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バットマン:イヤー100 ネタバレあり感想・あらすじ解説


正体不明の謎の人物・・・

ゴッサムのバットマンその人だ!


バットマン翻訳コミックの感想第5回は『バットマン:イヤー100(ワンハンドレッド)』です。

↓はShoPro Booksさんの案内ページです。

概要

『バットマン:イヤーワン』はバットマンの1年目の物語

『バットマン:イヤーツー』はバットマンの2年目の物語

ということで『バットマン:イヤー100』はバットマンの100年目の物語です。


本作は1939年にバットマンが現れてから100年後が舞台2039年のバットマンのエルスワールドの物語です。

エルスワールドとは独立した世界観、つまりNew52シリーズ等とは別の世界線いわゆるマルチバースという感じです。

なので一応他のバットマン作品を見てなくてもストーリーは理解できるのですが前提としてある程度バットマンを知っている人向けの印象がありますのでバットマン初心者におすすめとは言えません。

ちなみに1939年からバットマンがゴッサムに現れたという設定はバットマンのコミックが最初に出版された年が1939年だからです。

また、他の方のレビュー等でもあるのですが他の作品に比べて絵柄のクセが強めです。
肉感的でリアルで流動的な絵柄ですが読んでいくうちに慣れると思います。

本作はメインの『イヤー100』に加えて同じ作者の独立した短編作品『ベルリン・バットマン』『ティーンエイジ・サイドキック』『ブロークン・ノーズ』の3作品も収録されています。

『イヤー100』は他の作品よりも未来の話ということもあり登場キャラクターがほぼ全員新キャラであり、逆にこれまでの作品に登場していたキャラクターは出てこないです。

ただ、おなじみのゴードンロビンはいつもと違う形で登場します。
ジョーカー等のヴィランは名前が出る程度です。

本作の主題は「1939年」から確認されているバットマンがなぜ「2039年」でもバットマンとして活動をしているのかという点です。

あらすじ

時代は2039年、未来のゴッサムシティで一人の連邦警察官が殺害された。ワシントンが誇る世界最高の機密部隊が容疑者を追うなか、元ゴッサム市警本部長の孫にあたるゴードン警部は、独自の捜査を開始した。そして彼は、その容疑者が存在してはならない男だという事実にたどり着く。この暗澹たる未来には、政府の陰謀、超能力警察、ホログラム通信が満ちあふれ、プライバシーなどない。あらゆる人間が、あらゆることを知っている世界に”秘密の正体”などありえないのだが……。唯一の例外があった。それは、人々が忘れ去ってしまった過去の英雄バットマンの存在だった。闇の騎士はこの事件の容疑者とされるが、誕生から100年後のこのゴッサムにバットマンは生きているのか? 本当に彼が犯人なのか?

バットマン:イヤー100 | ShoPro Books(小学館集英社プロダクション)|アメコミ(DC・マーベル)他

物語の内容としてはShoPro Booksさんのあらすじの通りです。

物語の主題としては2点有り、

①殺害された連邦警察の事件の犯人が誰なのか?

②100年間存在をしているバットマンの正体は誰なのか?

となります。

①を主にバットマンの視点で追い、②をゴードンの視点で追います。

他のバットマン作品ではバットマンはゴッサムでは有名人で子どもに好かれたりもしていますが本作ではバットマンの存在は都市伝説のような扱いになり公式には存在していないことになっています。

その為連邦警察殺害の容疑をかけられたバットマンの正体がなかなか分かりません。

読者はバットマンの正体をブルース・ウェインだと知っていますが100年後も生きているはずが無いので読者にもバットマンの正体が分かりません。

物語が進むにつれてこの謎の正体に迫っていく構成なので先が気になってさくさく読み進められましたね。

登場人物(ネタバレ有り)

・バットマン

主人公
ゴッサムのバットマンという都市伝説上の存在だったが連邦警察殺害事件の容疑者となり追われる。
100年前から存在する記録がある正体不明の謎の人物。
コウモリのコスチュームを纏い事件の真犯人を追う。

