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残酷すぎる頼家の成長物語。宿老は13人から9人へ…第28・29回見どころ振り返り!【鎌倉殿の13人】

NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第28、29回の感想です。

前回の感想はこちら↓

(※以下、ネタバレ注意)

2週間ぶりの感想になってしまいました。いや、仕事やら夏バテやら子供の夏休みスタートやらで忙しかったのが原因ですけど、2週分も溜めて感想書くのも大変ですな……毎回毎回、濃密な45分を過ごさせていただいてて、1話分の感想まとめるのにも4時間くらいかかっちゃうのによ(汗

さて、言い訳はともかく、レビューしていきましょう。

私心ナシ!梶原殿のあまりに美しき最期

特に28話は凄かったですね。あの梶原(中村獅童)殿を、あそこまで美しく描き切るとは。嫌われ者ではありましたが、それも私心なく鎌倉殿(頼朝&頼家)に仕えてきたがゆえ。確かに前回27回の感想でも、梶原殿が頼家(金子大地)に「勝手なことを吹き込んでいた」とか私も感想を書いていましたけれども。

でも改めて28回の物語を見るとですね。「この人、本当に欲があったわけじゃないんだな」と。弾劾に表立って加わっていた和田(横田栄司)殿は「わからねーぜ!(=本当は欲深いんだろう)」なんて言ってましたが、彼はただ個人的に梶原殿が嫌いだったというだけ。北条時政(坂東彌十郎)や比企能員(佐藤二朗)が、明らかに「欲望の塊」として振舞っている中で、梶原殿ほど「鎌倉を、そして鎌倉殿をお守りするため」に仕えてきた人もいないんじゃないかなと思いました。

(主人公・義時(小栗旬)だって、この時点ではまだそこまで中心立って動いているような感じでもありませんもんね。そもそも「野心の無い男」なので、周りから巻き込まれていろいろ動いているだけで、相変わらず本音では「米勘定だけしていたい」だったと思います)

時には汚れ仕事だって淡々とこなしていった梶原殿。善児(梶原善)を召し抱え、次々暗殺していったのも、「鎌倉を守るため」です。こんな危ない仕事、頼朝に信用されてなきゃやれんでしょう。ただ、「信用されていた」と言っても、「人として信用していた」と言うより「役に立つ道具として利用されていた」感が強いですけどね。

梶原殿だってそれでよかったわけです。彼は神仏を信じていた。そして神仏に守られている頼朝様を信じていた。それが頼家に代わって、和田殿や三浦義村(山本耕史)をはじめとする他の御家人から糾弾されようとも、自分は信じた道をまっすぐ進んだだけなのですから、「恥じ入るところはただの1点もござらぬ」と堂々とした態度でした。

ただ、その梶原殿も亡くなってしまった。頼家も信用していたからこそ、梶原殿は糾弾の場にも姿を現したのですが、それが裏切られる形となってしまった。けれどあれは「頼家が梶原殿を裏切った」と言うよりも、むしろ「頼家の方が天に見放された」ようにも感じるんですよね。でなければ、あんな切れ味のいい名刀(=梶原景時)を、みすみす折ってしまうようなことはせんでしょうに。

そのサブタイトルもまさに「名刀の主」。亡き頼朝こそその主ではありましたが、頼家が父から受け継いだその名刀をなまくらにしてしまった。ただ、腐っても名刀。最期は名刀らしく、北条勢との戦の中で散っていったと。そんな美しいラストだと感じました。

13人→9人に。それでも冷酷非道だったわけではない頼家

そして……梶原殿亡きあとの29回「ままならぬ玉」ですが。また宿老が減りましたよ。三浦義澄(佐藤B作)殿と安達盛長(野添義弘)殿がお亡くなりに。そして影の薄かった文官の中原親能(川島潤哉)さんは、すでに28回の中盤シーンで出家し、鎌倉を去っていました。

中原さんもバックグラウンドを調べてみると、実は大江広元(栗原英雄)の兄だったり、頼朝の次女・三幡の乳母夫だったりと、いろいろ面白いポジションの方だったみたいですけど……あっという間の退場でしたね。

ともかくこれでトータルで4人減って、9人に。展開早いな……。本当、13人が揃ったのって、第28回の冒頭だけでしたね。

ただ「13人」サイドから見れば哀しい展開が続きましたが、「鎌倉殿(=頼家)」サイドにとっては、28・29回共に「成長」の回だったと思います。安達の親子の首もはねようとするし、その描き方はあまりにも残酷ですけど……。

やっぱり頼家、完全にダメな跡取としては描かれてないと思うんですよね。亡き父を超えたい一心で、本当は助けてほしいのに「助けてくれ」が言えないだけ。訴訟の際には「どうしたらいいか」と他者の意見を求めるのは自分の弱さを見せる行為であって、自分で「ズバッ」と答えを出してこその鎌倉殿だと考えていたようなフシがあります。

それでも、完全に「冷酷非道」だったというわけでもありません。民衆をたぶらかす坊主達を捕えて連れてこられたときも、最初こそ「首をはねよ!」なんて言うんですが、北条時連(瀬戸康史)から「坊主を殺めれば罰が当たります。お子達がどうなってもいいのですか!」と訴えられ、処刑を取り止めました。

御家人の女に手を出すタブーへ。癒しを求めてこそ?

