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スタンフォードのオンライン講座で母乳育児について学んでみた。内容サマリと感想

以前のnote↓でも少し書きましたが、「母乳育児って何がいいの?ミルクじゃだめなの?」という自分の素朴な疑問を解消するため、Courseraというオンライン学習サービスプラットフォームでスタンフォード大学が提供しているShort courseで母乳育児について学んでみました。


先日無事コースを修了したので、そこで学んだことのサマリと自分の感想を残しておきたいと思います。

感想についてはあくまで私個人が感じたことなので、これが正解!というものを示すものではなく、出産を間近に控えた一妊婦がこんなこと考えてるんだなーくらいに読んでいただければと思います。


〈はじめに〉なぜ学びたいと思ったか、何をしたか

まもなく出産の私ですが、かねてから母乳育児の何が良いのか?については素朴な疑問を持っていました。
いわゆる「完母」(かんぼ=粉ミルクなどの代替品を使わず母乳のみで育てること)にこだわる方がいるのはなぜなのか、粉ミルクじゃだめなのか、何か気を付けた方がいいことってあるのか…

この辺りのことがあまり分かっておらず、漠然と「母乳が良いと言われてるみたいだけど、それってなんで?」を解消したくて、それを科学的な根拠をもって知りたかったというのがモチベーションでした。

以前からCourseraで何か学びたいと思っていたので、これを機会にスタンフォード大学が提供している Stanford's Short Course on Breastfeeding というコースを見つけて受講することにしました。


"Short Course"とあるように、このコースは1週間程度で修了できる簡単なもので、計9本の動画を見て、その都度簡単な選択式のテストをクリアすべし、という内容のものでした。テストの答えはすべて動画の中にあるので難しいこともなく、修了のハードルはかなり低かったです。

では、ここから各動画で説明されていたことのサマリ+その都度の私の簡単な感想やコメントを載せていきたいと思います。
(注:計9回分まとめているのでなかなか長いです
(注:コースはすべて英語なので、私が簡単に意訳したものをサマっています)


第1回:How does Breastfeeding work?(授乳のメカニズム)

母乳は「乳腺」というところで作られ、分泌される。この乳腺は乳管の集まりに流れ込み、乳管が乳首に乳を運ぶようになっている。
乳首を取り巻く皮膚の暗い部分は「乳輪」と呼ばれ、生まれたばかりの赤ちゃんが母親の乳首を見つけるのに役立つ。
授乳が始まると母親の脳にその情報がいき、2種類のホルモンが分泌されることによってさらに母乳の生成が促進される。乳児の泣き声によってもこのホルモンは分泌される。
このことから、母乳で育児をする頻度が高ければ高いほど、母乳の出はよくなる傾向にある。

初回は、そもそも母乳はなぜ出るのか?についての説明でした。

妊娠すると乳首がドス黒くなる…とはよく言われますが、これってちゃんと理由があったんだ!それによって赤ちゃんがおっぱいを飲めるようになるんですね。

それから、赤ちゃんの泣き声によって母親のホルモンが働いて母乳を作るというメカニズムも初めて知って驚き。よくできてる…


第2回:The Benefits of Breastfeeding(授乳によるメリット)

母乳は乳児を育てることに特化した高い栄養素を含んでおり、乳児の成長フェーズに合わせて必要な種類の栄養を提供している。
例えば、「初乳」と呼ばれる初期の母乳はタンパク質と抗体を豊富に含んでおり、新生児の成長と周囲の微生物による感染リスク抑制に役立つ。
赤ちゃんの成長に従い、やがて母乳は初乳に比べてより高い濃度の糖や脂肪を含むようになり、赤ちゃんの成長を助ける役割を担う。
また、母乳自体が成熟してくると、それは徐々に母親の体内で作られた抗体を含むようになる(母親の実際の生活環境の中で存在している固有の微生物に対する抗体を含む。つまりオーダーメイド)。
上記以外にも、粉ミルクを買わなくて良いことによる経済的メリット、母乳育児によって母子の間の絆が深まるといったメリットがある。

