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#126_【観光ガイド】ウソとホントのはざま

毎年ではありませんが、4月1日にSNSでウソの投稿をすることがあります。
今年はといいますと…

【たまたま仕事で訪れた対馬高校の「鐘」を見て思いつきましたf^_^;)。】

全体を通して嘘八百な文章を書き連ねている感じですが、事実や文献に基づいていないのは、4段落目のみです。
つまり、鐘がロシアの軍艦のものであったこと、それが対馬高校でチャイムのように使われていたこと、宮田輝アナが暴漢に襲われた話は本当です。

※追記
宮田輝アナが司会した番組は「のど自慢」ではなく「三つの歌」というラジオ番組のようでした(公開収録)。ウソの内容に訂正を加えるのも変な感じですが。

しかし、4段落目の文章があることによって、すべてがデタラメの印象を与えていそうです。事実と嘘の境目が分からんという反応も、数人からいただきましたf^_^;)。

【「鐘」に添えられている解説文です。】

そんなおバカなことをしながら、1ヶ月ほど前に天草でお目にかかった、漫画家の高浜寛先生(といっても、私と同級ですがf^_^;))との話を思い出しました。

最近観光ガイドをしながら、「ガイドが作ったストーリーの扱い方」についてモヤモヤしているところがあり、クリエイターという立ち位置からだと、どのように考えるか聞いてみたい、と思ったのが動機でした。

歴史ガイドをしながら、呪縛のようなものに囚われていると感じる方にとっては、そこから解き放たれるヒントが含まれているかもしれませんので、気になる方は、引き続きご高覧ください。
※めっちゃニッチな話ですみませんf^_^;)。


私のモヤモヤの中身をもう少し掘り下げると、こんな感じです。

  • 国内のお客様に「歴史ガイド」をするときは、歴史的根拠に基づかないことだけでなく、それに基づいているとしても個人的な推察を交えた話はタブー視される。

  • そのような空気がありながら、歴史的事実の「解釈」はまとまっていないことも多く、論争が存在することのほうがむしろ一般的である。

  • 他の解釈を許容する余地がなければ、「Ghost of Tsushima」のような「創作」は生まれないし、定説を疑い覆そうとするほどの意欲ある研究者がいなければ、おそらく「世紀の大発見」は出てこない気がする。

高浜先生は、不器用でセンスのかけらもない私とまるで違う世界を生きていそうですので、お話の内容が大発見の連続でしたが、先のテーマに関係するところですと、こんな示唆のようなものをいただきました。

  • 日本では伝承が認められない傾向にあるが、ヨーロッパでは伝承の研究も進んでいる。伝承といえども、根拠が全くないところから唐突に話が生まれるとは考えにくいし、何も根拠がないところから話を作るのは難しい。

  • 高浜先生は、古文書にあたりながら構想を広げている。天草には訳ありで逃げてきた人がたくさんおり、400年~500年後の子孫が、当時のことを昨日のことのように話していて、興味が尽きないのだそう。

  • 小西マンショの話をした流れで)宗家も、島主(宗義智)がキリスト教の洗礼を受けていたのであれば、その痕跡くらいあってもおかしくないのでは?都合の悪いものを消すのはよくある話。

日本は、アジア、ヨーロッパに比べ戦乱に巻き込まれることが少なかったという背景から、史料としての伝承への捉え方に違いがあるのだろうかと思ったり、伝承やフィクションだからという理由で低くみてはいけないと感じたり。ともあれ、「資料」と「伝承」を並べた時に、単純に優劣のレッテルを貼るのではなく、それぞれをどのように捉え、扱うのかが大事なのだろうと思いました。

一見客観的に見える歴史にも、人の考え(解釈といってもいいでしょうか)が含まれていますし、全てがデタラメのように見える伝承だったとしても、どこかに事実が含まれていることは否定できません。作家が創作をするのに、舞台となる場所に行って綿密に調査するのは、そのためなのでしょう。

自分の中で、まだ全てが消化しきれてはいませんが、なんとなくモヤモヤから解き放たれる兆しは感じました。
どこの馬の骨だか分からないヤツのためにお時間を頂戴しました高浜寛先生、ありがとうございましたm(_ _)m。


☆追記
せっかく素晴らしいお話を聞かせていただいたのに、なにもお返しできるものがなかったので、高浜先生の漫画家以外にしている活動をひとつ紹介したいと思います。

高浜先生は今年2月、RWYC 日本支部の代表に就任されました。
そして、子供たちが地元の文化を知って、それを元にアートを制作し、世界各国で国際交流展を開催する活動、などに携わっていらっしゃいます。

RWYC”Reconnecting With Your Culture” とは、伊パヴィア大学のオリンピア・ニーリオ先生によって設立され、ユネスコとEdA(Esempi di Architettura)によってサポートされるプロジェクト。
「もう一度地域の文化と繋がろう」をモットーに、子供達が地元の文化についてもっと知り、それを元にアートを制作する場を作るという活動をしており、現在は世界各国で子供達の国際交流展を開催しています。

---My life with K--- 高浜寛 公式ブログRWYC Japan」より
2024年4月9日閲覧

天草や対馬に限らず、日本全国どこの地域でも、過疎化や歴史への無関心などによる文化財継承の悩みを抱えていると思いますが、まずは先生が拠点にしている天草から、全国にその輪が広がっていけば、とのことでした。

個人的には、闇雲に「むかしから守ってきたことだから、大事にしろ!」と押しつけられるのでは自分でもイヤであろうし、長続きしないのではないかと感じていますが、史跡や遺物に触れ、当時の世界といまの自分を重ね合わせる体験をすることで、見え方が変わり身近に感じられそうだと思い、「我々の時代と違って、いいなぁ」と思ってしまいましたf^_^;)。
対馬からも、高浜先生の活動の足しになることができるよう、考えたいと思いますo(^-^)。


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