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「ガザとは何か・パレスチナを知るための緊急講義」

「ガザとは何か・パレスチナを知るための緊急講義」岡真理著・大和書房2023年12月発行

著者は1960年生まれ、早稲田大学文学学院教授、京都大学名誉教授。専門は現代アラブ文学、パレスチナ問題。「ガザに地下鉄が走る日」等の著書がある。

イスラエルのガザ攻撃のニュースが話題である。新聞、メディアはテロリスト・ハマス奇襲とイスラエル軍空爆、地上戦を二項対立で語る。「暴力の連鎖、憎しみの連鎖から何も生まれないと・・」ハマスはテロリストか?

ハマスはイスラーム抵抗運動を行う軍事部門保有の政党。1987年にイスラエルのパレスチナ占領に対する投石による民衆の怒り・第一次インティファーダ(民衆蜂起)石の革命と呼ばれる抵抗運動が発生した。この運動の結果、ハマスが誕生した。

以前から、イスラエル土地収用抗議行動は続き、1976年3月30日デモでは多くの死者が出た。ハマスも非暴力行動に参加する。いわゆる「帰還の大行進」である。2018年5月14日デモでは100人以上がイスラエル治安部隊に殺害された。

2006年総選挙でハマスは勝利、政権を掌握。しかし敗北した西岸地区自治政府ファタハは米国・EUの支援を受け、クーデターを起こし、ハマスをガザ地区へ排斥した。自治政府ファタハは、イスラエルが西岸地区支配管理のための傀儡政権である。

国際社会は、イスラエル・パレスチナ問題の歴史的構図、本質から目を背け、長年のイスラエルによる「ジェノサイド」を放置してきた。イスラエルの行為は「パレスチナ人民族浄化」そのものである。

問うべきは、ハマスとは何か?でない。イスラエルとは何か?である。イスラエルは、1967年第三次中東戦争でパレスチナを軍事占領した。国連安保理事会による占領撤退決議を無視続けている。更に2007年開始したガザ完全封鎖は明らかな国際法違反である。

イスラエルはアラブ人に対するヨーロッパ・レイシズム(人種差別)に基づき、「植民地主義的侵略」と「暴力的な民族浄化」によって創られた国である。

「憎しみの連鎖」という言葉で問題の本質を隠してはならない。ガザとは何か?それは「人道危機問題」ではない。「政治、占領問題」である。シオニズムはホロコースト犠牲者ユダヤ人の論理で政治問題をすり替える。

イスラエルは「テロとの戦い」の名の下ですべての暴力、虐殺を正当化する。米国も9.11以降、同じ論理でイラク戦争を実施した。イスラーム差別、民間人虐殺、軍事力の強行である。

ハマス奇襲攻撃を肯定するのではない。目的が手段を正当化しないのと同様に、手段が過っていても、目的が全否定されるものではない。

日本はパレスチナ問題に無関係ではない。第一次大戦後、パレスチナにユダヤ国家建設、中東分割を決めたサンレモ会議に日本は参加、承認した。その流れが、満州、朝鮮支配の帝国主義的植民地政策に繋がる。イスラエル同様の、朝鮮占領、朝鮮差別の国家思想が形成された。

現在のガザはイスラエルの攻撃だけでなく、ハマスに協力した理由で国連支援が停止された。市民の6割以上が一日一食の食糧不足にある。日本も国連支援を停止した。日本はジェノサイド支援国に成り下がるつもりだろうか?

本書は、パレスチナ問題、ユダヤ国家イスラエルの本質、歴史的経過、現在のガザを知るのに最適な教科書である。ぜひ一度読むことをお薦めする。

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