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自由で働きやすい会社ほど成長しない理由

「ルールがゆるい会社で自由に働きたい!」
「好きなときに仕事ができる会社で働きたい!」

そう思っている人は少なくありません。

自由に自分の好きなように働けて、みんなの仲が良くて楽しく柔軟に働ける。
そんな理想を抱いている人は多いでしょう。

たしかに、こういう理想的な環境で働いている人も多くいます。
ただ、一方で、

「楽しく働いてはいるけれど、このままでいいのか不安を感じる」
「努力しているのに正当に評価されている感じがしなくて、成長できている実感がない」

という声もよく聞きます。

実際、このように「自由で好きなように働ける」という、多くの人たちが望む「理想的な会社」で働いている人が、実は、先行きに不安を感じていて仕事にやりがいを感じられなくなっているという現実もあります。

理想と現実のギャップに失望してしまい、下手をするとメンタルの調子を崩してしまうことにもなりかねません。

厳しすぎるルールは、自由で活発な働き方を妨げてしまうものですが、ルールが緩すぎても無法地帯になってしまいます。

KPI(Key Performance Indicator)で例えるなら、「KPIを定めたら自由に動けなくなりそう」という誤解があるかもしれませんが、ルールがあるからこそ自由があるように、KPIがあるからこそ自由な発想を喚起できたり、社員の個性を活かした本当の意味での自由な働き方ができるようになります。

一人で働いていくのならまだしも、それは現実的には不可能ですよね。
仕事をするということは相手が存在するはずですし、仲間もいるでしょう。
組織として仕事をする限りは、KPIやルールなどの自由を制限する「お決まりごと」がなければ、それは自由ではなくただの無法地帯でしかありません。

ひたすらに自由を意識してルールを緩くしてしまうことは、働いてくれている社員の意欲低下を招くばかりか、最悪の場合では不正行為すら発生させてしまいかねません。

「なぜ、自由で楽しく働ける会社ほど、会社として弱体化してしまうのか?」
「それならば会社はどのようなルールを定めるべきなのか?」

について、公認会計士とKPIスペシャリストとしての経験を踏まえて「数字」という側面から解決方法を書き綴っていきます。

ビジネスレシピで事業成長の再現性を高める

日本に『料理レシピ』を広めた香川綾さんという方がいらっしゃいました。
内科医としての経験から、日常の食事で病気を予防する大切さを実感されて、 計量カップやスプーンを考案し、誰がつくっても同じように美味しく、 栄養のある料理を再現できるようにした「栄養学の母」と言われている方です。

煮込む時間は「火が通るまで」、調味料は「ほどほどに加え」。
分量や加熱時間、調味料の割合などは、どれも秘伝とコツだらけの料理。
そこで、毎日の食事で病気を予防するために美味しく栄養のある料理を誰でもつくれるようにと発明されたのが料理レシピです。
料理にモノサシをあて、材料、分量、手順などを数値をつかってわかりやすくすることで、誰が作っても同じようにおいしく、栄養のある料理が再現できるように考案されました。
まさに「料理の再現性」です。

たとえば、ここに世界中のあらゆる食材が揃っていたとしましょう。
「これらを自由に使っていいので、美味しい料理を自由につくってください」と言われてもなかなかつくれません。
一流の料理人であればつくれるでしょう。
ただし、これは、ビジネスで言えば「あなたの思うように自由に動いていいので結果だけ出してください」というのに近く、それができる「一流のビジネスパーソン」に依存してしまう状態です。

レシピは誰でも一定の美味しい料理をつくるノウハウです。
「レシピに沿ってつくってください」というのは先ほどの例に比べて自由こそなくなりますが、これに従えば多くの人が美味しい料理をつくることができます。
できた料理が美味しくなかったら、分量を間違ったのか手順を間違ったのか、振り返りをして次に活かすというPDCAをまわしやすくなります。
そうすると美味しい料理をつくることの再現性がますます高まります。
つまり、レシピは、美味しい料理をつくるという「目標達成の再現性」を高める秘訣です。

レシピをもとにつくれるようになったら、次はオリジナルの料理を自由につくれるようになります。
先ほどの例のようにいきなりオリジナルの美味しい料理をつくることは難易度が高いですが、この順序でいけばできそうですよね。

これはまさに守破離です。

守:レシピに忠実に従って美味しい料理をつくる。
破:レシピをベースとしながらもアレンジを入れて美味しい料理をつくる。
離:新たにオリジナルの美味しい料理をつくる。

