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『20回やってみよう』を”やらない”だけ

「どうやったら痩せますか?」という質問にキレてる動画が流れてきて、要約すると「知ってるでしょ?運動する、食事制限する、それをやる。それだけなのに何度もこの質問してくる。やれよ」という内容だったのだけど、これは僕も同感で、常々レッスンで伝えなければならない課題だ。つまり、


知っているけど”やらない”という人を、どう動かすか?


ここにレッスンのすべてが詰まっているように思う。
ギター初心者はコードを覚えてもらうようにしている。「簡単なコードを3つ、まず覚えましょう」とスタートする。具体的にはオープンコードG、Em、Am7を覚えてもらうのだけど・・・・

実際の資料はこんな感じ。小学生も大人も同じところからスタート。

「どうやって覚えたらいいか分かりません」という生徒は多い。というか、レッスンにくる生徒さんの多くはそう言っては申し訳なさそうにする。なるほど、これはひょっとしたら『覚えてきてください』という言い方が良くないのかもしれない。

そこで僕は言い方を変えた。


「(このコード進行を)20回、繰り返してきてください」
「できれば”のべ”200回、やってみてください20回×10回です」


この言い換えにより生徒さんは何をするべきか考えなくて良くなり、実際、それでコードを覚えられるようになったりした。
生徒さんだってそりゃ、眺めて覚える訳じゃないと頭は理解してるだろうけど、具体的に回数を指定してやれば目標達成しやすくなるようだ。

ここまで、レッスンにおける良い言い換え例という話で終わってもいいんだけど・・・・



20回やればいい、と伝えて20回やれない人は多い。というかほとんどの人はできない
だいたい10回もいかずに”疑問”を持ち始めて、「(このまま続けていいのだろうか?)」と自問自答して手を止めるのである。単純作業を繰り返すことに意義を見出せなくなる気持ちは分からなくもない。

ないんだけど想像してほしい。

1回目と2回目の違いは微細であっても、1回目と10回目では少し違いが感じてきたりする。ギターであれば力加減であるとか角度であるとかが、体が慣れてより自然な形に近づいていく。1回目と20回目とでは、かなりの変化がある。特に初心者だと力みがちだから、20回やると疲れて脱力したくなってくる。
まさにその瞬間を待つべく20回やるべしと指導している。

レッスンに通う生徒さんは「失敗してはいけない」「正しいやり方でやらなきゃ下手になる」と思い込んでいる場合が多く、一人で練習すること自体に後ろめたさのようなものを感じるらしいのだが、実際のところ音楽において「正しさ」も「失敗」もない。自分にとって楽であるとか、好き嫌いのようなものが浮き彫りになれば、それが正解と言ってもいい。普遍的なものではなく、自分自身で気がつき、磨くような分野だ。

僕はレッスンで繰り返し「あなたにとって楽な弾き方や力加減や形があるだけで、僕の見た目をマネしてもダメですよ。自分で見つけるゲームですから」と伝えるようにしている。少なくともギターについてはこれ以外の言い分は全部嘘だと言って過言ではないし、おそらく楽器という楽器は「自分にとって快適である」ことが最も重要であると僕は考えている。

こう書いていると僕は随分冷たい先生のようでもある。もっとビシバシ「こうしなさい」を指導した方が親切な気もする。だけど、重要なのは生徒さん本人が”自力”で上達していく道筋を与えることだし、僕はヒントを与えて発見するのを見守るくらいしかできない。
もっとも課題の楽譜や資料はしっかり渡すのだけど、結局本人が楽器を弾くしか上手くなる道はないのだから、やっぱりサポートしているだけだ。

ギターを始めた人に伝えたいのは、コードを覚えられないと悩むより「20回やってみる」を繰り返すこと。それを継続的に1週間くらい続けると、体が頭が勝手に弾き始めるようになる。まず『20回』をやってみてほしい。


ちなみにアコースティックギターで練習不足の人、その理由の多くは住環境にあります。消音器とか、右手は親指で弾くとかの工夫が必要ですね・・・




サポートなんて恐れ多い!ありがたき幸せ!!