見出し画像

ビールの注ぎ方の源流を千利休に見る

ビールスタンド重富マスター、そしてビール伝道師の重富ゆたかです。
缶ビールのプルトップの「穴」を「飲み口」ではなく「つぎ口」と呼ぼうプロジェクトリーダーです。

重富ゆたか/ビールスタンド重富マスター・麦酒伝道師

重富は、日々ビールの注ぎ方を考えると同じくらい、いやそれ以上にビールの歴史を考えています。知りたいと思っているのが、日本のビールの注ぎ方を誰が考え、誰が始めたのかということです。

日本のビールの注ぎ方の始まりを考える

日本のビールの注ぎ方のトラディショナルはおそらく「一度つぎ」1899年に東京新橋に誕生した「恵比寿ビヤホール」そこから派生したのが「二度つぎ」1909年東京神保町ビヤホールランチョン。もしくは、1949年東京八重洲灘コロンビア。この話はまた別の機会に…

明治に始まった日本人の「ビール」を飲む文化。そこでビール樽からビールを提供するために「ビール注ぎ手」が必要となります。いわゆる樽からジョッキに注ぐ「ビール注ぎ」をドイツから学んだはず。
しかし現在伝わる「一度つぎ」は、ドイツや海外などで注ぐビールの手法と比べると、各段に複雑で、熟練の技術を要します。
ビール注ぎ手たちの間にはこう語り継がれています。
ビールを注ぐ前にジョッキ洗い3年泡切3年、注ぎ8年
この言葉には、以前から日本にある「道」に近いものではないかと感じていました。
そうです「茶道」「華道」「書道」「柔道」・・・・「道」です


お茶の関係者からの着想

お茶の生産者さんや、販売業者さん。茶器の販売店などの皆さんから伺った「抹茶」に関するお話は、とても衝撃的で、魅力的なものでした。そこで私が感じたのは・・・・

「抹茶」と「ビール注ぎ」は…同じ源流ではないか…いや同じだと。

1つの器の中で、そのモノのみを泡立てて完成させるドリンク。
「抹茶」と「ビール」。

抹茶を泡立てる
ビールを注ぐ(泡立てる)

2枚の写真から同じ「」を感じ取れませんか?
お茶碗1杯、グラス1杯に「心を込めて」仕上げるドリンク。

そして「」の意味が同じなのです。
簡単に言うと、苦みは泡に包み込まれていきます。泡立てれば泡立てるほど、お茶の苦みは隠れて「お茶の甘味」が現れます。ビールはホップの苦みが泡に吸着されて「麦の甘味」が引き立ちます。

まずビールの注ぎ方の源流を千利休として仮説を立てる

以前のnoteにお茶の基本精神「和敬清寂」を書かせていただきました。

ビール注ぎ業界に伝わる
ジョッキ洗い3年」「泡切3年注ぎ8年
これは「和敬清寂」につながる言葉のように思えてなりません。
つまり、千利休が源流ではないかという仮説です。

三千家

千利休を祖とする表千家、裏千家、武者小路千家を「三千家」と呼びます。
ここで私が流派の違いを書くことは憚られるのですが…「泡」についてのみを重富の解釈で書かせていただきます。

表千家 

部分的に泡のない部分(池、島、月という)があることが望ましい

裏千家

しっかりと泡立てることが望ましい

武者小路千家

泡が全くないことが望ましい

裏千家文書館

泡立てる「意味」「意図」を調べるために、京都裏千家「茶道資料間」に2日間通って調べてみました。

茶道資料館
今日庵文庫

残念ながら詳しい資料は見つかりませんでした。また司書の方にお尋ねしたところ、「泡立てる」が確立したのは最近になってからではないかとのコメントをいただきました。

しかしこれは、今から、茶道とビールの関係性を探れる(創れる)余白があると言うこと。

日本のビール業界の「三千家」

では日本にある「ビールの注ぎ方」の流派を考えてみたいと思います。

一度つぎ

 一度で注ぎ切る。カランを閉めた時にグラスの中でビールを3回転半で静止させる。テーブルにお出しするときに泡とビールが「7対3」が望ましい。

見た目も大切にする部分はまさに「表千家」

二度注ぎ

 グラスの中で「しっかり泡立てる」ふわっとした口当たりの泡が大切。

この泡の感じは間違いなく「裏千家」

現代の注ぎ方

 カランから静かにそっとグラスに注ぎ、泡立てない注ぎ方。

これこそが「武者小路千家」

三度注ぎ についてですが、この注ぎ方はヨーロッパよりキリンシティーさんが導入した注ぎ方であるので、日本独自の「流派」に重富は入れていません。

ビール注ぎ業界に必要な「体技心」

日本で造られ、使われ続けてきた「スイングカラン」

日本最古のビアホール銀座ライオンの「スイングカラン」

このスイングカランに向き合う大切なことが3つあります

 あいさつ・立ち位置・持つ手
 注ぐ技術
 ビールと向き合う心構え・志

まず体・次に技・最後に心

そして麦酒道へ

この体技心の完成形が「麦酒道」になると重富は考えます。
そして、その源流にあるのが千利休だと重富は願っています。


🍺ビールスタンド重富(銀山町本店)
  →昭和8年当時のビールサーバーを復刻したお店。  
  営業時間 17時~19時

🍺ビールスタンド重富(広島駅ekie)
  →広島駅新幹線口1階にお店があります  
  →昭和8年当時のビールサーバーの規格を、
   令和の最新版で再現しました。  
  営業時間 10時~21時