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妊娠と甲状腺の病気~橋本病の妊娠出産について伝えたいこと①~

2児の母miharuです。2016年、2018年に出産し、子育てに奮闘中です。
ブログで1記事ずつ書いていた妊娠~出産後までの橋本病経過について、noteにまとめました。①では第1子の妊娠~出産後までの経過です。

はじめに

 私は10代の頃の健康診断で甲状腺の病気(橋本病)であることがわかり、その後は半年に1回ほど受診していました。橋本病といえど、潜在性甲状腺機能低下症であり、甲状腺刺激ホルモンの数値が高く、甲状腺ホルモンは正常範囲内のため、身体に影響はないという状態でした。
 その後の定期検診で、医師に結婚して妊娠希望であることを伝えたところ、今の状態では流産する確率が通常よりも高くなってしまうとのことで、2014年からチラージンSの内服を開始。 妊娠前~産後まで継続して薬を飲み続け、無事に2016年に第1子、2018年に第2子を出産しました。
 ブログに妊娠~出産の経過を書くようになったきっかけは、私の仕事柄、多くの不妊治療経験者と関わる機会があり、不妊の原因となる甲状腺の病気について、今までに自分が病気と向き合い続けてきて得た知識が誰かの役に立てば、と思ったことからです。
 私の母は3回流産しており、私を妊娠していた時も切迫早産で入院していたと聞き、家族歴はあるのだと感じました。娘ももしかしたら私と同じ可能性があります。ここに書いたことは娘に伝えたい内容でもあります。
どなたかのお役にも立てば、と願ってやみません。

橋本病の妊娠出産への影響

 橋本病は妊娠出産に影響するといわれています。しかし、きちんと管理していれば病気の有無にかかわらず妊娠出産ができます。私自身、妊娠、出産の経過は順調で2人とも元気に生まれてきてくれました。甲状腺のホルモン値は不妊にも影響することが知られているため、管理はとても重要です。

 橋本病は自己免疫性疾患といって、自分の抗体が自分の甲状腺を攻撃する病気です。攻撃することで炎症が起き、甲状腺ホルモンのバランスが乱れます。そして甲状腺機能低下症、潜在性甲状腺機能低下症などは橋本病であると起こりやすい病態であり、不妊や流産、早産、妊娠高血圧症候群などのリスクになることが知られているため、橋本病が妊娠出産に影響するといわれています。

第1子妊娠出産前後の甲状腺ホルモン値の変化

妊娠前の定期受診の検査ではだいたい以下の範囲でした。
TSH 5.0~7.0μIU/ml(0.20〜4.50)↑
T3    2.5~3.0pg/(2.2〜4.3)
T4    1.0~1.2ng/dl(0.80〜1.60)
※カッコ内は基準値です。
 TSHが高値で甲状腺機能は正常という状態が長く続いていました。先生の説明では妊娠中のTSHは2.5μIU/ml以下であることが望ましいとのことでした。そこでTSHの値を下げるためにチラージンS錠50μgを1日1錠服用することから始めました。
 これまで受診してきて薬の調整は難しいと感じています。
 受診時には、血液検査の結果とチラージンSの服用量を見ながら次回の受診日を決めていました。第1子妊娠出産時は、妊娠発覚から妊娠30週まで5回受診して薬の調整を続け、出産まではチラージンSを87.5μg、出産後は50μgを服用し、産後3か月に伊藤病院を再度受診しました。
 以下は第1子の妊娠中、伊藤病院に受診した際の状況と服薬の記録です。

<妊娠6週>
妊娠6週で赤ちゃんの心拍が確認できた時点で受診しました。
●血液検査結果
TSH 0.05μIU/ml(0.20〜4.50)↓
T3 3.1pg/ml(2.2〜4.3)
T4 1.62ng/dl(0.80〜1.60)↑
※カッコ内は基準値です。
このときのチラージンS服用量は75μgでしたが、TSHが低く、T4が上がっており、服用量が多いことがわかったので、チラージンS錠 75μg→62.5μgへ変更になりました。

<妊娠10週>
つわりがきつい中受診したので、印象深いです。
●血液検査結果
TSH 2.9μIU/ml(0.20〜4.50)
T3 2.3pg/ml(2.2〜4.3)
T4 0.98ng/dl(0.80〜1.60)
※カッコ内は基準値です。
基準値内におさまってきていましたが、妊娠中のTSHは2.5μU/mlが望ましいとのことで、チラージンS錠 62.5μg→75μgへまた戻すことになりました。

<妊娠14週>
つわりが落ち着いてきた頃です。
●血液検査結果
TSH 1.53μIU/ml(0.20〜4.50)
T3 2.3pg/ml(2.2〜4.3)
T4 1.15ng/dl(0.80〜1.60)
※カッコ内は基準値です。
基準値内におさまり、TSHも2.5以下となったのでチラージンS錠 75μgで継続することになりました。

<妊娠22週>
安定期に入って、性別が判明した頃です。
●血液検査結果
TSH 1.70μIU/ml(0.20〜4.50)
T3 2.1pg/ml(2.2〜4.3)↓
T4 1.03ng/dl(0.80〜1.60)
※カッコ内は基準値です。
わずかではありますが、T3が下がってしまったため、チラージンS錠 75μg→87.5μgへ変更になりました。

<妊娠30週>
妊娠中最後の受診となりました。
産後3ヶ月で受診するよう指示がありました。
●血液検査結果
TSH 3.31μIU/ml(0.20〜4.50)★
T3 2.3pg/ml(2.2〜4.3)
T4 1.15ng/dl(0.80〜1.60)
※カッコ内は基準値です。
T3、T4は妊娠14週の受診の時と同じ値でした。
注目は★マークを付けたTSHでした。妊娠後期、TSHは2.5以下ではなく3.0以下でよいとのことでしたが、TSHがまた上がってきてしまっていました。ただ、ここまでくればあまり心配ないとのことで、出産まではチラージンS錠87.5μgで継続しました。