守→破→離の順で進めることで、個人も事業も成長しやすくなるはずです。

テレアポをして商談を獲得し、そこから提案、見積もりをして成約に至るという営業プロセスがあったとします。
「美味しい料理をつくる」=「売上(=KGI)目標を達成する」として考えてみましょう。

そうすると、KPIが料理の材料です。
たとえば、次のようなKPIです。

  • テレアポ数

  • アポ率(テレアポに対する商談の獲得率)

  • 商談数

  • 成約率

  • 成約数

  • 成約単価

そして、料理の手順が次の通りです。

  1. テレアポ数

  2. アポ率

  3. 商談数

  4. 成約率

  5. 成約数

  6. 成約単価

  7. 売上

さらに、それぞれの材料の分量が、各KPIの目標数値(Plan)です。

  1. テレアポ数 100

  2. アポ率 10%

  3. 商談数 10(=テレアポ数100 × アポ率10%)

  4. 成約率 20%

  5. 成約数 2(=商談数10 × 成約率20%)

  6. 成約単価 100

  7. 売上 200(=成約数2 × 成約単価100)

という具合です。

さて、実際にこれに沿って料理をしてみましょう。(Do)
美味しい料理ができましたでしょうか?(KGIが達成できたかどうか)
うまくいかなかったらその原因をはっきりさせましょう。(Check)
その原因が、材料が足りないということであれば付け加えましょう。(KPIの追加)
また、その原因が、分量が違うということであれば変更しましょう。(KPIの目標数値の変更)
そしてまたそれに沿って料理をしてみましょう。(Action)
このとき、必ずその状況や経緯、ノウハウを記録しておくことで、後からいつでも振り返られるようにしておきましょう。

このようなことを繰り返すことで、売上(=KGI)目標達成の再現性はきっと高まるはずです。

このような「ビジネスレシピ」があったら事業成長の再現性を高められるでしょう。
ビジネスレシピは、そのビジネスに必要なKPI、そのベンチマークとなる数値、それを高めるノウハウなどが組織の集合知としてまとまったものです。
毎日の仕事の中でそんなビジネスレシピがどんどん増えて、どんどんデータやノウハウが蓄積されて、アップデートされることでさらに再現性が高まっていく。
そんなビジネスレシピをみんなで創り上げ、10倍の事業成長を手に入れる。
楽しそうですよね。
ビジネスのレシピで事業をのばしていきましょう。

数字を軸にして組織的にPDCAをまわす

「自由にしていいから目標を達成しろ」と言われたらどうでしょう?
多くの人にとってとても難易度が高そうです。
個人プレーならまだしもチームプレーとなるとさらに難易度が高くなりそうです。
個人個人がバラバラに自由に活動しはじめたらめちゃくちゃになりそうですよね。

そこで、チームとしての目標達成に向けて数字でロードマップを明確にした方がいいでしょう。
先ほどのレシピの例のように、チームとしての目標(=KGI)数値を決めて、それを達成するためのロードマップをKPIで明確にして計画数値を立てるという具合です。
そして、進捗状況や結果について、数値で明確にして、その数値をもとに振り返り、議論して、次のアクションを決めていく。
このように数字を1つの軸にしてチームとしてPDCAをまわしていきます
しかし、一方で、数字でPDCAをまわすことは必ずしも自由ではなくなります。

数字は友達。こわくないよ。

また、数字が登場することで「自由」が阻害されると感じる人が多いかもしれません。
ビジネスパーソンの中には、数字が嫌いな人、数字で明確にしたくない人が多いのではないでしょうか。
その理由として、「できなかったときに上司から責められるから」「できていないことがごまかせなくなるから」といったことも挙げられるのではないでしょうか。
後者のようは人に合わせる必要はないですが、前者については組織的な問題として解決すべきでしょう。

突然ですが、数字を色であわらすとすると何色だと思いますか?