・ジム・ゴードン

ゴッサム市警の警部。
かつでバットマンの相棒だったゴッサム市警のジム・ゴードン本部長の孫
祖父と名前が同じだが見た目も性格もそっくり。
連邦警察の指示でバットマンの正体を探るように言われる。

・クリス・ゴス

バットマンに協力をする女性。トーラの母親。
医療従事者で治療ができる。バットマンからは「ドク」と呼ばれる。
ゴードンとも知り合い。

・トーラ・ゴス

ゴスの娘。ゴスと共にバットマンに協力をする。
ネットワークや機械に強くハッキングができる。

・ロビン

バットマンに協力する青年。
ロビンというのは本名なのかニックネームかは不明。
バットマンのマシン等をメンテナンスする。

連邦警察隊(FPC)

・プラウツカ長官

連邦警察隊の長官。
マーサー捜査官とティブル捜査官を使って連邦警察隊殺害事件の容疑者のバットマンを追い詰める。

・マーサー捜査官

プラウツカの部下。
TPKと呼ばれる超能力で心を読んだり相手を操ったりできる。
見た目はプロフェッサーX。

・ティブル捜査官

プラウツカの部下。
プラウツカの指示で本部からゴッサムに来る。
ゴードンに対して高圧的に接する。

解説・感想(ネタバレ注意)











バットマン:イヤー100


予測不可能な展開で面白い!


未来のバットマンの世界ということで登場人物はほぼ新キャラでバットマンの正体もブルース・ウェインかどうかも分からず、出てくる用語や世界観も本作独自です。

また、悪役は登場しますがジョーカーやトゥーフェイスみたいな特徴的なヴィランも登場しません。

なので最初はそれらの設定を理解するのに少し時間がかかりますが新鮮で展開が読めないので面白いです。

ちなみに本作でのバットマンは出番の8割以上をコスチューム姿で過ごしていて素顔のシーンはほとんど出ません。

一応描かれる素顔もどこかを隠すように描かれるので顔だけではブルース・ウェインかどうかも分からない状態です。

まあ逆に言うとバットマンとしての出番が多いのでバットマンが好きな人は満足できると思います。


物語の冒頭は連邦警察から逃げるバットマンの姿から始まります。

連邦警察の上層部は部隊から送られた映像から連邦警察災害の容疑者である逃亡者が都市伝説と思われていた「ゴッサムのバットマン」だと推測しますが長官のプラウツカは否定します。

プラウツカは焦りながらもテレパス使いのマーサ捜査官腹心のティブル捜査官を使いバットマンの正体を探り殺害を企てます。

連邦警察に撃たれて重傷のバットマンは協力者のゴスに治療を依頼します。

ゴッサム市警のゴードン警部も連邦警察殺害現場に行きますが連邦警察に追い返されてティブル捜査官にバットマンの記録を調べるように指示されます。

秘密基地でバットマンが意識不明になっているところにゴスとトーラで来てバットマンを治療します。

同じ頃ゴードンはゴッサム市警でバットマンの記録を調べますが記録は100年前の1939年からある為、バットマンの正体の人物は複数人が入れ替わっていると考えます。

ちなみにこのバットマンの記録を調べるシーンのイラストや話の内容(ドクター・デスの話題など)は実際に過去に出版されたバットマンのコミックから引用されているとのことです。
詳しくは同封の解説書に記載があります。

バットマンは回復しますが出血の影響か事件の記憶があいまいになっていました。
瞑想をして記憶を辿りますがはっきり思い出せない為、遺体を調べに行くことにします。

ゴードンは連邦警察に隠れて事件の防犯カメラを見て犯人はバットマンではないと確信します。
バットマンは事件の遺体の歯に異常を確認して抜き取ります。
しかしゴードンもバットマンも連邦警察に見つかりゴードンはリンチされてバットマンはトーラにリモートでサポートしてもらい逃亡をします。

このときバットマンは歯に尖った凶悪は入れ歯をつけますがこれは相手に恐怖を与えるためです。
この辺はオリジナルのバットマンには無い要素ですね。

リンチされたゴードンはゴスの元に行き治療を頼みます。
ゴードンはかつて精神病棟のアーカム・アサイラムの所長を務めていたときにプラウツカ長官によって収容されていた患者やスーパーヴィラン達が一晩で粛清された事をゴスに話すのでした。
防犯カメラを見てバットマンを無実だと知ったゴードンはバットマンを助けたいのですが自身の立場に苦しむのでした。

