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別にそこに私なんていない。

「急なこと聞くんですけど、絶対部屋、綺麗ですよね?」

通っているバーのマスターに急に私がこの間聞かれた質問だ。
私は、一呼吸おいて「まぁー普通?」と答える。
すると、「いや、それ絶対綺麗な人の普通じゃないですか〜!」と言われた。

実のところを言うと、私は部屋の片付けが大の苦手だ。
苦手だけど、部屋がMAX汚くなって、しばらく放置して、そこから普通の綺麗さにえっさほいさと片づけるタイプ。
正直に「いや全然汚いですよ。」と答えてもよかったのだが、
割と長い付き合いの相手に、どうしてそんな風に思われたのかわからなくて、そう答えてしまった。

マスターは私のタバコの吸い方、灰の落とし方を見てそう思ったらしい。
ふーん。
長年バーで働いている人がそう言うのだから、タバコの吸い方にそういった人柄が出るというのは、割と本当なのだろう。

だから、どこか悲しかった。
割と腹のうちを明かしているつもりの人にも、私の本性は見抜いてもらえないらしい。
どちらかというと良く見てもらえているのだから、悪い気分はしないのだけど、何よりも寂しかった。
私を外から見た時に、見えるものなんてたかが知れているのだと。

私はあまり本音が言えない。
その場の空気やノリを重視してしまう。
そんな自分とは裏腹に、どこか私の愚かさや、浅はかさを見破っていてほしいと願ってしまう。
素直になる勇気がない弱い人間であることは、自分でもわかっているけれど。

私は私らしく生きているつもりだ。
それはあくまでつもりなのだと、0時を少しすぎたあのバーで証明されてしまった。
私が私らしく生きているつもりでも、誰も私に気づいてくれやしない。
気づいてもらおうと、言葉を、行動を残そうとできる人だけが、ありのままで生きていけるのだろう。

そんな勇気を手にできるのは、いつの日だろうか。

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