𝙽𝚊₂𝙲𝙾₃

頭のなかにある、文字を 染み抜きのように 叩き出して。

𝙽𝚊₂𝙲𝙾₃

頭のなかにある、文字を 染み抜きのように 叩き出して。

マガジン

  • 映画レビュー『映画のあーだこーだ』

    完全素人の映画に関する独り言レビューなど。

  • 名称未設定『エッセイのまねごと』

    似非エッセイと呼んでください。

  • 音楽的日記『好きな音楽と、私の生活』

    音楽と紐づいた私の生活について。

  • 読書感想文『暇つぶしじゃない読書』

    暇つぶしじゃなくて、本と向き合う時間をつくるぞ。

  • 名称未設定『詩のようなものたち』

    わたしが、わたしの言葉を書くリハビリをしています。

最近の記事

映画『哀れなるものたち』(2023)を観た。

「公費で受けられるHPVワクチンについてのお知らせ」 これは、郵便物を適当に管理しがちな私が、おもむろに書類を整理していたときに見つけた通知だ。 ここから連想するかのように思い出したのが映画『哀れなるものたち』だった。 「女の子なんだからタバコやめなよ。子どもとか産めなくなるかもしれないし…」と言ってきた、サークルの女の先輩。 バックパッカーをして、1人で世界を巡ってみたいと言ったら「男の子だったらできるけどねぇ。」と言ってきた、母親。 「君が頑張ったら、僕は君を"頑

    • 別にそこに私なんていない。

      「急なこと聞くんですけど、絶対部屋、綺麗ですよね?」 通っているバーのマスターに急に私がこの間聞かれた質問だ。 私は、一呼吸おいて「まぁー普通?」と答える。 すると、「いや、それ絶対綺麗な人の普通じゃないですか〜!」と言われた。 実のところを言うと、私は部屋の片付けが大の苦手だ。 苦手だけど、部屋がMAX汚くなって、しばらく放置して、そこから普通の綺麗さにえっさほいさと片づけるタイプ。 正直に「いや全然汚いですよ。」と答えてもよかったのだが、 割と長い付き合いの相手に、ど

      • 映画『朝がくるとむなしくなる』(2022)を観た。

        体を少し壊してしまい、1週間くらい体が縦になってる時間のほうが短い日々を過ごしていました。 少しずつ、動く元気を取り戻してきた頃、外に映画を観に行くことできました。 それが、映画『朝がくるとむなしくなる』。 カルチャー系のインフルエンサーがSNSに投稿していたのをたまたま目にして知った作品。 動かない体を重力のままに、ベッドに沈めながら目にしたそのスマホの先には「監督:石橋 夕帆」の文字。 過去作の映画『左様なら』※を大学生時代観て、ぶっ刺さり、ちらほら短編などをU-NE

        • 頼りにしていた先輩がSNSを消した。

          面倒を見てくれた、とまでは言わないけれど、お世話になった先輩がInstagramのアカウントを消していた。 よくしてくれていた一つ年上のサークルの大学の先輩だ。 その先輩は色々これまでの人生の中で抱えてきたものがある人だった。 そういう心の少し薄暗いところをたまに垣間見せる人だったけど、それもその人の魅力で、皮肉の効いたことを言う人だった。 私はその先輩が恋愛的な意味で好きだったわけではない。 だけど、接していて落ち着く人だった。 彼も私も暗い音楽が好きだった。 好きな音

        映画『哀れなるものたち』(2023)を観た。

        マガジン

        • 映画レビュー『映画のあーだこーだ』
          11本
        • 名称未設定『エッセイのまねごと』
          10本
        • 音楽的日記『好きな音楽と、私の生活』
          5本
        • 読書感想文『暇つぶしじゃない読書』
          5本
        • 名称未設定『詩のようなものたち』
          7本

