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「うちの社員を、もうちょっとバシッと使えるようにしてくれ」。

研修講師の立場はなかなかに微妙です。企業研修の場合、発注者は企業の研修ご担当者様。「こんな内容の研修をして欲しい」という想いがあります。

誤解を恐れずに言えば、それは多くの場合、

「受講生に気合いを入れて欲しい」「自分で考える社員になって欲しい」

と、良く言えば「期待を込めて」。

違う言い方をすれば、

「うちの社員を、もうちょっとバシッと使えるようにしてくれ」。

今、出来てない社員を、出来る社員にしたい。そんなニュアンスを感じます。

企業が「研修へ投資する」理由。社員を育てて「戦力にする」ためです。研修には結構なコストがかかります。

社員を現場から外して、研修センターや会議室に缶詰にします。当然、給与が発生します。研修講師(研修会社)にもそれなりのお金を払う。

費用対効果を考えたら、リターンが明確に欲しいはずです。

さて、ここで問題です。

企業が研修に投資する最大のリターンって、なんだと思われますか。

私は、

「社員が辞めないこと」

これに尽きると考えています。

逆に言うと、なぜ、若手社員が早々に見切りをつけて辞めて行くのでしょうか。そこを考える必要があります。

若い社員が根性が足りないのではありません。早々に「この会社に骨を埋めるのだけは嫌だ」と逃げているのです。

自分の人生、もうちょっと穏やかでいたい、もう少し休みが欲しい。家族ができたとき、一緒に過ごす時間も取れない。上司や先輩は単身赴任で何年も家族と離れている。

ダメだ、こりゃ。撤収撤収。

会社の仕組みや考え方が、時代に合っていないのです。迎合するとかではなくて、昭和の価値観が賞味期限切れなのです。

昭和の高度成長期にバブっていた人が研修講師をやるのは、若手社員からしたら、ブラックジョークです。

私も偉そうなことは言えない年齢ですが、精神論根性論は最も嫌うところです。

風の時代、穏やかな争いのない組織にしないと、もう誰も働いてはくれません。年休が取れないとか、病気になっても休ませてもらえない。

そんな話も聞きます。

私も会社を経営しているからわかりますが、企業にとって、社員が退職してしまう損失は計り知れません。

5:25の法則をご存知ですか。

顧客離れを5%改善すれば、利益率は25%改善されるという法則です。
マーケティングの世界ではとても重視されている法則で、
顧客維持率を高めることが経営上、何より大切です。

社員をお客様扱いすることに抵抗がある企業もあるでしょう。お給料払っているのだから、働いて当然、頑張って当然。昭和の経営者は特に、その思考が強いかも知れません。

とは言え、
「社員離れ」を防ぐための「社員維持率」を高めるための研修があっても良いはずです。

「社員の心の安定のための研修」です。

研修を受け終わった社員に、「これなら安心して明日からも働ける」と思って貰いながら帰宅の途についてもらうのです。

これまでの研修は、「このままじゃ、うちの会社は生き残れないぞ!」と社員を脅かす研修だったりしました。

「ぼうっとしてお給料もらえると思ったらダメだぞ」なんて、よく聞くセリフです。

生き残りや危機感を煽る研修は、百害あって一利なしです。受講生は研修が終わった後、どんな気持ちになりますか。

大きくため息をつきながら帰路につくのではないでしょうか。帰り、駅を降りてコンビニで転職雑誌を手にするかも知れません。いや、するでしょう。カフェに立ち寄ってインディードに登録するとか。私だって、時代遅れのショボい研修受けたら、モチベーションだだ下がりだと思います。

時代は令和です。社員は神様ではありませんが、社員は何よりも大切にすべきです。

大切にと言っても、黒塗りの車で送迎する訳ではなく、接待交際費を使いたい放題にする訳でもありません。

社員がこの会社で働くことに「持続可能性」を見出せるようにしてあげる。

休みたいときに休暇が取れ、家族を養える給料が貰える。その前提は当然として、研修で「現場で安心して働くための武器」を持たせてあげるのです。

心理的安全性というやつです。

私は社員(もちろんアルバイトさん、パートさんも)は社内顧客だと考えています。お客様を大切にするのと同じくらい、社員も大切にして欲しい。

子供が熱を出せば、誰かに遠慮しなくても休める。
残業がなく、夕食は家族と一緒に食べられる。

パワハラやセクハラがなく、安心して会社に行ける。

福利厚生もインセンティブも良いのですが、当たり前の生活ができる穏やかな毎日を組織として提供する。

延々と回りくどい話をしましたが、そのためには


「サービスの本質」を経営者、役員、管理職以下、全員が学び、考え、

「サービスのダウンサイジング」を検討し、

お客様や社員にとって意味のないサービスをそぎ落とし、

「クレーム対応の本質的考え方」で、顧客トラブルを未然に防ぎ、
トラブルになった場合でも、短時間で解決へ導くテクニックも習得する。

それが、私が考える「投資対効果の最も高い研修」です。

もう一度、誤解を恐れずに言います。今、残念ながら極めて表面的な「とってつけた」思考停止の研修が多いのです。

表面的なことを学んだ(学ばせた)気になっても、受講生の心には届かず、時間が経てば、学んだことは全て忘れています。もれなく講師や人事総務への反感付きです。

手前味噌ですが、私の研修(サービスマインド基礎研修)を17年前に受講してくださった方が、先日、

「自分の仕事人生で、最も忘れられない研修でした。今でもあの時学んだことを実践して、現場で役立てています」

とおっしゃってくださいました。17年前の研修ですよ。
当時、若手社員だった方がもうすでに中間管理職です。

研修のコスパは、悪くないと思います。

コロナ禍で、色々な価値軸が変化する中で、既存の思考停止型研修、体育系研修を見直されてみてはいかがでしょうか。

少なくとも、経費削減の流れで研修予算を大幅に削減しているようでは、「研修は不要不急です」と認めてしまっているようなものです。

研修は、不要不急ではありません。

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高萩徳宗


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