映画「あの頃。」 運命の推しに出会うと、実際の運命の出会いもあったりするんだなぁ。
映画「あの頃。」を見た。松坂桃李さんが好きで見に行った映画なので、あまり前情報がないまま見たのだけれど、想像していたストーリー展開と少し違っていて、結構ぐっときた。
とにかく推し(この映画の場合はハロー!プロジェクトのアイドルたち)に人生を捧げるそんな生き様を描いている映画だと思っていたのだけれど、実際はハロー!プロジェクトをハブにして繋がる人間関係の年月の経過を描いている。
「花束みたいな恋をした」もそうだったように、私は年月の経過による人と人の関係の変化(あるいは変化しないこと)を描いている作品が好きだ。
どん底で推しに落ちて、でもいつかは終わる
「推し、燃ゆ」同様に「あの頃。」でも、主人公は人生のどん底で推しに救われる。
今回は松浦亜弥の「桃色片思い」のPVを見て涙を流すシーンがそれだ。それは、好きになるというより落ちるという感じで、心の隙間に、すとーんと松浦亜弥が入ってくる。
ここからは私の経験からくる想像だけれど、その瞬間やその直後は確かに推しに心が救われるものの、その後もずっと推しが自分を救ってくれる訳ではない。だから推しを推し続ける理由は救われたいからではなく、推すこと自体が目的になっているのだ。これは『推しハイ(high)』状態みたいな感じだと私は思っている。
ランナーズハイがいつか終わるように、推しハイだってさすがにいつかは終わる。でもそれは”冷める”とはまた違くて、時間の経過と共にやってくる卒業みたいなものなのだ。
この卒業は後から振り返ってみると、甘酸っぱくて切なかったりする。
しつこいほど一緒にいる
この映画では主人公たちがハロー!プロジェクトに情熱を傾けていく様も確かに描かれているけれど、主軸はハロー!プロジェクトをハブに展開される男性6人の関係性だ。
この6人が、本当にもう信じられないくらいずっと一緒にいる。推し活動や飲み会の時間を共に過ごすだけじゃなくて皆んなで銭湯に入ったりもして、『そこまで一緒に過ごすの?さすがに胸焼けしない?』と見ていて思うし、『普通の感覚ならそんなことされたら嫌いになるよね?』っというような事件も起こる。でも結局最後まで一緒にいる。これが見ていて呆れると共に、なんだかんだとちょっと羨ましい。
このストーリーは実話に基づいているから、多少演出は含まれたとしても、現実にこんな関係性が成立していたのだと思うと、運命の出会いだったんだなぁと思う。(ハロー!プロジェクトと運命の出会いしたと思っていて、実はちゃんと現実の人間とも運命の出会いをしている。)
変態じみているけど、やっぱり羨ましい関係。
変わったようで変わってなくて、でも同じではない
まぁそんな関係もさすがに一生同じではいられない。大人だし、働かざるもの食うべからずだし、ハロー!プロジェクトや推し仲間と同じくらい大事な存在も生まれたりするから。
映画の途中、関係は変わったんです、とあっさりナレーションで描かれる。
でも、あることがきっかけで久しぶりに全員で再会して、やっぱり変わってないんです、と訂正される。ここまでは既定路線。
でも、結局のところ、同じではいられないんですよ、とぐっさりとトドメを刺すのが、この映画の余韻になる。
だから、推しを推しまくる映画だと油断して見ていると、最後に結構やられてしまう。
「あの頃、おもろかったなぁ。」という仲野太賀さんのセリフが出てくるんだけれど、これがぐっとくる度マックス。
途中のドタバタの伏線回収が若干物足りない感じもあるけれど、他にあまりないような面白い映画でした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?