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#128_【ガイド研修】長崎県対馬歴史研究センター

みなさん、古文書と聞いてどのようなイメージを持たれるでしょうか。

「写真やテレビでしか見たことないけど、何が書いてあるのかよく分からないもの」と思われる方もいらっしゃれば、古いお家の方ですと「蔵の奥に積んであるけど、ほこりをかぶってるし、最近天井が雨漏りしてカビも生えだしたから、いい加減処分かなぁ…」とお感じの方もいらっしゃるかもしれません。

古文書は、セキュリティだけではなく、保存管理の観点からも、おいそれと表に出せない代物ですので、なかなか広く知ってもらえる機会がなく、おまけに保管には途方もないお金がかかりますので、実際「事業仕分け」のようなことが起きると、真っ先に狙い撃ちされてしまうこともあるようです。

対馬では、博物館の中(※)に大量の古文書が眠っているらしい、というくらいの認識はされていそうですが、それがどのような内容で、どのように保存・管理されていて、どのように活かされているのか、という話はあまり知られていないと思います。
(※)正確には、対馬博物館の中にある長崎県対馬歴史研究センターです。

私も一度古文書の読解にチャレンジしたものの、古文が苦手だったこともあり挫折したクチですがf^_^;)、そんな私にも懇切丁寧に史料や文化財行政の解説をしてくださる歴史研究センターの山口さんから「我々研究者よりも、観光ガイドのように一般の方に近い目線の方のほうが、相手のニーズに対して分かりやすく話ができるのではないか」というご意見を伺っていましたので、このたびガイド研修の講師をしていただくことになりました(^^ )。

まず浦野所長から「観光ガイドを通じて情報発信すれば、我々の活動が島外の人にも拡散できるのではないかと考えていたところ、この話がきた」というご期待のお言葉をいただき、気を引き締めてのスタートです。

【所長のご挨拶です。】

つづいて山口さんから、対馬には行政が管理するものだけでなく個人宅にも多くの古文書が残っている話やその歴史的理由、対馬宗家文書の所有の変遷、歴史研究センターが所蔵している文書の保存修理の取り組みをご説明いただきました。

【山口さんの解説です。スライドには懐かしの長崎県対馬歴史民俗資料館が。】

対馬宗家関係資料は国指定の重要文化財ですので、原則として、決められた業者が決められた場所でないと保存修理作業はできないのですが、対馬という地理的事情などから、クリーニング(ほこり、ゴミの除去)、フラットニング(シワ伸ばし)、ブリッジ(虫損等の繕い)といった手当て(維持管理行為)は、歴史研究センターで行っています。
日本の運送業者さんはめちゃくちゃ優秀ですが、それでも資料を運び出すことは、リスクを伴うことなのです。

そして今回は特別に、保存修復室でスタッフの方が作業している様子も見学をさせていただきました。

【折れ曲がっている端っこを平らにします(フラットニング)。】
【資料の右側にはシワ伸ばし用のコテもあります。】
【こんなにシワが伸びました(^_^)b】
【棒で指しているところのように破れたところから破損が広がります。】
【修繕の紙を当てています(ブリッジ)】
【重りを乗せて、できるだけ平らになるよう貼り付けます。】

ちなみに、原則第1・第3火曜日に訪問すると、窓越しに作業の様子を見学できます。

文化財の保存や修復にご興味をお持ちいただけた方には、このような本もオススメです。

「古文書を保存する取り組みのことは分かった、でも何になるの?」
とお感じの方もいらっしゃると思いますので、そのことにも触れておきたいと思います。

例えば、現在「旧金石城庭園」が整備・公開されていますが、庭園を維持管理するというのは大変手間がかかることですので、実は江戸時代からの姿をずっと保ち続けてきた、というわけではありません。
金石城跡が1995年に史跡に指定されたのを機に、史跡の整備事業が行われ復元・整備されたのですが、発掘調査をしていく中で、宗家文書も参考資料として活用されています。現物だけでなく当時の記録も揃わないと、決め手に欠けるといったところなのでしょう。

【旧金石城庭園です。】

古文書といわれるもの自体は全国各地にありますので、なんでもかんでも文化財に指定されるわけではなさそうですが(指定されていないから重要でない、ということではありません!)
なぜ宗家関係資料が国指定の文化財なのか、という点については、藩政史料のなかで質・量ともに充実しているだけでなく、朝鮮との外交・貿易に関する記録類を多数有していることが挙げられます。
江戸時代、外交窓口が開かれていたのは、長崎、松前、薩摩、対馬(4つの口)だけでしたから、外交の記録が残っているというのは大変貴重である、ということです。

対馬が歴史の宝庫として島外の人たちに話ができるのも、このように先人が出来事を記録し、守り続けてきたからにほかならないと思います。

我々ガイドも、その積み重ねによって仕事ができるわけですので、歴史を残す意味やそういった方々の取り組みを広く知ってもらえるよう、ガイドの中でご紹介していきたいと思いますo(^-^)。

お忙しいところご対応いただきました、浦野所長、山口さん、ありがとうございました。


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