見出し画像

産まれる前から好きだった


「毎日同じ生活して何してんだろうなーって思う」


この人を連れ出したいって思った。
私なら、私と一緒なら、楽しいのに。
ずっと笑わせて楽しませるのに。


「人生楽しそうでいいね」


私のことを好きにならない理由。
少しだけ、わかったよ。

私が手を引いたところで、私の影が重なってそのまま仕方なく歩くはず。


私の人生は、楽しいことだらけじゃなかったよ。
死にたくなるほど辛いこと、沢山あったの。

一冊の本を書き上げてる最中みたいな、
一本の映画を作り上げてる途中のような、
私の人生の話。

つまらない、悲しい、可哀想。
そんな話の内容にはしたくないから。
私は今を生きてて、過去も生きた。

今から過去を振り返るとね、不思議なことにその時は満たされていなかったはずなのに、実は満たされていたりするんだよ。

あの時はあれをして、こうだったな。

自分の感情を記憶して、思い出したら少しだけ楽しくて寂しくてキラキラしてる。

人生最悪だとも思ったし、こんな人生捨てたいとも思った。

私が靴擦れしながら歩いたあの道も、息を吸ったら感じる春の匂いも、手が悴むほど冷たい冬の水道水だって、肌を刺すような日差しも。

全部さ、私が生きていた証だから。


「毎日同じ生活して何してんだろーなって思う」


君はずっと何を見ているの?
そんなに遠くを見て、どこを、何を見てるの?

そんな諦めたみたいな瞳。可哀想。

人生楽しそうだねって貴方に言われたくない。
そりゃ楽しかったし、楽しくない時もあったし。
でもね、私は自分とずっと向き合って生きてきたよ。

面倒だから。
楽だから。


逃げてるだけでしょ。
逃げて、逃げて、逃げて。
ずっと逃げてるよ。

私は、弱いまま強くなろうとする人が好き。
弱いままでそれでいいからと弱くいることを選ぶ人なんか、好きじゃない。


絵の才能だってあるし。
計算だってすごく得意だし。
スポーツも万能だし。
子供も好きで。
よく食べて、よく寝る。
誰にでも優しい。


なんでそんなに自分のこと否定するの。
自分のこともっと好きでいなよ。
私は、ずっと、ずっとずっと好きだってば。
泣きたい時に泣けばいいじゃん。
泣いたら頭撫でくり回すし、目一杯抱き締めるから。


なんで、私じゃだめなの。


好きじゃないことなんか知ってる。
他に諦めきれない人本当はいるでしょ。
何が辛いのか私には分からない。
なんで泣くの我慢するの。

無条件で人に好かれるってね、家族以外いないんだよ。血の繋がりもない赤の他人がさ、自分のこと丸ごと愛してくれるんだよ。ずっと味方で静かに傍にいてくれるんだよ。


少しぐらい、私のこと見てくれたって良かったじゃん。
幸せにならなきゃ、許さないから。
人生で最高に好きレベルの人と一緒にならないと、私が報われないんだよ。ばーか。


『産まれる前から好きだった』

映画「半径1メートルの君″とある家のこと″」


家族だからこそ思える唯一の感情なのが素敵すぎて、ずっと覚えてる台詞。
それよりも他人が好きってよっぽどの愛だと思う。



この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?