起きて、ベッドから出るまでの彼

閉めたはずのカーテンがなぜか少し開いているようだ。ベッドとカーテンの距離は近く、寝ている間に触っていたのかもしれない。隙間から零れる日差しをうっとうしく感じつつも、不思議と眠気はなくなっていく。それでもまだ自分は眠いんだと言い聞かせるように彼は目を開けようとしない。休日。時刻はわからないが、多分昼過ぎ。今日やるべきことは2つあった。クリーニングの受け取りとDVDの返却。クリーニングは18時までで、DVDは今日中だったらいつでもいい。やるべきことは夜まで何もなかった。だからまだ寝ていても平気だ。さっきまで見ていた夢の続きがみたくて、必死で思い出そうとする。しかし、背中の違和感に気づく。携帯を背中で踏んでいた。取り上げた拍子に携帯のトップ画面が光ると16時を回っていた。眩しさに目をしかめながら、並んだ通知を見る。後輩からメッセージが届いていた。
「和男さん、童貞役の撮影明日ですよね?わかっていると思いますが、今日はオナ禁でお願いします!ただのリマインドでした!返信不要」
後輩の仕事に対する熱が羨ましい。はぁ、とため息をついて、心の中で「よし!」呟いてから起き上がる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?