        記事

          坂本裕二の脚本かと思った。

          私は無類の音楽好きだ。 そう言うと大抵「どんな音楽が好きなの?」と訊かれるけど、本当にどんなジャンルでも聴く。 邦ロックも聴くし、70年代の洋楽ファンクとかも聴く。 そんなオールラウンダーな具合なので、実際に足を運ぶライブも色んなアーティストのものがあるのだけど、様々なライブに行くたびにいつも実感することがある。 それは、観に来ている客層っぽさがなんでこうも偏るのかということ。 みんなライブ来る前に「今日はこんな感じの格好ね。」とドレスコードでも作ってるのか?と思うくらいに

          坂本裕二の脚本かと思った。

          2023年に『乳と卵』を読む②

          「そういえば読んでなかった。」と大学生の頃に古本屋で買った『乳と卵』(川上未映子 著)を2023年に読んでみたことで、感じてことをまとめようと思う。 前回は、この本を読んで触発された私の「美的感覚」についての考えを書いてみた。 その他にもこの物語を通して、子を持つことについても考えを巡らせたので、二回目の今回はそれを記してみる。 0.はじめに作品の紹介 本作は、第138回芥川龍之介賞受賞作品である。 著書の川上未映子氏は、ホステスをしていた過去や、歌手として活動していた時

          2023年に『乳と卵』を読む②

          映画『天使のたまご』(1985)を観た。

          卵という殻の内側に、自己を見る、外の世界を見る、というシーンが面白かったかもしれない。 空っぽの丸いガラス瓶と、彼女が温めてきた卵。 一体何が違うのか。本当はどちらも同じかもしれないのに。 その中身を見ようとしないからそれは卵であり、 その中身を直視するときそれはガラス瓶であるのかもしれない。 夢を夢と気づくのは夢から覚めた時だけで、 つまり自らが目覚めようとしてみなければその夢が現実か反証することはできない。 それならば一度割ってしまうしか確かめる術はない。ということか。

          映画『天使のたまご』(1985)を観た。

          2023年に『乳と卵』を読む①

          体調を崩し、急遽仕事を何日か休ませてもらっている。胃腸が荒れていて、あまり物が食べられない。お粥なんかを食べているけど、どうしても空腹感はある。 空腹感はあるのに、食欲が湧かないもどかしさを忘れるために、「そういえば読んでなかった。」と大学生の頃に古本屋で買った『乳と卵』(川上未映子 著)を手に取ってみた。 今回は、2000年代に発表された本作を、あえて2023年に読んでみたことで、感じてことをまとめようと思う。 0.はじめに作品の紹介 本作は、第138回芥川龍之介賞受

          2023年に『乳と卵』を読む①

          お笑いコンプレックス【わたし変遷史 #2】

          私は幼少期、関西に住んでいたのに小学校に入るまで関西弁を話さなかった。きっと関西の地域では珍しい子どもだったと思う。 大きくなると周りの影響で関西弁は話すようになったけど、「冗談が通じない」とよく言われたし、子どもの間で流行っているバラエティー番組を家で見ることも少なかった。だから、私は「お笑い」を娯楽として見るという習慣がない関西人になってしまい、なんだか肩身の狭さがあったのだが。 そんな私は今や、関西人ではなくなったとともに、休みの日には芸人のライブに足を運ぶほどにな

          お笑いコンプレックス【わたし変遷史 #2】

          みんなが「記憶 消してもう一回観たい」という映画について。

          これはショートケーキのイチゴをどのタイミングで食べるかの話に似ているかもしれない 私は映画を観るのが好きです。 言わずと知れた名作をまだ観たことがなかったとき、これを読んでいるみなさんはどのタイミングでそれを観ようと思いますか? 「映画を観るのが好き」と先ほど書きましたが、映画って面白いと気づいたのはなんと18歳くらいの時。 今23才なので遅咲きです。 大学受験が終わって卒業までの時間、何をしても自由という期間が初めてで色んなことをしました。 ちょうどその当時、Amaz

