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グローバルインフレは財政インフレか?「グローバルインフレの深層」

「グローバルインフレーションの深層」河野龍太郎著・慶応義塾大学出版会2023年12月発行

著者は1964年生まれ、BNPパリバ証券チーフエコノミスト。

コロナ危機後に急激なインフレが世界を襲った。そのインフレの原因の一つは先進国の大規模な財政政策、もう一つはインフレを供給ショックによる一時的なものと誤認し、中央銀行が利上げに立ち遅れたことによると著者は主張する。このインフレを「グローバルインフレーション」と呼ぶ。

その中で日本は長年デフレが続いたが、超円安の輸入価格上昇による持続的なインフレが発生しつつある。円安での大手企業の収益増加しても、賃上げに至らず、実質賃金はマイナスを続けている。

グローバルインフレの本質は「財政インフレ」である。財政インフレの原因は政府の財政改善への信認の悪化と、中央銀行の能力評価の低下にある。

インフレ対策で金利を上げると国債利払いが増加する。金利上昇防止のために資金供給を増加させる。結果、インフレは更に悪化する。本来は増税、歳出削減で対応すべきものだが、それは難しい状態である。

財政インフレの怖さは金利上昇でインフレを抑えられない事であり、更に財政悪化によるスタグフレーションのリスクもある。景気悪化の中での物価上昇に追い込まれる。

すでに米国は財政インフレに陥り、欧州もそのリスクがある。日本も財政インフレ突入の可能性がある。日本の潜在成長率は2~3%程度、実質金利はゼロからマイナス付近にある。日本は先進国から新興国に転落するリスクさえもある。

超円安が続く中で国際通貨としての円の地位は低下しつつある。岸田政権の少子化対策、防衛費増額、温暖化対策で恒常的な歳出増加は避けられない。財政破綻はなくとも、東南海地震などの大災害発生となれば、財政の持続性は失われる。

一方で企業が株主重視の内向き経営を続ければ、実質賃金は上昇せず、家計から企業への所得移転が進むだけである。株高を喜んでも、円建て資産から外貨建て資産へ国内資産の流失、逃避が始まる可能性がある。

銀行も高齢者預金の減少すれば、国債購入して、保有する能力が低下する。自国通貨建て国債も暴落リスクはあると考えるべきだろう。従って今のうちに根本的な財政収支改善策を検討して、着手しなければ手遅れになるだろう。

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