多くの方が「青色」か「赤色」と答えます。
その理由としては、「数字は誰かから詰められる冷たい感じのもの」「数字は誰かから責められたり怒られたりするもの」といったネガティブなニュアンスがあるようです。
わたしは数字は日本語と同じだと思ってます。
日本語はもともと色がなく、コミュニケーションをする時に感情を言葉に乗せるから色がつくと思ってます。
たとえば、怒りの感情が乗った言葉が赤色で伝わるという具合です。
数字も同じで、そもそもは「白色」だと思います。
そこに伝える側の感情を乗せるから、「青色」とか「赤色」になって、ネガティブに相手に伝わるのではないでしょうか。
その結果、数字を「悪者」にして、数字を避けるようになる
いやいや、数字そのものが「悪者」ではなく、それを扱う人が「悪者」でしょう。
扱う人が悪いのに数字を悪者にする、これは責任転嫁ですね。

多くの方がビジネスを通して何かしらの自己実現をしたいと思っていらっしゃるのではないでしょうか。
その「実現したいこと」は、多くの場合、一人ではなかなかなし得ず、誰かと一緒になって取り組むからこそ実現できるものではないでしょうか。
そうだとすると、その「誰か」(実現したいことが大きければ大きいほど、その人数は増えていくことでしょう)と円滑に協働するためにはコミュニケーションが重要です。
そうすると、コミュニケーションツールとしての数字が重要になってきます。
つまり、一人ひとりの自己実現をしていく上でも数字が重要になってきます。

「自分自身の夢を実現するためにも数字は役立つ

そう思えば、数字の色は青色でも赤色でもなく、オレンジ色(暖色系)になりませんか?
数字の持つ色のイメージを暖色系に変え、みんなにとって「あったかいもの」「身近なもの」「協力者」というニュアンスに変えていきましょう。

「ボールはともだち こわくないよ」

漫画「キャプテン翼」の主人公大空翼の台詞です。

そう、「数字は友達。こわくないよ」です。

数字はコミュニケーションツール&モノサシ

チームで仕事をするにあたって、数字を活用することでより伝わりやすくなるので、コミュニケーションが円滑になります。
たとえば、「多い」「少ない」は定性的なので、人によって解釈がまちまちで共通認識が持ちにくいですが、「1」か「100」かと定量的に示すことで共通認識は持ちやすくなるはずです。
数字というチームの「モノサシ」がないと、今の状況が良いのか悪いのかも人それぞれバラバラの認識になりがちです。
また、言い方を変えれば、数字はビジネスにおける「コミュニケーションツール(言語)」です。
数字でコミュニケーションを取ることで、同じモノサシで共通認識をしっかり持って、余計なすれ違い(解釈の違いによるミスコミュニケーションなど)もなくし、スムーズにビジネスが進みやすくなるはずです。

「モノサシ」があることのメリットについてもう少しだけ掘り下げてみましょう。
たとえば、目の前にコップがあるとします。
真上から見れば何に見えますか?そう、「円」にしか見えないですよね。
真上から見るだけでは正しく目の前のもの(コップ)を認識できません。
次に、真横から見れば何に見えますか?そう、「長方形」「台形」にしか見えないですよね。
さらに、斜め上から見ると「立体」に見える。
これらを組み合わせてやっと目の前にあるものが「コップ」であると認識できます。
つまり、ポイントの1つとしては、

「多面的に物事を見ることで正しく認識できる」

ということです。
そして、ここに「モノサシ」として「数字」を加えてみましょう。
コップの口は「直径5センチ」、コップの高さは「縦10センチ」と表現すれば、目の前にあるコップという事実をより正しく認識できますよね。
チームで仕事をする上ではこれがとても大切です。
つまり、「コップがある」という表現ではなく、「直径5センチで高さ10センチのコップがある」という表現の方が、チームとして圧倒的に正しく共通認識が持てます
そうすることで、よりコミュニケーションも的確になり、組織としてのPDCAもまわしやすくなります。

カーナビで着実に目標地点に到達する

「目標だけ与えられて自由にそこに向かっていいと言われても困る」ということを別の側面から考えてみましょう。
「車でのドライブ」に例えてみます。

ビジネスを車でのドライブに当てはめて、ゴールに時間通りに辿り着く(=KGIの目標を達成する)ことを考えます。
ドライブの目的地がKGIにあたり、ここではそれが富士山とします。
さて、自宅から車に乗って初めて富士山に行こうとしています。
そうした時にまず何をしますか?
初めていく目的地で道のりがわからない場合は、アクセルを踏む前にカーナビで目的地を設定しますよね。
これがPlanです。

Plan:カーナビで富士山を目的地として設定して、そこまでの道順を明確にすること。ビジネスで言えば、目標を達成するための計画を立てること。

カーナビは道のりの途中にある地点、たとえば、「100m先を右折する」「その先のICから高速道路に乗る」といったように順番に道案内してくれます。
これらの各地点が、ビジネスで言えばKPIにあたります。
これらの各地点を計画通りに通過できているかを確認しながら、目標通りにゴールすることを導くのがKPIの果たす役割です。

