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省力化補助金を甘く見てはいけない

今年度の最も注目されているといってもいい補助金「中小企業省力化投資補助金」の概要が見えてきました。

その中で、杞憂に終わればいいのですが、事業再構築補助金を筆頭に事業者目線に立たない運営が目立つ国の補助金ですから、何があるかわかりません。

ということで、省力化投資補助金について気になること書いておきます。

気になるポイントは収益納付のところです。
公募要領の記載では以下のところに出てきます。

そもそも、省力化(=人件費の削減)のための投資を補助するものなのに、収益が上がるの?収益納付なんて発生するの?と疑問に思うのですが、公募要領には収益納付の可能性がきちんと記載されています。

ちなみに、どんな投資が補助対象かと言えば、上記のカテゴリの通り
・券売機
・自動精算機
・自動チェックイン機
・スチームコンベクションオーブン
・無人搬送車
・検品仕分けシステム
・自動倉庫
・清掃ロボット
・配膳ロボット
などが対象です。

さて、上記の設備投資は収益を生むのでしょうか?

・券売機
ラーメン屋などで食券を購入する際に使うイメージですね。確かに食べ終わった後に人が会計を行うことに代わって、事前に券売機でお代を受け取ることになるので省力化(省人化)にはつながりそうです。
そして、券売機には売上金が入るので、収益を生んでいると言えば、そのように捉えることもできるかもしれません。

では、店の売上(から各種費用や原価を引いた収益、利益)が、当該券売機だけで生み出されているかと言えば、それも違う。
他の厨房設備や内装設備、そこで働かれる方があってこその売上です。

売上から食材原価や家賃、人件費、水道光熱費などを引いて残った利益のすべてを、券売機を補助金で導入したことによる得られた収益とするのは、問題がありますよね。

なかなか本事業(省力化投資)の成果により得られた収益を特定することは難しそうですね。

他の自動精算機やチェックイン機も似たような感じですし、スチームコンベクションオーブンは導入することで調理に係る省人化が図れるという立てつけになるんでしょう。

飲食店でいえばスチームコンベクションオーブンなどを利用して調理した料理を召し上がってもらっての売上ですから、省力化投資(スチームコンベクションオーブンの補助事業による導入)が売上に全く無関係というわけではないですが、実質的な当該投資の売上(利益)への貢献度となると、こちらも算定が難しいでしょう。

以上のように、省力化投資は売上と結びつきはするものの、当該投資による収益(収益納付の対象とすべき利益)がいくらなのか明確にすることが困難ということになります。

では、省力化投資で収益納付は事実上無視していいのかと言うと、もう1点気になることがあります。

次は、「省力化製品・省力化製品製造事業者 登録要領」を見てみましょう。

省力化要件には

人件費削減効果により4年以内に投資金額が回収できることと書かれています。

つまり、カテゴリ(製品)はなんでもいいですが、消費税等も無視して簡略化すると、
400万円の省力化設備を購入する。補助率は1/2なので、自己負担200万、補助金200万。
そして4年間で投資額400万以上の人件費削減効果が必要なので、少なくとも年間100万の人件費削減が見込まれる。

こういう状況だとします。4年で投資額400万円分の人件費削減効果がでる前提です。

ちょっと話がそれますが、上記のように人件費削減効果がでたとしても、それを理由に人員削減を行ってはいけません。
「省力化を通じて人員整理・解雇を行った」場合、補助金返還を求められるケースがあると書かれているからです。

でも、省力化投資の結果、人員の削減が行われないというのは現実的なのでしょうか?

ラーメン店で券売機の導入、宿泊施設で無人チェックイン機の導入、有人作業が中心だった倉庫を無人倉庫に、有人で検品作業をおこなっていたものを、ロボット検品仕分けシステムに置き換えなどすると、そこで働いていた人の仕事がなくなる(機械に置き換わる)わけです。だからこそ、投資額を4年で回収する人件費削減効果が生まれるわけです。

ラーメン店に券売機を導入することでバイトのシフトを1人減らせる、そのケースは単なるバイトシフト減だから「省力化を通じた人員整理・解雇」には当たらないのか?