ここで特に驚いたのが、母乳がオーダーメイドであるということ!
住んでいる地域や周辺環境によって存在している微生物やウィルスが違っており、母親の体内で作られた母乳にはこれらに対応した抗体が含まれているのだそう。これは確かに、粉ミルクで一概にカバーされるものではなさそうだ。

確かに、日本人がインドに行くといきなりお腹壊すけど現地の方は平気、とかそういうことですよね(伝わりますか?w)。その周辺環境に合ったした抗体や免疫が備わってると。で、それが授乳によって乳児にも引き継がれるということが大きなメリットなんだなと分かりました。


第3回:Challenges New Mothers Face(母親が授乳において直面する困難)

WHOによると世界の成語6カ月未満の子どもの40%が母乳育児されているが、母乳育児をするにあたって母親は様々な困難に直面する。
授乳による乳首の痛み(ひび割れ等)がそれにあたり、授乳とは母と子両方にとって練習が必要なものである。
充分な母乳が提供されているのかどうかの判断基準は、
・適切な頻度で授乳ができているか
・乳房の状態(授乳後に張っていないか)
・乳児の排泄量が適切かどうか
など。
授乳とは始めからうまくできるものではなく、母子にとって命と健康を守るための習得すべきスキルである。
また、そのほかにも母親は周囲からの科学的根拠のないアドバイス(早めに固形食を始めた方がよい等)にも苦労することがある。

これまでにも母乳育児をしていた友達から「出が悪くて困った」「とにかく痛い!(涙)」といった話を聞いたことがあったけれど、やはり授乳って簡単なことではないんだな、、経験のない私は、「赤ちゃんが生まれれば母乳は出るもの」だと思っていたけれど、思った以上に慣れるまでが大変そうだということが分かりました。

授乳は母と子がともに習得すべきスキルである、ということがもっと広く知られるようになれば、自信を無くして落ち込んでしまうお母さんが減ったりするんだろうか、とも思ったりしました。
授乳したくてもうまくいかない、となった時も焦らず落ち込まず、スキルを習得するつもりで地道にやっていくしかないのだなあ。
(実際にその時になって、自分がそこまで冷静になれるのかはまだ分かりませんw)


第4回:Recommendation(授乳に関する推奨事項)

この回はほぼこれまでの回のおさらい的な内容でした。

生後6カ月は完全母乳(=処方された必要な投薬以外、母乳以外の固形物や飲料を与えないこと)が推奨されている。なぜなら、母乳には乳児にとって理想的な栄養素と、その子が生きる身近な環境における細菌感染リスクに対して、オーダーメイド型の抗体を与えることができるため。
生後6か月を過ぎたら、徐々に家族の食卓に並ぶものと同じものを、
・子どもが食べやすいように加工し、
・且つ栄養素が偏らないようにして、
与えていくと良い。子どもに食事を与えるということは単に栄養補給だけでなく、子ども自身が周囲から愛されている、大切にされている、という実感を持つためにも大切なプロセスである。


第5回:How to Establish a Good Latch(赤ちゃんがうまく母乳を飲むには)

授乳は母子ともにリラックスできる、できれば静かなところで行うと良い。
授乳には色々なポジションがある(横抱き、フットボール抱き、添い乳など)。どのような抱き方が最適かは人によるので、母子にとって最も快適な姿勢を見つけていくと良い。
授乳する際に重要なのは、赤ちゃんの舌・口蓋をできるだけ乳房と広く接触させること。浅くくわえていると乳首のひび割れによる痛みなどのトラブルにつながってしまうため。赤ちゃんが大きく口を開けてミルクを飲めるようにするには、赤ちゃんの上唇を乳首に触れさせてから少し離す→赤ちゃんが舌を前に出すまでこの動きを繰り返す。
やり方が分からない、うまくいかない場合は助産師などの専門スタッフのアドバイスをうけることも有効。

「フットボール抱き」ってそのまま英語で "Football hold"って言うんだ…っていう素朴な感想w

この回では実際に母親が授乳する際の具体的なtipsが説明されていて、実際に自分が授乳を始めた時にも見直したいと思える回でした。乳首の痛みがやばいというのは散々いろんなところで聞くので、入院している間に助産師さんから色々教えてもらおう…