カーナビが示す道順に沿って運転していくことがDoです。

Do:カーナビの表示画面の縮尺を使いこなしながら運転すること。ビジネスで言えば、おおまかなPlanで大きな方向性をつかみつつ、詳細なPlanで日々の実行を行うこと。

カーナビの表示画面が「広域」モード(=縮尺の小さい粗い表示)だと、向かうべきおおよその方角はわかりますが、100m先の角を右折するということがわからずに通り過ぎてしまうかもしれません。
一方、表示画面を「詳細」モード(=縮尺の大きい細かい表示)にすればそれを防げます。
そのようにしながら、目的地までの道順に対して、現在の位置情報をカーナビで確認しつつ、スピードメーターやガソリンメーターなどの各種計器も確認しながら運転します。
これがCheckです。

Check:カーナビや各種計器を常に確認すること。ビジネスで言えば、計画通りに進んでいるのかどうか、進んでいないとすればその原因は何なのかを、できるだけ早く正確に把握すること。

もし道を間違ったとしても、カーナビがリアルタイムに道順をリルートしてくれますし、より早く到着する道順が見つかれば再提案をしてくれます。
これがActionです。

Action:リアルタイムに道順を最適化すること。ビジネスで言えば、状況に応じて計画を変更し、改善していくこと。

このようにPDCAをまわすことで、目標達成の可能性とその再現性が高まるはずです。

一方、このようなPDCAをまわさず、運転者が自由に、その感覚を頼りに試行錯誤しながら、時間と労力をかけてやっと目的地に辿り着くことも可能でしょう。
しかし、辿り着いたものの、目標の時間をかなり超えて遅くなってしまうということにりがちです。
それはビジネスで言えば、「目標を達成するのが遅くなる=事業成長が遅くなる」ということになります。

「何かを実現するには、優れた仕組みが必要だ」

経営環境の変化が激しく先行き不透明な時代。
労働力人口は減少し続け慢性的な人手不足に陥るなど、ヒト・モノ・カネといった経営資源の制約も厳しさを増しています。

そのため、業績目標を達成する(=事業を思うように成長させる)ことが以前に比べてますます難しくなり、それを継続的に達成し続ける(=事業成長の再現性を高める)ことはなおさら難易度が高くなっています。

そこで、限られた経営資源の中で業績目標を達成し続けるためには、組織全体のパフォーマンスと生産性を最大化すること欠かせません。

しかし、多くの組織では、最大化できていない要因を数字で明確にした上で組織全体で共通認識を持ち、その数字を軸として議論、実行、そして振り返りをするというPDCAを回せていません。

わたしたちは、Scale Cloudというサービスを開発・提供していますが、これは、数字を軸にして、組織全体の連携と組織的なPDCAを促進する「仕組み」です。

ジェフ・ベゾスの名言のひとつに、「善意ではけっしてうまくいかない。何かを実現するには、優れた仕組みが必要だ」という言葉があります。

組織全体の業績目標と部門ごとの目標を紐づけ、部門同士が連携して実行し、進捗状況や結果について共通認識を持って振り返り、議論して、次の施策を意思決定して、また実行する。
この事業サイクルを、数字を軸として部門横断的に連携しながら推進するクラウド上の「場所」=インフラがScale Cloudです。

これにより、数字を軸とした組織全体の連携と組織横断型のPDCAが促進されます。
その結果、組織全体のパフォーマンスや生産性が最大化され、業績目標達成の再現性も高まり、事業成長を加速させることができるはずです。

Scale Cloudはそんな仕組みを提供していきます。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

書籍を出版させていただいています。

起業してからの約16年間で多くの企業とお付き合いさせていただきましたが、成長する企業や組織には、「数値の大切さを知っている」という共通点があるように思います。
単に知っているだけではなく、数値を使って事業の状況を客観的に見て、考え、意思決定して行動することが習慣化(仕組み化)されていました。

本書では、KPIという数値を活用して、ロジカルに、スピーディーに、組織的に、PDCAをまわす仕組みを書いています。
事業目標を達成するための仕組み、さらに、その目標達成を一時的なもので終わらせるのではなく、継続的に達成し続けることができる仕組みづくりを、具体的に実践することにこだわって書いていますので、少しでもみなさまのご事業のお役に立てれば幸いです。

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https://twitter.com/hirose_yoshi




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