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ブックレビュー 【上達の法則】

岡本浩一(1955~)

『上達の法則』


不器用な自分をどうにかしたい。
小さい頃から漠然とそんなことを思っていた。
だましだまし大人になったが、ふとしたことでそれは立ちはだかる。

私は車の運転が下手だ。
駐車のコツがいまいち分からない。
教習所は真面目に通った。かなり優等生だったと自分でも思う。
それなのに実車の技術には反映されない。

これはなぜなのかと考えざるを得ない。
運動神経が関係しているのだろうか?
極力センスとか才能というものに逃げたくなかったので、分析もしてみた。
結局は「人より劣るなら人より反復するしかない」という、シンプルかつ究極的な結論に行きつく。

思えば昔から、何でも器用に要領よくこなす子がいた。
あれは何なのだろう。
センスとか才能という言葉にも逃げたくなる。

料理の仕事でもこれは目の当たりにした。
出来るやつは不思議なくらい出来る。
とはいえ仕事な以上、得手不得手を言ってはられない。
怒られながらも持ち前の反復精神、そして仕事外でも料理本で勉強し、ようやく人並み程度にはなれたと思う。



この本は、そんな料理本を買いに行った本屋で偶然手にとった。
ふだん新書はあまり読まなかった私が、そのタイトルに惹かれたのだろう。
サブタイトルの「効率のよい努力を科学する」ってのも良かった。

そうか、努力にもやり方があるのか、
どうせなら効率よくやりたいと読んでみた。

一芸に秀でることは、多芸に秀でることだという考え方がある。
(略)
ある程度難しい技能を深く体得した経験のある人は、他の技能でも、習得する必要が生じたら、ある程度の上達ができるという自信を持っている。その自信が、仕事ぶりや、ものごとへの取り組み方、関心の持ち方などに反映して、心に余裕を生んでいることが多い。

「上達の法則」p.25


本書はまず上達のメリットを説き、
その後も上級者の特徴を説明することで全容を掴み、
後半で方法論とスランプへの対策を描く流れだ。

正直に面白い内容でした。
ただ、これを読んだお前は何か上達したのかと問われれば、目を見張る変化はなかったかもしれないが、それでもやり方や考え方という意味で変化は出たと思う。

少なくとも、努力の結果が出なくて悩んでいる人に迷いなく薦められる一冊である。




そういえば最近本屋に行ってない。
新書コーナーはタイトルが楽しい。
あれやこれやと興味を持たせるようなタイトルが並ぶ。

その時に目に付くタイトルは、自分が今求めているもの、困っていることだったりする。
新書コーナーは、その時の自分を知る物差しであり、時代を映す鏡なのだ。




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