無人チェックインを導入することで、フロント業務の人員が過剰になった場合、雇止め等を行ってはいけないのか?

工場の検品や仕分け、有人倉庫を無人倉庫にした場合も、そこで働いていた方全てを、解雇等せず、配置転換するなどして雇用を継続しなければならないのか?

この辺を厳しく縛れば縛るほど、企業側にとってはとても悩ましい状況が生まれるでしょう。


さて、話を元に戻すと、成果報告では、
・省力化設備の稼働状況
・省力化の効果(人件費の減少?でも人員数は解雇等で減らしてはいけない?)
・労働生産性の数値
などの報告を行う必要があります。

これを5年間行うわけです。拒否すれば補助金返還。この事務負担も、それなりにあります。
また、清掃ロボットなどは、これから数年で大きく進化するかもしれませんが、耐用年数の間は、きちんと稼働させる必要もあります。新しいものに買い替えた場合、耐用年数以内であれば、一部補助金の返還が必要です。

なんか、この補助金、意外と大変な気がしてきませんか?

そして、ないとは思いますが・・・

人件費削減効果を、本事業の成果による収益とみなして、収益納付を行うようなルールになると、それは悪夢だよねということを最後に書いておきます。

400万円の省力化設備を購入する。補助率は1/2なので、自己負担200万、補助金200万。
そして4年間で投資額400万以上の人件費削減効果が必要なので、少なくとも年間100万の人件費削減が見込まれる。

この前提で、想定通りの人件費削減効果があったとします。
(逆に、多くの導入企業で省力化投資による人件費削減効果がないと判断されれば、そもそも当該製品は省力化投資補助金のカタログから取り消される)

要は毎年100万円が本事業の成果による収益だとすると、
1年目:累積収益100万<自己負担額200万 収益納付無し
2年目:累積収益200万=自己負担額200万 収益納付無し
3年目:累積収益300万>自己負担額200万 収益納付対象100万×補助率1/2=納付額50万
4年目:累積収益400万>自己負担額200万 収益納付対象200万×補助率1/2=100万-既納付額50万=納付額50万
5年目:累積収益500万>自己負担額200万 収益納付対象300万×補助率1/2=150万-既納付額100万=納付額50万

5年間累計で、補助金額200万-収益納付額150万=実質的な補助金額50万
ということになれば、この補助金を活用する意味はない。

前半で述べたように、省力化投資を行った成果として、既存事業の収益(利益)が増えたことを証明する、因果関係を説明することは事実上不可能です。

そうなると、人件費削減額を省力化投資の効果とみなして収益納付をさせるか、もしくは、ほぼ収益納付のルールは有名無実化するかのどちらかかなというのが現状の認識です。

私も後者であることを願っていますが、皆様はどのように感じるでしょうか?


ちなみによくある質問にも収益納付について書かれていますが、説明はこれだけ。

コールセンターに聞いても本事業の成果による収益(利益)はどのようなものを指すのか、どのように計算するのかについて、現状説明できる情報はなにもないとの回答。

また、収益納付が免除されるケースとして挙げられている「決算が赤字」ということについて、「赤字」とは営業利益なのか、経常利益なのか当期利益なのか、それとも他の補助金のような一定の修正を加えたものなのか等も確認してみましたが、現時点でお伝えできる情報がないとのことでゼロ回答でした。

いろいろと、見切り発車感が否めない中小企業省力化投資補助金ですが、事業再構築補助金の二の舞にならないことを祈ってます。

今日は今年(というかこれから数年間)大注目の中小企業省力化投資補助金について、ちょっとネガティブな見方をしてみました。
参考になれば幸いです。


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