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2020年の中国広告市場の成長についてSARSの教訓から学ぶ

前回、中国の広告市場が今年も大きく成長することが予想されていることを紹介しました↓

この内容をざっくりまとめると

・AI活用でユーザーのニーズに合った広告の精度が高くなる
・動画やグラフィックがリッチな広告になる
・外出規制でWebでの接触時間が増える

といった理由から強気な分析になってるレポートが多いです。

でも当然不安な要素もあります。賢者は歴史から学ぶ...SARSの際にどうだったかを振り返りましょう。

■SARSの教訓

2003年のSARS流行時にも、今ほど大規模ではありませんが外出制限があり、消費者の活動の制限や低下は広告市場に影響を与えました。

中金宏观:回顾2003年“非典”对经济的影响

↑入国者数と旅客輸送量、どちらもガクッと下がっているのがSARS

2003年のSARSでは感染者は主に広東省と北京にあり、今の新型コロナウイルスのような大規模な広がりはありませんでした。広東省と北京での広告リソースには明らかな減少がありましたが、全国でみると成長を続けました。

(しかもSARSのときは中国はまさに経済成長の真っ只中だったので影響は限定的だった)

ただ、それでもSARS流行の際には、すべてのメディアにおいて広告主のリスク回避で広告が減少しました。さらに当時はネットメディアよりも紙媒体が普及しており、ニュースの編集や印刷物の配信などは、道路の閉鎖などの影響を受けました。

一時停止や延期された印刷メディアが多く、印刷メディアの広告リソースに大きな影響がありました。また、外に物理的に露出するメディアや広告も人の移動の減少により影響がありました。

SARS期間中(2003年第2四半期)は、今回のような厳密な「閉鎖都市」政策はなかったようなのですが、コマーシャルとサービス産業、エンターテイメントとレジャー産業、映画プロモーションなどで大きく減少したよう。

CTR:疫情下的中国广告市场洞察_手机新浪网

↑CTR Media Intelligenceのデータ、2003年の北京、上海、広州での広告数減少の数字。映画宣伝などの娯楽系の広告が特に大きな減少になった

外出しないことによって引き起こされる社会的需要の減少で、美容、衣類、宝石などの業界の広告も激減。データによるとSARSの流行が始まった2003年の第2四半期に、テレビメディアの化粧、口紅、衣類、靴、宝石などの広告は前年比で大幅に減少してました。

一方で感染の予防、クリーニング、薬などに関する業界の広告が増加。また、外食の需要が減り家庭での料理の頻度が増えたため、調味料や冷凍食品の広告が増加したとのこと。

まとめると、2003年の広告市場のパフォーマンスから判断すると、SARSの流行は年間を通じて広告市場に過度の影響を与えることはなく、年間広告支出はなんと39%増加しました。さらに流行が終わった後、影響を受けた産業は徐々に回復し、苦戦時に戦略をブラッシュアップしたことで結果的には大きな発展となりました。

今はSARSのときとは社会の環境も、人々の生活環境もかなり違います。ネットとスマホがこんなに普及していて、グローバル化が大きく進んでいるので世界中での感染拡大が中国経済に与える影響もとても大きい。ただ参考になることも多く、この学びを活かしたいと思います。

(参考資料)



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