学生インターン東南アジアでホテル経営#Ep.18 死にかけたホテルを救え!? 〜容赦なき波そして目覚め〜
泣いた。
自分が泣くことなんて滅多にない。
この時ばかりは涙が枯れるまで泣いた。
遡ること数時間、
の要求通り、お世話になっている方に連絡を取る。
ホテルオーナーが”カイトのお世話になっている方”と話をしたいと言った後、
お世話になっている方に会って事情を説明した。
お世話になっている方からは、
「君は正しい。
が、こんな内部抗争で君が倒れたら、このホテルも潰れる。
目的はこのホテルの立て直しだ。オーナーとケンカをすることではない。
“感情のコントロール”をする練習をしよう。」
その通りだ。
“感情のコントロール”
ん〜。
自分は感情的になりやすい。子どもだと思う。(笑)
もちろん抑える努力はしている。
が、今回ばかりはもうすでに限界値すれすれなのがわかる。
自分なりに必死に抑えてきたつもりだ。
18時お世話になっている方が到着する。
お世話になっている方、自分、ホテルオーナー、彼の親戚の4人がテーブルに着く。
もうすでに自分とオーナーサイド、さらには一部のスタッフとの間にも亀裂が入っていた。
今まではこのような勢力図だったのが、
現在こうなっている。
こんな四面楚歌の状態からどうやってうまく話をまとめるんだ?
とにかく今の自分は、打ち寄せる不条理の波を我慢するので精一杯だった。
話し合いが始まる。
お世話になっている方は、必ず「時間を作ってくれてありがとう。」とお礼を言ってから話を始める。
それからホテルオーナーに言いたいことを話させる。
彼の口から衝撃的な言葉が飛び出してきた。
「スタッフから2階の3部屋をもらうとか、
3階のワンフロア全てもらうとか訳のわからないことを聞いた。
カイトはビジネス以外のことを考えている。」
彼にそのように伝えたスタッフは、自分が育てている部下だ。なんでも話している。
・・・。え?
失敗した。
自分が育てている部下には“話の重要度”というものが理解できない。
聞かれればなんでも答える。聞かれなくてもなんでもしゃべる。
彼に限ったことではない。
うちのバングラディシュ人スタッフはみんなそうだ。
しかも事実が歪曲して伝えられている。
裏切られた気持ちだった。
が、彼に悪気があったわけではない。
むしろ全てを話した自分が浅はかだったのだ。
ホテルオーナーの口からは、自分に対する不満がどんどん出てくる。
給料や休日の話、ビジネストークなどををスタッフとするな。とか、
スタッフと仲良くしすぎだ。とか。
悔しかった。
よくもまあこんなに出てくるものだ、
というくらい出てくる。
大声で言い返してやりかった。
だがそんなことをしたら一瞬で終わる。
それにお世話になっている方に迷惑をかけるわけにはいかない。
我慢。だ。
“感情のコントロール”
途中から、何の話をしているのかわからなくなってきた。
自分の心を守るために、周りの音が聞こえなくなってくる。
話が終わったようだ。
お世話になっている方とオーナー、親戚はにこやかに握手を交わしている。
どうやってうまく話をまとめたのかわからない。
ホテルオーナーは「”お世話になっている方”と話ができてよかった。やっぱりわかってくれた。」と言っていた。
結局自分の力じゃどうしようもできなかった。
話をうまくまとめることすらできなかった。
結局こんなことでお世話になっている方の手を借りてしまった。
自分の無力さを痛感した。
お世話になっている方にお礼を言って、部屋に戻る。
信頼していた部下はいつもと変わらない。
弱気を見せたらダメだ。弱気を見せると彼らは不安になってついてこなくなる。
スタッフにはいつも通りに接する。
そして部屋に戻る。
“疲れた”
電気もつけずに、
そのままベッドに倒れ込んだ。
何も考えない。何も聞こえない。
頭が空っぽになった。
すると突然、
今まで抑えてきた感情の波が体の奥から逆流してくるように一気に押し寄せてきた。
ひとりでに涙が溢れ出てくる。
嗚咽が止まらない。
スタッフが外にいる。
なんとか抑えるようとするが、抑えれば抑えるほど、それらが倍になって押し寄せる。
悔しい。
その感情ただ一つだ。
自分は滅多に涙を流さない。
いくら嬉しくても、いくら寂しくても、いくら悲しくても。
なんでこんな苦しい思いをしてまでこんなところにいるんだ。
全てを投げ出したい。
心がそう叫んでいる。
だが、絶対に諦めない。
諦めた先に何が待っているのかを知っている。
自分はもはや一人ではない。
期待してくれた人たちへの責任がある。
諦めたら、そんな人たちに迷惑がかかる。
自分の心を守るための“逃げ”などその場しのぎだ。
結局その後何倍もの苦しみが待っている。
中学の時、高校の時、受験の時、何度か経験した。
感情と理性の容赦ないせめぎ合いが続く。
溜まった膿を吐き出すように涙が流れる。
やがて、涙は枯れる。
そして一つの結論にたどり着いた。
自分が甘かった。
きれいごとだけでは生きていけない世界だったんだ。
オーナーの不条理な考えに敵対し、
スタッフのためにとか言って自分の正義感に酔いしれていただけだった。
なんの力もないのに。
スタッフとも“仲良くなりすぎた”。
自分はここに友達を作りにきているわけじゃない。
大局的に見ろ。
目的は、ホテルの立て直し。
それ以外は全て小事。
経営者にとって必要なのは「結果」。
ならその「結果」を出してやる。
ゲームの始まりだ。
to be continued..
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