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「フーガはユーガ」

フーガはユーガ を読了
2021年発行 伊坂幸太郎 著作品

(本作は2018年に単行本として発行されているが
自分は2021年に文庫本化したものを読了。
なお、単行本化に際し、改稿されている)

双子の兄弟、優我と風我は決して幸せとは言えない家庭で育つ
そんな環境下で生き抜いてきた双子の兄弟はある特別な能力を持っていた

双子の兄・優我がファミリーレストランである男に対して、
自分と風我の子供時代、そして特別な能力が起こす不思議な出来事について語ることから始まる

物語は終始、優我の目線で語られる
しかし優我はことある事に「僕の喋る話には嘘が混じっている」と忠告してくるのだ
話し相手である男と、読者に対して。

この忠告が常に頭に引っ掛かっているので
いつどこでタネ明かし始まるのか、とワクワクせずにはいられない

また、語られる過去は壮絶なものが多く、
あれは嘘だよ、と言ってくれるのではという希望も持ちながら読み進めることになる

所々にフックを残しながらも展開が読めないまま物語が進められ、
あるときから急に始まる伏線回収は待ってました!と言わんばかりで、
これだから伊坂幸太郎の小説は面白いんだよと誰かに伝えたくなる

ラストはハッピーエンドだ、と声を大にして言うことは出来ない、物悲しい気持ちも残る

けれども、どこか暖かくて微笑ましい終結になっていると思う

過去の後悔や、やるせない気持ちになるニュースに対して、
こうすればいい、と解決案を出してくれるわけじゃないけれど
寄り添ってくれ、少しだけ希望を見せてくれるような作品


ライターの瀧井朝世さんの文章が物語の解説として置かれている
その中で「この小説は著者の優しさの表れだ」と記されているのが印象的で素敵だと感じた


僕たちは双子で、
僕たちは不運で、
だけど僕たちは、手強い。

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