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Moulin Rougeについての雑な私的考察

ムーランルージュ。
このタイトルを読んで思い浮かべるのはどれだろうか。
映画か?ミュージカルか?はたまたパリにある、その単語の意味する「赤い風車」が目印のキャバレーか?

おそらくこれで「カクテル」と発想する人はほぼいないはずだ。もしいるとすれば同業者とカクテルギークがせいぜいといったところだろう。
にも関わらず、今回の話はそのごくニッチなカクテルの話です。
だってBARアカウントのポストなんだからそりゃそうだ。わざわざ映画やらキャバレーの話ったって気の利いたこと一つ書けない。カクテルですら作って考察したレシピの開陳止まりなんだから。
余計なマクラもそこそこにとりあえずレシピいきましょう。

Moulin Rouge
<shake / cocktail glass>
Sloe gin 2/3
Sweet vermoth 1/3
Orange bitters 1dash

いったい何をしてこの名を付けたのか?
意図が読めない。液体の色が赤というだけ。
探してみても出てくるのはサヴォイレシピばかりでスロージン使用のレシピの成り立ちがよくわからないのだ。
ちなみにサヴォイレシピが別に存在するのは調べ始めてから知った。お恥ずかしい。
ということでこちらも。

Moulin Rouge(Savoy)
<shake / cocktail glass>
Apricot brandy 1/2
Orange gin 1/4
Lemon juice 1/4
Grenadine syrup 3dash

まー全然違う。どうしてこうも違うんだろう?
ざっと調べてみても藪の中どころかその藪すら見つけられない。
手がかり、なんかないものかとしつこく検索かけたら納得できそうなことを書いているサイトを発見。
詳細は読んでください。英語だけど(残念ながらこちらもスロージン使用のレシピについては未記載)。
しかしこれを読んで閃いた。
想像だけどスロージンver.は誰かが簡略化したものではないだろうか。
シンガポールスリングがラッフルズとサヴォイで別レシピが存在するみたいに(この2レシピ、実際に飲み比べるとわかるけど別物と言っていい)。
細かい香味の分析は横に置くとして、全体像はスロージンで同等(に近く)再現できると踏んだのだろう。
わりと説得力を付けてくれそうなのがスロージンカクテルをピックアップしたこの記事
スロージンとアプリコットブランデーを1:1で使用するものが散見される。
つまり共通するものが多いという一つの証左ではなかろうか。
カクテル各々の年代まで調べていないし、調合量が1:1なのが多いという理由だけで根拠とするのはあまりにお座なりだけれど、参考程度にはなるんじゃないかと思う。
実際、ストレートで比較テイスティングしてみると共通点を見出すことは「できないでもない」。
まあ今と当時で質がどれだけ違うのか、また誰かが簡略化したとして、その人の感覚や思考はわからないので何とも言えないが。

…と、ここまで思考を巡らせたところでふと思い立った。
風車=オランダ。ではオランダと言えば?
リキュールメーカーとして有名なbolsがある。もしやそこに引っ掛けたのか?と。
調べてみるとなるほど「bolsのリキュールレシピの中でもアプリコットブランデーは最古のものの一つ」と記述がある。
オレンジはアプリコットと愛称が良い(というよりオールラウンダーだけども)からオレンジジンというのは腑に落ちる(なぜオレンジリキュールでなくジンか?というのは甘味を加えたくないというところではないかと推測する)。

「ムーラン」はオランダにかけられたネーミングなのかも。
「ルージュ」(赤)については、1913のカクテルブックへの記載が初出(調べている最中にどれかで見た覚えがあるもののページ失念)らしいので、ムーランとも掛け合わせてパリの「赤い風車」から付けたという見方もできる。
素材から、そして時代を席巻したキャバレー(ちなみに現存していて、観光スポットになっている)の名前をも引っ掛けて名付けるというのは悪くない(以前に書いたアドニスだってブロードウェイの芝居にかこつけたネーミングであったことからもないではない話と思える)。
うん。穴は多くあれども個人的にとても腑に落ちたのでこの考察はここまでにしようと思います。
あ、自分なりのレシピ考察書けなかったので次回。


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