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8. MakoとKenbi - ドローンしか鳴らさない楽器 前編


Makoってどんな楽器?


Mako(マーゴ)は西はGunbalanya(Oenpelli)から東はManingrida周辺、南はWugularr(Beswick)まで広い範囲でディジュリドゥを指す言葉として使わるようになりました。しかし、本来はKunwinjku語、Kune語、Kuninjku語でディジュリドゥを意味する言葉です。

Makoは、Bininj Kunwok語でMargoと発音されます。

Murray Garde / That didjeridu has sent them mad

Gunwingguの人々はディジュリドゥをMagu(Magawと発音する)と呼ぶ。

Alice M. Moyle / Songs from the Northern Territory vol.1

マーゴはKUNBORRK(グンボルク : Bininj Kunwok語でダンスという意味)ダンスソングの伴奏をするディジュリドゥで、トゥーツとコールを使わないドローンだけで演奏されます。

[Jeremiah BonsonのプライベートMago]内径4-4.5cm、外径6-6.8cmという驚異的に大きなマウスピースに太いオープンな空洞で108.5cmのショートサイズ。これを乗りこなす演奏感ってどんな!?って思えるほどのスペックですが、ハミングが乗せれればクイックに鳴らせます。【Jeremiah Bonson】E・108.5cm/2.7kg・4-4.5cm/8.7-9cm
[David Blanasi Mago]Wugularrコミュニティが輩出したディジュリドゥ・マスターDavid Blanasiのマーゴ。ジョイント・マウスピースによってオープンな空洞によるダイナミズムと分厚いサウンドに鳴らしやすさが加わった見事な作りになっています。マーゴらしいシェイプの美しさも光る。【David Blanasi】E+・118cm/1.8kg・3.1-3.5cm/9.4cm
[Ambrose Cameroi Mago]Ambrose Cameronは2005年に亡くなった常にハイクオリティのマーゴを作り続けた伝説のMago職人。ある意味理想的なMagoのシェイプが彼の作品の多くから垣間見えます。このマーゴはハイプレッシャーでドライで軽やかな演奏感です。【Ambrose Cameron】G・115.5cm/2.8kg・3.3-3.5cm/9-10cm


Kenbi/Kanbiってどんな楽器?

Kenbi/Kanbi(発音はカンビ)はWadeyeコミュニティを中心としたDaly RiverエリアとBelyuenコミュニティで演奏されるWANGGAダンスソングの伴奏に使われます。WANGGAソングの音程に合わせてF~Gくらいの音程の楽器がチョイスされるようです。

「唄を与えてくれるゴースト」がソングマンの夢見の中でソングマンに唄いかけてくることでWANGGAソングは生まれる。

Allan Marett / Wangga complete CD setライナーより

カンビの演奏もマーゴ同様にドローンだけの演奏に終始する。マーゴとカンビ、この2種類の楽器は共にコールとトゥーツを鳴らさないドローンだけに特化したディジュリドゥとしてひとくくりに見られがちです。

基本的に2ビートで行進のようなパキっとしたリズムで演奏することの多いマーゴは、古来Jazzのスウィングに近いリズム感覚として評価されてきました。カンビは2拍3連をベースに演奏されることが多く、リズム的にはサンバ的にハネているものの3連の2拍分を続けて長くのばして演奏されることから非常にゆったりとした雰囲気になります。

このように異なるリズム感覚で演奏されるため、楽器の形状やサウンド、そして演奏感も微妙に違っていると個人的には感じます。

[1960年代のPort KeatsのKenbi]細く短く軽い。一般的なディジュリドゥ目線でみたら「コレはお土産物クラスできちんと鳴らせない楽器」として見てしまいそうですが、鳴らしてみるとツヤがあってきらびやかなカンビらしいメローなサウンド。しかも音量もしっかりあります。【60's Port Keats Kenbi】F#・92.5cm/0.6kg・3.2-3.5cm/4.6-4.9cm
[1960年代のPort KeatsのKenbi]上記のカンビよりは空洞はオープンでストレートですが、この楽器も短くてちゃんと鳴らせる楽器として視覚的に認知できない印象ですが、鳴らしてみるとパワフルと感じるほどの音量とギラつきさえ感じる電気的なサウンドがほとばしるKenbiです。【60's Port Keats Kenbi】F・99.3cm/1.3kg・4.1-4.3cm/5.7-6cm

マーゴとカンビについてもっと詳しく書きたいのですが、ここでは「ディジュリドゥの選び方」というテーマに絞って最低限の情報にとどめています。「what is didjeridu? - ディジュリドゥとは何か」のマガジンに詳細なコラムを掲載予定です。


後編へ続く

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