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【「嗜む」のすすめ】月に叢雲華に風焦がれ本を嗜む


あまと〜さん撮影

私達が密かに大切にしているものたち。

確かにあるのに。

指差すことができない。

それらは、目に見えるものばかりではなくて。

それらを、ひとつずつ読み解き。

それらを、丁寧に表わしていく。

そうして出来た言葉の集積を嗜む。



【エッセイ】リズムの力で楽に行こう♪
https://note.com/bax36410/n/n4c239b9287c0



本を読みはじめると、没頭しすぎてしまうので^^;

途中で降りなきゃいけない電車やバスに乗る時は、軽めの短編集とか、エッセイを、読むようにしています。

「旅ドロップ」(小学館文庫)江國香織(著)

本書の「平安時代の旅」という文章にて、平安時代の人々の旅の仕方に触れられています。

「いい景色を眺める、ということへの彼らの憧憬と情熱と偏愛ぶりは、ただごとではない。

(中略)

日常生活のなかでも、何より景色に心をふるわせ、桜が散ってしまっただけで大泣きしたりする。

刹那的な人々なのだ、シュールなまでに“いま”を生きている。

(中略)

おもしろいのは、家や土地やお墓には執着を持たなかったらしいことで、季節同様、移ろうことが基本の、人生そのものが旅みたいな人たちなのだ。

ファンキーでグルーヴィーだ。」

とあって。

(黒田明臣さん撮影)

ああ、と憧憬や共感のため息をつく。

人間と自然が乖離し続ける世の中で。

五感に触れ。

日々の中に、自身の琴線をふるわせながら、生きることが稀になってしまった様に感じます^^;



そんな気持ちで、ふっと、三好達治の「烟子霞子」の詩を読むと、煙霞の痼疾に考えが及んで・・・

烟霞とは、もやと霞のこと。

転じて自然の景色。

痼疾は治ることなく長い期間患っている病。

持病。

そして、煙霞の痼疾とは、自然の風景を愛し旅を好む習性のこと。

「烟子霞子」は、旅先で立ち寄った「家」の様子を詩っているようですね。

その場所は持ち主を持たず、その日その時にたまたま受け入れた人を指しているように見えます。

そんな旅を、最近していないなあ。

「烟子霞子」

壁には新らしい繪を揭げ
甕には新らしい花を挿し
窗には新らしい鳥籠を吊るした
これでいい さあこれでいいではないか
今日一日私はここにおちつかう
今日一日?
ここはお前の住居ではないか
私の心よ
お前の棲り木を愛するがいい
お前の小鳥と同じやうに そこでお前も歌ふがいい――

さうして日が暮れる
松の林のむかうの尾根にしばらく夕燒が殘つてゐる
明るい廊下がしかし間もなく暗くなる
靜かな夕暮れ
波の音が追々近く高くなる

煙子霞子 二人の豎子(こびと)が
――こんな時 どこかの谿間で
私のために笙を吹く 角を吹く
兎のやうに とんぼがへりをして踊る
私にはそれが解る
そらまた手を拍つ 足を踏む

行雲流水 い往きとどまるものはなし
わがよたれそつねならむ……
それなら私はどこへ行くにも及ぶまい
ここにかうしてゐるとしよう
ここにかうしてゐるとしよう
とまれ
今日一日は



そういえば、霧の彫刻家・中谷芙二子さんは、霧の彫刻をつくる動機について、

「自然と人間の間の信頼関係を取り戻したい」

と語っていましたね(^^)

【霧の彫刻】中谷芙二子《霧の彫刻》+田中泯「場踊り」(2021.4.24開催)記録映像[short ver.]

信州の景色に溶け込む「霧の彫刻」 長野県立美術館

霧の抵抗 中谷芙二子|Resistance of Fog Fujiko Nakaya

【参考記事①】



「大地の芸術祭」を観て思う。

確かに、技術の発展や科学の進歩は、私達にも、素晴らしい恩恵を与えてくれています。

そうそう、前回の失敗乗り越えて、「H3」ロケット2号機の打ち上げに成功していたよね(^^)

余談ですが、H3ロケットは、日本の新しい基幹ロケットであり、「柔軟性」、「高信頼性」、「低価格」により徹底したユーザ視点で開発することで「使いやすいロケット」を目指しているそうです。

然し乍ら、自然を操ろうとしたり、古来の生活をしている民族を、こちら側へ取り込もうとする、人間がいるかのように錯覚した所業は、収まる気配がありません^^;

人間が、自然と共に生きていた時代には、当たり前のように共にあったのだろう何か。

【参考記事②】

アートとは、人工的なものではなくて、とても自然的なものに感じる。

それがどんな形をしていようとも。

街中にあろうが。

美術館にあろうが。

自然の中にあろうが。

大小はあろうが。

強弱はあろうが。

何か、こちら側が見えなくなったもの、見失ったもの、見えていなものを差し出してくれていて、観るものをうつろわせ、揺さぶってくれる。

その瞬間!

