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私が好きな村上龍 5選

本には出会いがあるといいます。

まさに今、このタイミングで出会えて良かったと思えるもの。
ちょっとまだ早かったかな本棚で眠らせ、後日読んでしっくりくるもの。

私は10代の後半に村上龍氏の作品に出会いました。
その内容に衝撃を受けたのを覚えています。
初めて触れたのが『コインロッカー・ベイビーズ』で、
その後デビュー作の『限りなく透明に近いブルー』に遡り、そこから追いかけている作家さんです。

同じ村上としてよく語られる春樹氏も、当時並列して読んでいました。
ただ「1Q84」以降は読めていません(エッセイは追いかけてるのですが)

そんな私の村上龍、おすすめを5選を紹介します。



歌うクジラ



2010年発表の本作。
SFの設定、ディストピアを感じさせる世界観は村上龍が得意とするところであり、同時に現在の日本への警鐘でもあるような物語だ。

2022年にクジラから発見された遺伝子には、不老不死の力があることが分かり、国民すべてに衝撃を与えただけでなく、その後の国の未来に大きな変化をもたらした。
その遺伝子発見の100年後、国の犯罪者は「新出島」という地域に集められ、そこの15歳の少年が主人公の物語だ。

この本は設定の妙もさることながら、主人公の少年(アキラ)の成長が要な物語だと思った。
「新出島」という隔離施設を脱出して、広い世界に触れる。
今までの当たり前(常識)に疑問を抱く。
そして新しい出会い、トラブル、その全てが気付きや発見につながり、成長を遂げていくのです。

その中に様々な要素が絡み合ってくるが、
単純に冒険小説というレンズで覗いても、私には最高の物語に映りました。


テニスボーイの憂鬱



80年代以降、『コインロッカー・ベイビーズ』を始め村上龍の作品は、
セックス、ドラッグ、バイオレンス、SM、ある種代名詞とも言えるアイテムを多用していた。

私にとっても当時それは衝撃であり、
刺激という部分で目が離せない存在だった。
そんな80年代から一冊選ぶなら、私はこれを選ぶ。

1985年発表の本作。
本作からはハードボイルド的なタフさを感じた。

他人にしてやれることは何もない。
他人を支配することはできない。
他人も自分に対して何もしてくれない。
もし何か他人に対してできることはキラキラしている自分を見せることだけ。

こんなメッセージが通奏低音として鳴っている。
そしてこれ以来、このメッセージは常に私の根底にもあった。

そして今、自分に問いかけてみる。
「今の私はキラキラしているか?」と。


半島を出よ



2005年発表の長編小説。
やはり、村上龍の長編小説は好きだ。

”九人の北朝鮮の武装コマンドが、開幕ゲーム中の福岡ドームを占拠した”
という物語の始まりだが、フィクションでありながらリアリティを感じるのはさすがの力量。
「五分後の世界」にも同じものを感じたが、その大きすぎるスケールに圧倒されるカタルシスは、いわゆるミステリー小説とも違う恍惚さがある。

本作も含め「ストーリーを進めるために動機や設定が強引である」という旨の批評も見受けられるが、私は気にならなかったし、取材や知識に裏付けられたボリューム感と(本作は登場人物も多い)立体的な世界が好きだ。


空港にて



2005年の短編小説
村上龍が30年に及ぶ作家生活で「最高の短編を書いた」という表題作「空港にて」を含む、全8編。

この本はどうしても空港で読みたいと積読していたものを、旅行のタイミングで鞄に入れた。
搭乗手続きでバタバタしてしまい、結局ほとんどは飛行機の中で読んだのだが。

表題作「空港にて」がとにかく秀逸。

55歳からのハローライフ



2012年発表の作品。
『人は年をとる、だが希望もある』
そんなキャッチフレーズをつけたくなる作品。

飲み物をキーワードに5つの物語が収録されている。
抱えている問題、悩みが全て解決するわけではない。
だが現状から一歩前に進むきっかけを作中の登場人物たちは掴んだように思える。

私はそこに希望を見出した。
私は希望に溢れる作品が好きなのだ。


おわりに


圧倒的な力強さと、社会問題や時事問題に切り込む姿勢。
時代を映す作家の一人だと思います。
そして個人的には様々な世界を見せてもらえたことにより、
私のその後の読書の幅も広がるきっかけとなりました。

まだまだ新作を追いかけたい作家さんの一人です。

ではでは。



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