また、28回に戻りますが、安達景盛(新名基浩)の妾・ゆう(大部恵理子)を奪おうとするシーンもありましたね。あれも、信じられる御家人が誰もいないから、「癒しとなってくれる存在」を求めたのだとすれば、彼の人間性も理解できます。

そもそも「御家人の妻を奪うなんて、父・頼朝ですらやらなかった」と視聴者をドン引きのシーンでしたけど、景盛にとっても、ゆうは「妾」。ということは、景盛にも別に正妻がいるはずなんですよね……当時は一夫多妻制が当たり前だったとは言え。

「御家人の分際で妾なんて持ちやがって!正妻を大事にしろよ!ワシの方がよっぽど、妾にも良い暮らしをさせてやれるわ!」

ってことだとしたら、また見方も変わってくるな……いや、ジャイアンには変わりないですが(苦笑)。

一応、補足として、ゆう(※実の名は不明)は「もしかしたら景盛の最初の妻だったのかも」なんてWebの記述も見つけましたので載せておきますけど。

まぁ史実はどうあれ、ドラマでは結局、ゆうも頼家に対してイチャイチャな感じでした。果たしてゆうは頼家に「奪われた」のか、頼家と結ばれることも彼女自身も望んでいたのか、そこはむしろ後者として受け取れるような描かれ方の印象を受けます。

頼家を本当に「悪いヤツ」として描きたいなら、ゆうもイヤイヤ頼家に付き従ってる様子で描いてもよかったわけです。むしろ、そっちの方が、『吾妻鏡』にもある通りのようですので。

吾妻鏡には、普段から色好みな性格を抑えられない源頼家が、何度も艶文(恋文)を出して、その使いが何度も通ったが、一向に良い返事がないので、このような力ずくを行った旨記載している。

ただ『吾妻鏡』事態も源氏が滅びた後の北条家を贔屓目にして書かれた歴史書だということは広く言われています。

そして三谷さん自身、「頼家をダメな二代目として描かない。むしろ若いなりに、あの時代に翻弄されたひとりの若者として描きたい」という気持ちの現われから、周囲の人間関係含めてあのような描き方をされているように感じました。

比企も北条も関係ない。ようやく心を開き始める頼家

とにかく北条家だろうが比企家だろうが、贔屓したくない頼家。最初の妻であるせつ(山谷花純)を遠ざけていたのも、その背後にいる比企の存在を疎ましく思っていたからでした。

29回では、そんなせつから、頼家への直訴が。「比企は関係ない、私はただ、あなたをお守りしたいのです」と。彼女がそう訴えたのも政子(小池栄子)がアドバイスによるものでしたが、それで頼家もようやくせつに心を開くように。彼女を正室とし、その息子・ 一幡を跡継ぎにすることを義時に告げました。

このときの義時の返答も良かったですね。「よいと思います」と認めてくれて。頼家は、義時のことも一時は信じられなくなっていたじゃないですか。頼れる叔父だと思っていたら、義時も13人の宿老の中に入っていたという裏切りもありましたし。「義時も、所詮は北条の者だ」という警戒があったと思うんですよね。だから比企の血を引く「一幡を跡継ぎにする」なんて言えば、また義時からは「なりませぬ!」と否定される覚悟もあったかと思います。

だけど、政子も、義時も、せつとその子・一幡を認めた。これは大きなターニングポイントだと思うんですよ。「比企も北条も関係ない。鎌倉を守ることが第一」と。本当にそう考えてくれる人々だとわかったから、ようやく心を開き始めることができた、と。

本当、29回のサブタイトル「ままならぬ玉」ですが、キャラクター一人一人の描き方、これは非常に腑に落ちるわけです。なぜこの人はこの人の味方をするのか。なぜこの人はこう動いたのか。28回の梶原殿も含めて、みんな腑に落ちる。「あんなことしなければ、こんなことにはならなかったのに」という局面もありました。でも、「あの場面では、ああするしかなかった」で、みんな動いているんですよね。ドラマを見返せば見返すほど、一人一人の感情や行動が理解できて、改めてよくできた脚本だなぁ~と思うばかりです。

次回、全成殿がピンチに。実衣の心を取り戻したかったゆえの悲劇

ただ、よ……だからこその、次の展開ですよ。30回、いよいよ頼朝兄弟の最後の生き残りである、全成(新納慎也)殿がピンチに陥るわけですね……。本当、時政&りく(宮沢りえ)の悪の結社コンビが、呪術なんてお願いをしなければよかった。でも悪の結社ですから、もはや彼らも手段を選べないわけです。