そこには、アートとわたししか存在していない。

それは本も同様ではないかと思う。

ここで、ウイリアム・モリスの「書物が美しくあるための法則」を、ご紹介(^^)

■紙は手漉きのものがよいこと

■値段のために紙質を落とすのは見当違いであること

■活字はインキュナビュラを手本とすべきこと

■活字のフェイスがボディいっぱいになることが美しいこと

■字間は小さくして均等にあけること

■行間もあまりとりすぎないこと

■見開きを1ユニットとして割付けること

■印刷面と余白(マージン)のとり方など

「ケルムスコット・プレス全作品」(53タイトル66巻)

「理想の書物」(ちくま学芸文庫)ウィリアム モリス(著)ウィリアム・S. ピータースン(編)川端康雄(訳)

「小さな芸術」(社会・芸術論集)ウィリアム・モリス(著)川端康雄(訳)

「素朴で平等な社会のために -ウィリアム・モリスが語る 労働・芸術・社会・自然-」ウィリアム・モリス(著)城下真知子(訳)

琴線に触れる本の前に陣取ったとき。

己の中から湧く。

強烈な感情に腹をくくれる気がすることがある。

渇望とか。

絶望とか。

拒絶とか。

諦めとか。

ともすれば、負のレッテルを貼られてしまうようなものにも感じられる本たちも存在し。

それは、江國香織さんと同じく、とてもファンキーでグルーヴィーな、その瞬間に偏愛すべき、孤独に浸かれる器のような。

そんな本や場所が、いつも、わたしを自由にしてくれる。



今日は、どれを読もうかなんて。

好きなことに没入し。

自分と向き合う時間に浸る「ヒタ活」(^^)

今宵、嗜む本のお品書きは・・・

【月に叢雲華に風焦がれ本を嗜む】

「360°BOOK 雪降る森 Snowy World」(360°BOOKシリーズ)大野友資(著)

「360°BOOK 地球と月 Earth and the Moon」(360°BOOKシリーズ)大野友資(著)

「360°BOOK 富士山 Mount FUJI」(360°BOOKシリーズ)大野友資(著)

「Ango」(英語版)野村佐紀子(写真)

「BとIとRとD」(MOEのえほん)酒井駒子(著)

「Go to become」Joergen Axelvall(写真)高橋睦郎(著)

「KABUKI by KISHIN」篠山紀信写真集

「SHOE DOG(シュードッグ)―靴にすべてを。」フィル・ナイト(著)大田黒奉之(訳)

「SUE かわうそスーのぼうけん」たくや・さくらさん(ストーリー・イラスト)

「the first」田中健太郎(著)

「THE LOVING INSTRUCTION MANUAL」

「シンプルの正体 ディック・ブルーナのデザイン」ブルーシープ(編)

「ないもの、あります」(ちくま文庫)クラフト・エヴィング商會(著)

「なんでもたしざん」NAIJEL GRAPH/ナイジェルグラフ(著)

「はな子のいる風景  イメージを(ひっ)くりかえす」[記録集]

「まどあけずかん たべもの 英語つき」(小学館の図鑑NEO まどあけずかん)はらぺこめがね(イラスト)山田タクヒロ(イラスト)

「学問のすゝめ」福沢諭吉(著)

「好奇心とクリエイティビティを引き出す伝説の授業採集」倉成英俊(著)

「豪華版 魔法使いの嫁 金糸篇」マッグガーデン編/ヤマザキコレ/三田誠/佐藤さくら/蒼月海里/桜井光/藤咲淳一/三輪清宗/五代ゆう(著)

「豪華版 魔法使いの嫁 銀糸篇」マッグガーデン編/ヤマザキコレ/東出祐一郎/真園めぐみ/相沢沙呼/吉田親司/大槻涼樹/秋田禎信/五代ゆう(著)

「初級クラウン英和・和英辞典 第11版 シロクマ版」田島伸吾/三省堂編修所(編)

「初級クラウン和英辞典 第11版 シロクマ版」田島伸吾/三省堂編修所(編)

「村上善男―玄々とした精神の深みに」西野嘉章(著)

「大相撲錦絵  日本相撲協会 相撲博物館コレクション」

「恥ずかしい料理」

「中世ふしぎ絵巻」西山克(著)北村さゆり(イラスト)

「続 中世ふしぎ絵巻」西山克(著)北村さゆり(イラスト)

「点字つきさわる絵本 あらしのよるに」木村 裕一(文)あべ弘士(絵)

「逃げるは恥だが役に立つ(9)特装版」海野つなみ(著)

「帽子から電話です」長田弘(著)長新太(イラスト)

「和菓子を愛した人たち」虎屋文庫(編著)

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