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私が好きな対談本 5選

本というのはその人の頭の中を覗き見た感覚になれて、そういうところが私は好きだ。
では、会話というのはどうだろう。
相手があって成立する会話は、必ずしも本心ばかりではないかもしれない。
ただ、逆の場合もある。
一人称では見落としてしまう「気付き」があったり、相乗効果や化学反応によって、概念やロジックが肉付きされていくというものだ。

私が対談本を好きなのは、まず口語体であるので読みやすいというのがある。
そしてそのジャンルの専門家が咀嚼をしてからアウトプットしているので、洗練されていて本質をついていることが多い。

自分が未ジャンルだった世界に飛び込んでみる際の入門書としても使えます。
好きな作家さんやアーティスト同士の対談というのも好きです。
お互いがお互いをそんな風に評価してたんだって知ると、嬉しい気分になったりします。

今回はそんな対談形式の本を紹介します。





『人間の建設』 小林秀雄・岡潔




批評家、小林秀雄と数学者、岡潔。
巨匠二人による対談。
バカみたいな感想だが、この二人の会話はレベルが高い。
いや、本当にバカみたいなことを言っているが、だからこそ生涯の伴侶となり得る一冊だ。

アンダーラインを引いて、わかった気になって終わりの本ではない。
本書で「本質は直観と情熱でしょう」との発言がある。
その意味を読んだその時に「なるほど」と納得するより、その後の人生で「こういうことかぁ」と腑に落ちる瞬間がきっとある(と思う)
そんな言葉たちに溢れる本だ。

数学者の岡さんが
「文章を書くことなしには、思索を進めることはできません。書くから自分にもわかる」というのは興味深い。
他にも数学には知性よりも「情緒」が重要との言説は、なんとなく覚えておきたい言葉だった。

それらの言葉がいつか自分の人生で納得と変わるかは分からない。
ただ、留めておくことは出来る。
その意味でも人生のパートナーにしたい本である。



『世間とズレちゃうのはしょうがない』 養老孟子・伊集院光




私の好きな養老先生と伊集院さんの対談本。
そしてこのタイトルである。
はい、もう読む前からこの本は私のために書かれたものだと分かってましたよ。
そしてそうです、私のために書かれた本でした。


別に世間が間違っているわけではない。間違っているのは、自分のほうかもしれない。だけど世間とズレていることだけは間違いない。ひょっとするとそのズレが、物書きになる原動力か、と思う

『世間とズレちゃうのはしょうがない』


こんな冒頭から始まる本書。
養老先生の視点も、伊集院さんの感性も素晴らしい。
どちらかというと伊集院さんが聞き手よりかなという感もありますが、そのバランスも含めいい対談です。

この本があるから、今の私はあります。


『経済ってそういうことだったのか会議』 佐藤雅彦・竹中平蔵




気鋭の経済学者、竹中平蔵氏に、経済素人であるクリエイターの佐藤雅彦氏が聞き手となって進行します。
私はこの本を入門書として購入しました。
なのでこの会話形式は私には分かりやすかったです。

お金の正体、税金、アメリカとの関係。
聞き手の踏み込んだ問いかけのおかげで、質問者の立場で読めます。
この一冊で経済を理解したとは私は言えないけれど、
次の本にとっかかる、足掛け的な存在にはなりました。

私のように経済に苦手意識をもっている方には読みやすい本だと思います。



『どうやらオレたち、いずれ死ぬっつーじゃないですか』 みうらじゅん・リリーフランキー




サブカルチャーとは何なのだろう。
単語の意味ではなく、それが我々に何をもたらしたのかを考える。
思うに、自分「らしさ」とか、マイノリティーの「居場所」を残したのではないかと考えた。

そして大事なのは先人のサブカルの象徴たちが、イデオロギーやランゲージだけでなく、生き方や実生活でそれを示したというのが大きいだろう。

本書はそんなサブカルをど真ん中で歩いた二人の対談書だ。
人生、人間関係、仕事などマクロなテーマを、二人の軽快なトークで進行する。
下ネタは全開だし、肩の力は抜けきっている。
だがその中にも本質をついた言葉が見受けられる。

例えば「友情とは?」との問いに、
みうらじゅん:親友だと認識すると、お互いに「親友だからこれはしてはいけない」という気持ちがでてくる

リリーフランキー:昔からの友達同士には「こいつに恥をかかせてはいけない」という礼儀がある

など、
少なくとも私は「らしさ」や「居場所」をサブカルからもらいました。



『ご本、出しときますね?』 若林正恭・他




BSジャパンの同名テレビ番組の書籍版。
オードリー若林が毎回2名の作家ゲストと語る。
対談と言うより鼎談だが、出てくる作家陣が今をときめく者ばかり。

その名を挙げるだけで本書の魅力が伝わるかもしれません。

西加奈子/朝井リョウ/長嶋有/加藤千恵/村田沙耶香/平野啓一郎/山崎ナオコーラ/佐藤友哉/島本理生/藤沢周/羽田圭介/海猫沢めろん/白岩玄/中村航/中村文則/窪美澄/柴崎友香/角田光代/尾崎世界観/光浦靖子

小説家というのがいかにぶっ飛んだ個性の持ち主かが分かります。
同時に作家ならではの洞察力、観察力も伺えます。
MC若林氏の発言も芯を食ったものが多く、私は好きです。

良くも悪くも、居酒屋でリラックスして話している感じです。


おわりに


いかがでしたか。
対談というのは会話形式ならではの面白さがあり、同時に読みやすい特徴があります。

その人の考えが分かるという意味では、
エッセイ同様、好きな(ファンな)人のものを読むのが間違いないと思います。


ではでは。






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