第6回:What happened to the practice of breastfeeding?(授乳習慣の変遷)

これまでにも歴史的に、母乳は乳幼児の命を救ってきた。
1900年代初頭頃から、母親を亡くしてしまったり母親が深刻な病に侵されているような乳幼児のために徐々粉ミルクが開発・供給されるようになった。これらの粉ミルクは育成環境固有の細菌感染などに対応できないなど母乳に劣る点はあるものの、乳幼児が生き長らえるための助けになっていた。

徐々に粉ミルクは「育児を楽に」「母乳と同等(かむしろそれ以上の)栄養を含む」と謳われ、ヨーロッパやアメリカにおいて商業的な成功を収めるようになった。欧米の市場が飽和すると次に企業は途上国へマーケットを拡大していったが、必ずしも誰もが清潔な水や哺乳瓶を手に入れられない途上国の育児環境の中においては、むしろ粉ミルクの普及が乳幼児の死亡率を上げることに繋がってしまった
これらの問題により、やがて粉ミルク産業に対する世界的なボイコット運動が起こり、WHOは粉ミルクの販売を規制するためのガイドラインを発表した。
かつて母乳育児の方法は世代間で受け継がれていたものだったが、粉ミルクの普及により母親を取り巻くコミュニティの授乳に対する理解は低下。本来授乳は習得すべき「スキル」であるにも関わらず、母親が必要なサポートを得られずに苦労する状況に陥ってしまった。今一度、母親を取り巻くコミュニティが母乳育児をサポートできるような状態になるべきである。

コースを受講しながらも、なぜ「母乳>粉ミルク」という前提のもとに説明がされているのかが実はまだあまりピンと来ていなかった私。この回の内容を受けて、特に「母乳>粉ミルク」であるべき状況についてよく理解できました。
日本で暮らしていれば、清潔な水や消毒済の哺乳瓶に簡単にアクセスすることができるけれど、そうはいかない環境下では母乳が最も安全な手段ですよね。特に体内に免疫システムが整いきっていない赤ちゃんにとっては、大人だったら平気な細菌でも命取りになるだろうからなおさら…。


第7回:Unsafe Feeding Practices(危険な食習慣)

新生児は、は生まれると無菌環境(=母親の胎内)から微生物が生息する環境(=外の世界)に移行することになる。新生児の免疫システムは母親のそれに大きく依存しており、母乳によって周囲の環境の潜在的な病原体に対する特有の免疫を備えていく。この受動免疫がないと、新生児は最初の6か月で感染症にかかる可能性が大幅に高くなってしまう(不衛生な水、食品など)。
地域によってはまだ母乳育児がされるべき時期(生後6か月以内)から固形食を与える慣習もあるが、これは非常に危険である(新生児の免疫システムがまだ整っていないため)。

これまた、これまでの内容と重複する部分が多かった印象。
離乳食については生後6カ月頃から、ということが推奨されているのは今の日本でもほぼ同じですね。(ということは、うちの子の場合は最初保育園に入りたての頃はミルクだけなのか…)


第8回:Tips for Working Mothers(働く母親のためのTips)

多くの母親は出産後に仕事に戻る必要があり、彼女たちにとって半年間母乳育児を続けることは難しい。母親たちにとって大事なのは、どのような方法が自身の環境において最適なのかを選択すること(預け先で搾乳した母乳を与えてもらう、職場に子どもを連れていくなど)。搾乳をする場合は、ヘルスケアの専門家に清潔に母乳を搾乳し、保存するためのアドバイスをもらうのも良い。
母親たちがどのような選択をするとしても、職場とのコミュニケーションを早いうちから取っておくことが重要。時には必要な情報ソースを職場に提供することもしながら、母乳育児を続けていけるような工夫をすると良い。