そして全成も、「実衣の喜ぶ顔が見たかった」と、ただそれだけなんですよね。28回で実衣(宮澤エマ)は、琵琶の先生・結城朝光(高橋侃)と良い感じになってるように全成には見えてしまっていたようですから。その嫉妬心もあの行動に走るきっかけになったわけです。

結局、結城朝光と実衣のロマンスだってほんの一瞬のことで、結城朝光も単に三浦義村の思惑に従って行動していただけということも後で判明するんですが……。

にしても義村よ。ついに本性表して気がやったな、という感がありますね。北条・比企に続く第3の「悪の秘密結社」登場というわけですわ……。しかも夫婦コンビの北条・比企に対して、義村は一人ですからね。むしろ強キャラ感がすごすぎて、今後の暗躍が楽しみですね。

ここにも注目!筆者が独断と偏見で選ぶ「見どころ」一挙振り返り

さてさて、最後に。筆者が独断と偏見で選ぶ「見どころ」ポイントを一挙に振り返っていきましょう。

・28回で梶原殿を最後には討伐することになった主人公・義時。「置き土産でござる」なんて言われてお抱えのアサシン・善児を託されたシーンは不覚にも笑ってしまったんですけど。これで鎌倉の汚れ仕事役が義時に移ったという象徴的なシーンでもあった気がします。そもそも景時・義時と、名前も似ていたこの2人。今までは表と裏の存在だったのが、景時亡き後、ついにその役が義時1人に集約されたのかと思うと、それも感慨深いものがあります。

・そして義時に託された善児。「梶原殿から預かっているものがある」と義時に渡された袋の中には、義時の兄・宗時を殺害した際、宗時から奪った巾着が入っていたのでした。もしそれを義時が見ていたとしたら、あの場で仇として処刑されていただろう善児……果たして義時が、善児の過去を知る日は来るのか。恐ろしい展開になってきました。2代目・トウ(山本千尋)も出てきましたし、バレるとしても、善児の死後ということになるやもわかりませんけどね……。

・年長者ながら、頼家の近習に選ばれた北条時連でしたが、28回では頼家に「一番の若輩者」と勘違いされていました。あれはギャグシーンであるというだけでなく、頼家は自分の叔父ですら把握できていないという恐怖のシーンでもあったような気がしますが……。その時連も蹴鞠の腕を見込まれ、そして前述の「民衆をたぶらかす坊主の処罰」に関しては、自ら頼家に意見するまでになるという出世っぷり。今までただのオッチョコチョイなだけだったのが、ようやく北条のエースの一人として頭角を現してきた感じがします。時連も、全成殿と同じような癒し系ポジションだと思ったのにな……となると、全成殿の亡き後の「癒しポジション」になるのは誰なのか。それも気になります。

・八重さんの忘れ形見・鶴丸(きづき)もいい仕事してました。29回では、頼時(坂口健太郎)と共に伊豆の百姓たちの元を訪れ、「一粒も米は残っていない」との百姓の訴えを聴いて、「約束を無かったことにしたら?」なんて頼時に助言します。頼時も「それはダメだろ!」と言いながらも、結局は鶴丸の言う通りに。頼時の徳政を補佐したのは鶴丸だったのか!と……これも三谷さんのオリジナルキャラながら、すごい出世ですね。

・頼時が「泰時」へと改名するくだりも29回で書かれましたが、あれは頼家からの「褒美」というより、完全に嫌がらせみたいな感じでしたね。昔は仲がよかったのに、何でこんなことになっちゃうかなぁ……「お前はうるさい!」なんて言われて、近習からも外されてしまい(?)ますし。この2人が再び手と手を取り合うシーンも、今後描かれるのでしょうか。いつぞやの予告には、頼時→泰時が「この先へは命に代えても通すわけにはございませぬ!」なんて言ってカメラに向かって刀を構えるシーンもありましたが、あれも今後の展開なんですよね?あれがどういったシーンとして描かれるのかも気になります。

・29回は全体的にギャグ回な感じが漂っていましたが、顔芸まで見せて一番本気でギャグを演じていたのは、やはり主人公・義時だったように思います……てか、井戸に落ちた鎌倉殿に「鎌倉殿ーっ!」なんて叫んで、縄で必死に持ち上げようとするシーンは、あれはもう義時じゃねぇ。実写版『銀魂』の、銀さんやんけ……。

加えて、息子・頼時に「女子はキノコが大好きなのだ」と吹き込み、「ぜんぶ突き返されました」と訴えられると「えっ」なんて返すシーンも面白かったな。こんな面白い義時が見られるのは、もう今後無いかもしれないですね……。

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