんなことなら、自分で決めて、そのビールの名前を言って終わりでよかったじゃないか。なのにむしろ、話す機会が増えてるじゃないか......

落ち込んだ。

そんな時は、いつも祖国を想う。

" 日本の父さん、その後風邪などひいていませんか?今日も僕は、元気です。" 

......違う違う、ただビールオーダーするだけでいいから。ちょっと緊張はするけど、自信持っていこうよ。

よし、

「ピッ、ピルスナーでお願いします」

若干テンパったが、音量としてはセーフの範囲だろう。

こうして、無事ビールをゲットした筆者は、テーブル席に座り、やっとビールを楽しめることとなった。

<静寂の店内>

うん、やはり静かなのは、いい。凄くいい。若干緊張感は漂うが、ゆっくりできるし、色々な事を考えられるし、何より落ち着く。大都会、ニューヨークの喧騒の中に、ポツンとたたずむ、癒しの場。筆者はここが、大好きである。やっと見つけた、静かなバー。静かすぎるし、店員に怒られるリスクを多少はらんではいるが、大好きである。

............!!!!
ここで痛恨のミスを犯している事に気づいた。携帯をマナーモードにしていない!!!。何が大好きだ、もしここで携帯が鳴ろうものなら、霧の立ちこむ森の奥深く、少女を運ぶ謎の老人が出てきてしまう(聖飢魔Ⅱ 蝋人形の館より引用)。

次の瞬間、人間の目ではそれと認識することができない次元のスピードで手を動かし、マナーモードにした。早すぎて、人には動いていないように見えていたはずだ。

こうして無事、怒られることもなく、美味しいビールを楽しみ、家路に着いたのであった。
今回は一人で来たが、次回は友人と来てみよう。ひそひそ話しの状況に、自分をストイックに追い込んでみよう。

ここは大好きな場所となった。

最後までご一読いただき、ありがとうございます。





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