一方バットマンは超能力を使うマーサ捜査官に追い詰められて正体を明かすように責められますがバットマンは抵抗をして自分はバットマンと答えるだけでした。

なんとか脱出したバットマンは秘密基地に戻ります。
事件の被害者の遺体の歯から被害者は凶悪な細菌兵器のレシピを歯に隠していたことがわかります。

ゴードンは別荘の祖父のパソコンにバットマンの記録が残っていないか調べますがパスワードが突破できません。
バットマン関連のワードやヴィランの名前を入れますがダメです。
しかしふと「ブルース・ウェイン」と入力するとパスワードが解けるのでした。

バットマンはゴードンにホログラム映像で通信を行い、事件解決への協力を求めるのでした。
ゴードンは戸惑いますがバットマンに協力することを決意します。

バットマンとロビンは同じコスチュームとバイクでプラウツカの元に向かい、ロビンは連邦警察を引き付ける囮になるのでした。

ゴードンとバットマンはプラウツカ・マーサ・ティブルの集まる屋敷に行き、プラウツカの陰謀を暴きます。

プラウツカはバットマンの正体を問います。

「お前は誰だ?」

「私か?お前を見張る影。夜に出会う者。決して思い出せない悪夢の男。覚えておけ」

「お前は・・・誰だ・・・?」

「永遠の謎だ」


事件は幕を閉じ、ゴードンはバットマンにパソコンに記録されていたバットマンのデータを渡します。

「君の正体は誰も知らない」

「だが、私は決して誰にも漏らさないよ・・・ブルース」


バットマンはゴードンの言葉に「なぜ・・・」と返すだけでした。

そしてバットマンは再び闇の中へと姿を消すのでした。


イヤー100の物語はここで終わります。

バットマンの正体は誰だったのか?

ゴードンはブルースと呼びましたが犯罪通りで両親を殺されたバットマンになったブルース・ウェインであれば120歳以上になるので普通に考えればありえません。

ブルースの血縁なのかもしくはブルースからバットマンの後継者に選ばれた誰かなのか?

それはまさしく「永遠の謎」となりました。

ただ未来でもバットマンは犯罪者達に恐怖を植え付ける存在としてゴッサムの夜を駆け続けているのでした。


ここからは短編が3作続くのですが作者が同じだけで各話につながりはありません。
感想・解説も簡単にさせて頂きます。

ベルリン・バットマン


第2次世界大戦時期のベルリンでバットマンが活動していたら・・・というお話。

バットマンの正体はバルーク・ヴェインという名物紳士となり、ロビンはヴェインと一緒に住む女性です。

両親がユダヤ人というだけで殺害され、悪と戦うことを誓います。
犯罪者に恐怖を与えることを考えている時に部屋にコウモリが入ってきます。

「そうだ!コウモリになろう!」

このくだりは前回感想を書きました『イヤーワン』が元になっていますね。

ラストの赤い背景に立つバットマンが不気味であり印象的でした。

ティーンエイジ・サイドキック


犯罪者に捕まったロビン(ディック・グレイソン)をバットマンが助ける話。

イラストが相まってジョーカーがかなり不気味で恐ろしく見えます。


ブロークン・ノーズ


強化スーツの怪人マブゼに鼻を折られたバットマンがリベンジする話。

コミカルタッチでシンプルに読みやすい短編です。

鼻を折られて笑ってはいけないバットマンが笑ってしまって鼻を押さえてるシーンが良いですね。


まとめ


独特な絵柄と未来のバットマンという異色の作品ということでバットマン初心者ではなくバットマンのコミックに慣れ親しんだ方ほど新鮮で楽しめると思います。


というわけで『バットマン:イヤー100』でした!

読んで頂きましてありがとうございました!


次回の感想は名作『バットマン:ロングハロウィーン』を書こうと思います!
作者は異なりますが『イヤーワン』ともつながりのある作品です。


また読んで頂けると嬉しいです!

よろしくお願いします!

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