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現役解剖技官が描く医療ミステリー

現在大学医学部法医学教室で、多くの異状死体の解剖に携わる現役解剖技官が、法医学の観点から描く医療ミステリーを読みました。

著者の小松亜由美氏は本作で単行本デビューです。

        (画像はAmazonから借りしています)

仙台の国立大学・杜乃宮大学医学部法医学教室。解剖技官・梨木楓は、上司である若き准教授・今宮貴継とともに日夜、警察から運び込まれる身元や死因が不明の死体を解剖している。彼らが遭遇するのは、温泉旅館で不審死した編集者(「恙なき遺体」)、顔面を破壊され手足が切断された沼の中の死体(「誰そ彼の殺人」)、限界集落の小さな池に遺棄された老人(「蓮池浄土」)、降りしきる雨の中、轢き逃げで道端に放置された女子高校生(「安楽椅子探偵、今宮貴継」)など、どれも悲惨な人間の最期の姿だ。事故か殺人か―。今宮と梨木は、遺体の外傷を観察、内臓の全摘出後、病理検査にかけ、細胞の一つ一つまで検分。犯人でさえ気づいていない証拠にたどり着く…。(「BOOK」データベースより)


本作の主人公は著者と同じ大学医学部法医学教室の解剖技官。

横溝正史のミステリに小学校時代にハマったことで、法医学に興味を持ち、医師になるのは難しいと悟り、臨床検査技師の資格を取得し、法医学教室に入り込んだ変り種です。

自身の経験も踏まえてでしょう。遺体の検分、解剖のシーンはとてもリアルです。

しかし、ミステリーとしては少々お粗末な気がします。

さらに主人公の上司である若き准教授、警察検死官達の登場する人物像が、ヤングアダルトのノリで、死者を扱う人にしてはお粗末な気がしました。

昨今、法医学者や検査技師は不足しているので、漫画や小説が多くあるようです。

著者にとってはデビュー作ですので、今後は法医学の観点はもちろん死者、殺人の背景をもっと深く書き込めば、意味深い作品となるでしょう。

期待して待ちたいです。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。これからも励みますね。