そう、これ!待ってました!
私も例外なくそうですが、生後6か月までずっと母と子が一緒にいて授乳を続けられるとも限らない。そういう時どうするの?という疑問に対するアンサーになった回でした。
それでもやはりこのコースの前提が「生後6カ月までは完母推奨!」なので、粉ミルクの話はここでは登場しませんでした。

でも、結構これって大変じゃない?というのが私の正直な感想。
これだと職場復帰した後の忙しい時間の合間で搾乳もしないといけなくて、結局母親にしか負担がない。粉ミルクを併用したり切り替えたりすれば、パートナーに協力してもらえるのにな~、と。
個人的には、特に職場復帰後は粉ミルクとの併用をするんだろうなと思いながら受講した回でした。


第9回:When it's not possible to breastfeed(母乳育児が難しいときには)

健康状態や過去の手術によって母乳育児ができない母親もいる。これらのケースにおいても、母親が我が子の命を守り、絆を深められる方法はある。
地域の母乳バンクに寄せられた他の母親からの母乳を与える、清潔な環境で正しく準備された粉ミルクを与えるなど。また、カンガルーケアなどで我が子との絆を深めることもできる。
母乳育児ができないからといって負い目を感じることはなく、持てる機会の中でできる限りのことをしてあげられる母親こそが、その子どもにとって最高の母親である

健康上の理由などで母乳育児をしたくでもできない方もいるであろう中で、そのようなケースにおいてはどうすれば良いのか?
これも気になっていた点でしたが、ちゃんと最後にカバーされていました。

持てる機会の中でできる限りのことをしてあげられる母親こそが、その子どもにとって最高の母親である」結局これに尽きるなと。
だって、母乳で育てられないからといって愛情が足りないはずがない!「この子のために何をしてあげられるだろう?」ということを、自分の手の届くリソースの範囲内で考えていくことが大事なんですね。


まとめと感想

自分なりに、このコースを通じて知れてよかった!と思ったことは下記。

母乳が粉ミルクよりも優れている点について
・母乳は、母子が暮らす環境固有のオーダーメイド。新生児の成長を助けるためだけでなく、必要な免疫システムを整えるための抗体が含まれている
・粉ミルクを作る際の衛生面のリスクにさらされる危険がない(清潔な水や哺乳瓶にアクセスすることが難しい環境においては特に)

授乳の難しさ、大変さ
・授乳に伴う痛みや、出が悪いなどのトラブルはつきもの。授乳は赤ちゃんが生まれてすべての母親が簡単にできるものではなく、「習得すべきスキル」である


内容のわりに少ない感じしますが(笑)、特に自分にとってnewで、且つ知れてよかったなと思ったことはこんな感じです。

コースを受けながら、終始「え、粉ミルク併用でもよくない?」と思っていたのは正直な事実ですが(笑)、このコースを受けているのは日本人だけじゃない

コース内のディスカッション用の掲示板を見ていると、本当に様々な国や地域からの受講者がいました。日本のように、安全な水と清潔な哺乳瓶をすぐに準備できる環境なんて、本当に一握りなんだなと痛感。そうした広い受講者層に対して、このスタンフォードのコースが「母乳>粉ミルク」を前提とした説明をしていたことには納得感を持てました。


日本で仕事と育児を両立することになる私としては、「育休中はできるだけ母乳育児チャレンジ→復帰後はパートナーとの協力体制を築いて粉ミルク併用」が妥当なプランな気がしています。

もともとは自分の素朴な疑問を解消したくて受けたコースでしたが、愛をもって、自分の家族にとって最適な選択をしていくことが1番大切なんだなということも同時に学べた気がします。

これはきっと授乳云々に限った話ではなくて、これから始まる育児全般にも通じる考え方ですよね。

うまくいかないこと、思い通りにいかないことが多くても、それを人と比べて負い目を感じることはなくて、「自分は何を選択するか?」「そのために必要なツール、助け、知識は何か?」を考え続けることが大事なんじゃないかな、と思えたのでした。

明後日には予定帝王切開で出産予定の私ですが、産後余裕がなくなってあたふたし始めたころに、自分でもこのnoteを読み返して冷静になりたいと思います。笑


長い記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございました!



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