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ミニシュパリズム(地域自治主義)!

本当は、猫とまったりお昼寝したり、お気に入りの川沿いを散歩してバードウォッチングを楽しんだりしていたかっただけなんです。
だけど黙っていたら、この生活が奪われてしまう。もう黙っちゃいられない!
 (監督 ペヤンヌマキ)

まさかのユナイテッドシネマ!
是非観たいと思っていた映画、『〇月〇日、区長になる女』。
地元のミニシアターで上映されるだろうか?畠山さんの選挙ドキュメンタリー映画もダメだったし…観れないかもと半ばあきらめ気分だったのですが。
監督が地元出身の方だったおかげで、4日間だけとはいえ大きな映画館での上映が実現したようです。

2年前の杉並区長選挙のとき、岸本聡子さんを知って(ついにこういう人が出てきたんだ…)と、思いました。
強いインパクトを覚えたのです。
映画の中で、彼女が出馬の決断をした思いを語る場面がありました。
記者会見の場などではなくプライベートな空間で(カメラは回っているとはいえ)率直な語りの中に「ミッション」という言葉が出てきたのです。
やっぱり!と思いました。
「ミッション=与えられた使命」なのだと、彼女は気負うこともなく腑に落ちる感覚として語っているように見えて、じんわりと感動を覚えてしまったのでした。
自己実現のためではなく、まして欲求に突き動かされてでもないことは最初から感じていましたが、それこそが強いインパクトを私に与えたのだと改めて思ったのです。
あらゆる公共(物的・心的)を私物化することで、自己実現、欲求の充足を図る政治家が多すぎる現実。
それを知っているはずなのに、多くの有権者がわざわざそういう人間を選んでしまう鈍感さの正体は何なのか…。
選挙で選んだ人に任せてしまう間接民主主義の下に、私たちは無力に甘んじてしまいます。
それに対して、岸本さんは「ミニシュパリズム(地域自治主義)」を掲げました。

昨年のYahoo!JAPAN SDGsの記事から(2023, 6, 26)
「町の専門家は住民、その声を大切にしたい」杉並区・岸本聡子区長に聞く、ミュニシパリズムの可能性

毎回、18~75歳までの区民2,000人に対して招待ハガキを送る「無作為抽出」と、テーマごとに参加者を募る「公募」の2通りで募集しています。
  「聴っくオフ・ミーティング(区政を話し合う会)」

無作為抽出!
公募のみにせず、住民に政治参加を促す姿勢が素晴らしいです。
しかし、当然、住民の政治参加を嫌う人たちがいるわけで。
それは映画の最後の方、議会の場面で描かれていましたし、私も何度かSNSで岸本区長を口汚く罵る区議を見掛けたことがあります。
利己的な動機から政治家になった者たち(や彼らに同調する者たち)と対峙していくことは、とてつもなく理不尽に(!)エネルギーを奪われるものなのだと思うんです。
だから、政治に関わることはできれば避けたい・・・
ところが!
もともと社会問題には関心がなかったという監督は、快適に住み続けてきた町に大きな道路を作る計画があり、自身の住むアパートが立ち退き対象になることを知ってしまいます…。
映画の冒頭は監督の部屋でまったりと寝っ転がる猫ちゃんがど~ん!と大写し。
岸本さんの実家にもとっても可愛い(たぶん育ち盛り)猫ちゃんがいました。
そう、これなんです。
生活を守るとはこの子たちを守るということ。
それを奪おうとする者たちに対して、黙っている場合じゃないのです。

ちなみに、選挙に向かっての慌ただしい日々、体力も気力も消耗していく中、周囲で支える住民たちとの関係だって当然しんどいこともあります。
それを受け止めつつも不満を吐露する様子も描かれていて…だからこそ(?)当選の場面には思いのほか胸が熱くなってしまいました。
そんなに心揺さぶられるとは思ってなくて戸惑いましたが…。
地域に、自分の生活に、あの住民たちほどの熱い思いを私は持っていないのです。
地元を、私は愛したことがないかもしれません。
特別な思い、執着がないという感じです。
ただ気づいたことがありました。
岸本さんは杉並区が地元ではないんです。
地域を、自分の生活を愛する人たちを愛し守りたいということなんだ、と。
いや、ちょっと違うな…
住む町に愛着がない私でも、最近の町の変化についてはストレスを感じているのでした。
「公共」を私物化している連中の仕業が度を越してる…住み心地が悪くなるばかり、と。
だから、住民主体の岸本さんをめぐる選挙戦に興味を持ったし、今も杉並区に注目せずにはいられない気がします。

区議会で岸本区長に対し、「あんた、つい最近よそから来たばっかりじゃん(言葉は違います)」と批判した区議がいたんです。
こういう了見の狭い人たちは一定数いるはずですが、その人たちのもとにも「聴っくオフ・ミーティング」への招待ハガキが送られてくる可能性が等しくある…ということです。



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