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【仕事】 任天堂の元代表取締役・岩田 聡氏が考える「ライバル」とは?

2024年2月、任天堂と岩田社長(故人)の話が久しぶりにバズっていた。

任天堂の元代表取締役「岩田 聡」氏が決算説明会で「ライバル」について質問された時の回答
 

【Q】
「ライバルに」ついてお聞きしたい。
最近出てきたクラウド・コンピューティングをライバルとしてとらえていくのか、あるいは、新しいアライアンスとして一緒にやっていくのか?

【A】岩田社長 談
ライバルについてどのように考えているかということについては、以前ですと「ソニーさんやマイクロソフトさんとの競争」という形でよく取材を受けましたし、最近では、どうしても「アップルさんがライバルだ」というような形で、それを最初から記者の方が決めて取材に来られ、そういう記事になってしまうということが、よく起こるんですね。

一方で、私どもは「自分たちのライバルは何だ?」と考えているかというと

「お客様の興味関心と時間とエネルギーを奪い合う "すべてのもの" がライバルだ」と思っています。

 
特定のものだけをライバルだと考えますと「そのライバルにいかに勝つか」という発想になるんですね。こういう発想になりますと「相手の長所をどうやって潰すか」とか「相手のできないことをどうやってやるか」ということばかりになり、非常に近視眼的なものの見方に陥ってしまいやすくなります。

当社が実用品、生活必需品をつくっている会社で「どうすればお客様に商品を評価していただけるのか?」という軸がはっきりしている場合は、そのやり方もある程度有効なのかもしれませんが、当社の製品の場合、お客様にとって「面白い」とか「良い意味で驚いていただく」というのはどういうことなのかというと、よくわからないわけです。

それどころか、お客様に「どういうゲームで遊びたいですか」と聞いても、そのお客様のおっしゃるとおりにつくったら、すごく喜んでいただけるかというと、必ずしもそうとも言えません。

むしろ、お客様が想像もしていなかったものがポンと出てきて「あ、これは面白いわ」「これが俺の欲しかったものだ!」と言っていただけるようなものをつくらなければならない、特殊な仕事なんですね。
 

そういう特殊な仕事であるということを考えると、まず、特定のライバルというのを考えて、そことどう戦うかという発想を持つよりは「人が興味を持つことってどんなこと?」「人が時間やエネルギーを使うに値することってどんなこと?」「どんなことを人は面白がっているの?」という問いに対して、我々が感度をちゃんと持って答えていくことがまず大事なポイントだと思うんです。

ですから、特定のライバルというのは意識していないということは、まずご理解ください。

また、今、クラウド・コンピューティングという言葉を使われましたが、これは最近、新聞等でもよく使われる言葉になりました。
簡単にご説明しますと、今は非常にインターネットの通信網が発達しまして、皆さんの手元にある機械ですべてを実行しなくても、家庭にあるインターネットの回線や携帯電話の通信網といった通信手段を使い、インターネットの向こう側にあるコンピュータの集合をクラウドと呼んで、そちらのほうで複雑な処理をして返事をしてもらう、というスタイルをとることによって、手元に大きな、高額なコンピュータを持たなくても、入力手段と表示手段だけがあれば、複雑な計算はインターネットの向こう側でやってくれるというのが、クラウド・コンピューティングの考え方です。

また、クラウド・コンピューティングの有利な点は、あらかじめ設備をある会社が用意しますと、それをどのような用途にどう割り当てるかというのを非常に柔軟に切り替えられることです。
例えばある日突然、サービスの需要が10倍になって、また3カ月経ったら何分の1かに減ってしまうというような、非常に変動性の大きなビジネスに対しては非常に有効な技術だと言われています。

一方で、私どものやっている娯楽というのは、人が何かをすると機械が何かを返してくれるという、いわば「反応が命」の部分があるんですね。
 

実は私どもがゲーム機の中で使っているさまざまな技術の中には、クラウド・コンピューティングに非常に向いているものと、それが全く向かないもの、むしろクラウドでやるとお客様は「ボタンを押したのに返ってくるまでにワンテンポ遅れるので気持ちが悪い」というようになってしまうものの、両方があると考えています。

ですから当社も、これはクラウド・コンピューティング向きだと思うものでは、きっと将来クラウド・コンピューティングを使うでしょうし、使うためにわざわざ自社で設備を一式持つというのは非効率ですので、そういうサービスをしている会社と組むことも当然出てくると思います。

しかし一方で、あらゆる娯楽がクラウド・コンピューティングによって蹂躙(じゅうりん)されてしまうというようなシナリオもちょっと考えにくいと思います。
 

特に現状では通信手段を使いますと、必ず一定の遅れやスピードの限界というものがございますので、その意味ではクラウド・コンピューティングを使えるところから使っていくということになると思います。

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【任天堂のライバル】
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お客様の興味・関心・時間・エネルギーを奪い合う「すべてのもの」

 
コンシューマ・ハードで言うとつまり、ファミコンやスーパーファミコンは、当時の他の娯楽・サービスに「打ち勝った」
ソニーのプレイステーションも、他のプロダクトに「打ち勝った」

ソコのあなた。
今、あなたが使用している「何らかの製品」
そう、例えば、この文章を読むために使用している「PC」
マイクロソフトのOS「Windows」かな?

Windowsは「世界を獲った」

 
それとも、スマート・デバイスでコレを読んでいますか?
アップルの「iPhone」ですか?
まぁアンドロイドであってもiPadであっても、何れにせよ

スマート・デバイスは「世界を獲った」

 
我々が普段、使用している「プロダクト・製品」
何れにせよ、それは「他に打ち勝っている」

だから、あなたが使っている!

 
世界的な他のサービス・プロダクトに打ち勝っている。
業界内で他のサービス・プロダクトに打ち勝っている。
個々人の中で、我々一人一人が「他より良い」
「他より良い理由」が何であれ、そう、判断している。

だから、使用している。

それこそが
「ライバルに打ち勝った真のプロダクト」

 
■ 任天堂のライバル ■
お客様の興味・関心・時間・エネルギーを
奪い合う「すべてのもの」
 

あなたのライバルは、何でしょうか?


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