          みんなが「記憶 消してもう一回観たい」という映画について。

          フィルムカメラを手に取った日。【わたし変遷史 #1】

          子供の頃からずっと写真が下手くそだった。 親のデジカメで撮った写真は、十中八九ブレていたし、iPhoneで撮るようになっても画面には斜め45度に傾いた世界が写っていることも多かった。 そんな私が、ここ数年は出かけるとき、フィルムカメラを持ち歩くようになった。 写ルンですやチェキが、「エモい」という言葉の登場と一緒に若い子たちの間で流行りだしたから、それに乗っかっただけに見えるかもしれない。 けれど、私には明確にフィルムカメラに興味を持ったきっかけがある。 それは、あるバ

          フィルムカメラを手に取った日。【わたし変遷史 #1】

          人は何を、"愛"としたのだろうかpt.Ⅱ

          「ルーヴル(louvre)には愛(love)がある」 このキャッチコピーが印象的ですが、LOVEをテーマに様々な作品からピックアップするというのは新鮮でした。 今回はこの企画展に行ってみて感じたことを書いてみた第二弾です。第一弾は、展示を通して感じたことをまとめました。 こちら >> 人は何を、"愛"としたのだろうかpt.Ⅰ 今回はこの企画展を通して少し気になってしまったことを書かせてください。 むむむ、その❶ この展示では、室内の解説をスマホで読むこともできるように

          人は何を、"愛"としたのだろうかpt.Ⅱ

          Someday I Trust

          あの時の私たちが毎日身に纏っていた、制服の紺色のスカートのプリーツの固さを思い出して泣いた。 授業が終わった頃にはただ邪魔になってしまった雨傘たちを、コツコツと音を鳴らして喋りながら駅まで歩いた日。 さっきまで君が座っていたから、逆撫でされたようになっている電車の赤いモケット。 お風呂でもベッドでも泣けないから、帰り道のほとんど誰もいない鈍行の電車で泣いていたら横に来て心配してくれたリュックを背負ったおばあさん。 西陽がさす、ちょうど県境の田んぼのところで、遠くを眺めなが

          『寝過ごしてしまった春』━私にとっての、春ねむり━

          春ねむり。 2010年代をヴィレッジヴァンガードで過ごし、 眠れない夜はツイキャスを開いていた私にとって、 彼女の音楽は、私のこれまでの人生で、ずっとすぐ近くで鳴り続けていような音楽だ。 彼女を語る時、DAOKOや神聖かまってちゃんなどのアーティストの名前が並べて挙げられることがある。 ポエトリーな歌声と、囁きと絶叫。確かにそれらの要素は通ずるものがあると思う。 私たちはずっと苦しかった。 大きな声で不平不満を叫べば問題児だと言われ、 小さな声で話していると最近の若者は何

          『寝過ごしてしまった春』━私にとっての、春ねむり━

          人間は何を、"愛"としたのだろうか pt.Ⅰ

          「ルーヴル(louvre)には愛(love)がある」 このキャッチコピーが印象的ですが、LOVEをテーマに様々な作品からピックアップするというのは新鮮でした。 「愛」という普遍的で想像しやすいものを軸に展示することで、神話や聖書に馴染みのない人たちにも、アートを身近に感じてもらいたいという企画者の方々の想いを感じました。芸術鑑賞の時にありがちな「なんか難しそう」と敬遠してしまうような感覚を減らそうと、受け手に寄り添ってくれているような。 今回はこの企画展に行ってみて感じたこ

          人間は何を、"愛"としたのだろうか pt.Ⅰ

          つぶやきたち、瞬き

          生ぬるい温度の飲みものが苦手だ。口に含んだ途端、自分の体温とおんなじくらいで混乱する。 自分が生きているのか死んでいるのかわからなくなる。だから、生ぬるい幸せも苦手だ。ひどくつらかったり、何も起こらなかったりする方が生きていると実感できる。 愛を纏うあなたは、私の心の中にいる方が美しい 恋を纏うあなたは、私の目の前に現れてこそ美しい 本当のこと 私は誰かのふりをすることを生きることだと勘違いしている 私が私らしくいられるのは、私の私しかいない世界だけだから 手を繋いでい

          つぶやきたち、瞬き