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生物クイズ#最終回【ゲーム理論と集団遺伝学】


問題

今、対立遺伝子A,Bがあり、遺伝子型AAの個体は攻撃性が強く(タカ型)、BBは穏やか(ハト型)、ABは中間の形質(中間型)を持つとする。これらの個体間の争いを点数化して考え、得られる点数が個体の残せる子孫の数に正比例するとする。タカ型、中間型、ハト型はこの順に争いに強く、強い型は弱い型に100%勝つ。同型同士の争いは勝率50%で、得られる得点は以下の表のよう。

この集団をメンデル集団としてタカ型、中間型、ハト型の割合が平衡状態に至った際に、遺伝子プール内の遺伝子Aの割合は何%か。

DALL-Eにより生成

答え

80%

解説

遺伝子A,Bの割合をp,qとすると、それぞれの型の個体の適応度は以下のよう。
タカ型
$${20\times{p^2}/2-40\times{p^2}/2+20\times{2pq}+20\times{q^2}=-10p^2+40pq+20q^2}$$
中間型
$${20\times{2q}/2-25\times{2pq}/2+20\times{q^2}=-5pq+20q^2}$$
ハト型
$${20\times{q^2}/2-10\times{q^2}/2=5q^2}$$
それぞれの型の個体が平衡状態に至ったとき、子孫の遺伝子型の割合はp:qになるので、

$$
2\times(-10p^2+40pq+20q^2)-5pq+20q^2: -5pq+20q^2+2\times(5q^2)=p:q\\\
p(-pq+4q+2q^2)=q(-4p^2+16pq+8q^2+4q^2-pq)\\\
3p^2-9pq-12q^2=0
$$

$${p=-q}$$または$${p=4q}$$
$${0\leq{p, q}\leq{1}}$$から、
$${p=0.8, q=0.2}$$
以上より、遺伝子Aの割合は、80%。

ゲーム理論のような複数のプレイヤーが相互に影響を及ぼしあう状況下での戦略決定と、集団遺伝学の遺伝子頻度の計算を組み合わせた問題を作れないかと思い、作問した。複数の戦略が共存する状態が平衡状態となるのが興味深く、現実世界でもこのような機構で多様性が生じている可能性が考えられえる。

本連載では著者の力不足で遺伝学分野の類似した問題が多くなってしまったが、生物学の問題ではあまり見られないパズル感覚で解けるような作問を心掛けたつもりである。読者の生物学のイメージを変える一助となったならば、著者として大変光栄である。

対立遺伝子AとBの集団で、タカ型、中間型、ハト型の比率が平衡になると、遺伝子Aの割合は80%になる。これは、ゲーム理論的な戦略と集団遺伝学の組み合わせで計算されたもので、複数の戦略が共存する興味深い現象を示す。

ChatGPTを用いて要約
サムネイル画像はDALL-Eにより生成

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