<第1子妊娠中のまとめ>
症状はほとんどなかったか気づきませんでしたが、チラージンS錠の服用量は血液検査結果によって変更していたことがわかります。診察時には飲み忘れがないか、必ず確認されました。こういった細かい調整が功を奏したのか、何も問題なく正常分娩で出産することができました。

第1子産後3〜4ヶ月の甲状腺の状態

産後3か月で伊藤病院を受診したところホルモンバランスに大きな変化がみられていました。産後は50μgのチラージンを1日1錠服用していましたが、TSHの値が基準より低く、甲状腺ホルモン値が高いバセドウの状態になっていたので、薬を1ヶ月間やめることになりました。薬をやめて1か月経過した産後4か月頃の状態が以下です。
●血液検査結果
TSH→100μIU/ml以上で測定不能
(0.2~4.5)
T3→2.1pg/mlで基準値以下(2.2~4.3)
T4→0.52ng/dlで基準値より大幅低下(0.80~1.60)
※カッコ内は基準値です。

TRAbという抗体の値も前回より2倍以上上がっており、4.7IU/L(基準値は2.0以下)になっていました。その他、ASTという肝機能の数値も55(基準値は13~30)と高めでした。橋本病になると、肝機能の数値も上がるそうです。
つまり、橋本病の状態にバセドウの所見も重なっている状態でした。先生から自覚症状が出ていないか聞かれました。

思い当たる自覚症状としては、
・今までと比較して手や足の乾燥が顕著になってきた
・日中のだるさが増した
・お昼寝の回数が増えた
・朝起きれなくなった
・髪の毛の量がはんぱなく抜ける(夫がびっくりするほど)
などでした。
薬をやめたことで、甲状腺に大きな負担がかかっていました。
先生からするとある程度想定内とのことでしたが、予想よりも悪い結果でした。TSHが100以上で測定不能となっていたのが、個人的にかなりショックでした。チラージンSの服用を再開するときにまた体への負担が大きいとのことで、50μgから再スタートし、その1か月後に受診予定となりました。

産後はホルモンの変化が激しいとわかっていましたが、自覚症状が出てくるとつらいです。今までは血液検査の数値変化をみて、自分の体の変化を理解していましたが、明らかな症状として自覚できました。また、ホルモンが安定するまでは、第2子を妊娠しても流産しやすい状態なので、それまでは待つのがよいと先生から忠告されました。

第1子産後5か月の甲状腺の状態

産後5か月の状態は以下です。
●血液検査結果
TSH 10.26μIU/ml(0.2~4.5)
T3 2.6pg/ml(2.2~4.3)
T4 1.09ng/dl(0.80~1.60)
甲状腺ホルモン値は元に戻っていました。
体調についても体の重さがなくなり、普通の生活に戻りました。
ただ依然としてTSHが基準値より高く、薬の力を借りてもまだ戻っていないことから、薬の量をあと1週間だけチラージンS50μg→75μgに増量し、その後75μg→50μgに戻すということになりました。その次は2ヶ月後の受診となりました。

第1子産後7ヶ月の甲状腺の状態

第1子産後5ヶ月で甲状腺ホルモン値はTSHのみ高かったため、チラージンS錠50μgを継続して飲みました。(1週間だけ75μgを飲みました)
産後7ヶ月での結果はこちらでした。
●血液検査結果
TSH 4.86μIU/ml(0.20〜4.50)↑
T3   2.7pg/ml(2.2~4.3)
T4   1.19ng/dl(0.80~1.60)
TRAb 2.2IU/L(2.0未満)
※カッコ内は基準値です。
まだTSHが高く、2人目の妊娠希望もあったため、チラージンS錠50μgをしばらく飲み続けることになりました。妊娠希望がなければ服薬は終了していた可能性もありました。これが第2子を妊娠する10ヶ月前です。

第1子産後12ヶ月後の甲状腺の状態

第1子産後1年での甲状腺ホルモン値はこちらです。
●血液検査結果
TSH 5.72μIU/ml(0.20〜4.50)↑
T3    2.6pg/ml(2.2~4.3)
T4    1.16ng/dl(0.80~1.60)
TRAb 1.3IU/L(2.0未満)
※カッコ内は基準値です。

この時期には第2子妊娠を現実的に視野に入れていました。その場合TSHが2.5μIU/ml以下であることが、妊娠には大切であるため、チラージンS錠 50μg→75μgに増量することになりました。これが第2子を妊娠する3ヶ月前です。

橋本病の妊娠出産について伝えたいこと

上記より産後は、妊娠中よりもホルモン値は落ち着いているように感じますが、細かい調整と毎日の服用は欠かせませんでした。

橋本病の妊娠出産について伝えたいことは、冒頭でも述べたように、きちんと管理していれば橋本病でも安心して妊娠出産ができるということです。
確実に安全な正常分娩ができるとは誰しも言えないかと思いますが、橋本病だけの問題であれば、薬のコントロールをすることで基礎疾患の無い他の妊婦さんと同じように出産に向かうことができるということです。

そのためには定期的な受診と服薬がかかせません。薬を飲み忘れないようにきちんと管理することや決められた間隔で受診し、チェックすることで確実にリスクを減らすことができます。私も受診する1人の患者ですが、何か不安なことや受診について相談したいことがありましたら力になりたいと思いますので、いつでもご相談いただければと思います。

最後までご覧いただきありがとうございました。

第2子の妊娠出産時の経過についても今後まとめていく予定です。よろしくければご参照ください。






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