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フリースタイル日記

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記事一覧

フリースタイル日記20191214

私は一日のほとんどを私の似姿を生きている。
窓際で脚を組みコーヒーを飲む。ドアフォンが鳴るが、出ない。電気ヒーターに向けた足。
いつの私も、どこの私も、何かに似ている気がする。
クローゼットいっぱいの服たちが、私の亡霊を呼び出すようだ。
沈黙の時間に溢れる言葉の暴走だろうか?
しかし対話の言葉もまたクローゼットに眠る服と似たようなものではないか。

フリースタイル日記20191208

新宿。たくさんの人々へフォーカス。溶け出し、煮えたつイメージ。一つの新宿から広がる無数のミクロな波紋。ふと我を忘れると、それぞれの新宿の重なりにいるかのよう。
新宿で傍観者であることは悪くはない。たとえばマクドナルドの二階の窓から見える光景の脈動にはカオスを内包した秩序がある。高架の上ですれ違う電車。信号で立ち止まる人と動き出す自動車のメタル。信号が変われば欲望が歩き出す。緩やかに走る電車の下を自

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フリースタイル日記20191104

ざぶんと街に飛びこんだ。思い切って。
やっぱり性に合わない。乾いた浜辺に打ち捨てられ、ホットコーヒーを飲む。
何度も繰り返してきたこと。それでも今も生きているのは希望を捨てたから。希望を持ち続けると、いつか絶望する。絶望は死を招き寄せる。希望を捨てれば絶望しない。そういうこと。
窓ガラスに映る心霊写真みたいな人影を目で追う。窓枠がそれを遮断し、またべつの人影を追いかける。
いつもは温かい空気が流れ

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フリースタイル日記20191109

ヘッドライトが流れている。薄汚れたタイルをモップ掛けする店員。子どもの口にハンバーガーを差し出す父親。奇声が横切る。すれ違う自転車。ぼくは口内炎が痛い。ポテトの塩が唇を掻く。冷めたコーヒーは冷めたコーヒー。外はもう夜。窓ガラスに映る店内に気持ちを向ける。少しだけ救われる。坊主頭の少年がおもちゃの電車を照明に掲げる。
シャッフル再生。不意にオザケン。軽快な世界のスライス。薄皮を剥がすみたいな切なさ。

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フリースタイル日記20191116

今日が昨日に変わる夜。まだ明日ではない夜。昨日の後悔と明日の不安の挟み撃ち。iPhoneからローリング・ストーンズが流れる。奇妙な興奮と名前のないダンス。
睡眠導入剤を半錠、プラスティックのコップで流し込む。
歯磨き粉のチューブから白い歯磨き粉がぬるりと現れる。排水口に泡が溢れる。
まだ明日ではない夜。あるいは今日の頂。今日を生き延びた。今とは、生まれてきてからすべての時間の頂点だと思えば、少しは

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フリースタイル日記20191118

マヨネーズをぶちまけたい気分。ピーナッツチョコで慰める。
溢れる想いは堤防をそれた。元気は、たいてい、ない。
レンジの「あたため」は気持ちまではあたためない。レンジの下の四角い冷蔵庫は冷やす。
何もかも賞味期限切れ。冷蔵庫は冷やす。余り物で作る覚悟。
何とかしてくれそうな調味料たち。すがる想いでおたまを回す。
驚きはない。好きでも嫌いでもない。でも、カレーのあと、洗うのは嫌い。カレー味のげっぷはも

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フリースタイル日記20191123

新宿地下街。迷路で迷い、ドラクエ気分で地上へザッザッザッザ。
傘の渋滞にへこたれる。傘と酔いどれをよけるステップに軽やかさはない。先走る心、おいていく体。
電車は帰路の物哀しさたちを運ぶ。湿り曇った窓ガラスに霞む自画像。スマホの中にある自画像。鮮明なのはどちらだろう。
駅の改札を抜けて散っていく人々。知らない人ばかり。それぞれの家に帰るだろうことはわかる。
駅から無数の線が正確に同じように繰り返し

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フリースタイル日記20191126

仕事がたまっているのにやる気が出ない。そんなときのライフハック、なんて知らない。
仕事がたまっているのにやる気でないのをごまかすライフハック。
ちょくちょくトイレに行く。キーボードのキー空打ちしてカチャカチャさせる。ほおづえついてうなる。定時に帰っても後ろ指指されないように普段から定時に帰る。
東京に冬到来。急な寒さが憎い。
玄関を開ける。接続される生活。廊下の電球は切れたまま。生活はいつもあるが

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フリースタイル日記20191201

一人暮らしとは時間と向き合うことだ。
就寝時間、起床時間、ドラマの時間、夕飯の時間。夜更かし。徹夜。告り告られる時計と私。
ゆっくりと独り言。時間の進みを遅らせようと。
時間はなかなか噛み切れない。噛み切られるだけの私。
なんでもクリーミーな、咀嚼が疎まれる現代。
コンテンツによる時間汚染。親指で操るタイムラインこそ現代の時間なのか。
真の時間は、たとえば炭酸水の気泡の破裂に現れる。
独り言と鼻唄

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