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映画「ガザの美容室」のリアル

2023年10月7日

 中東パレスチナ自治区のイスラム組織「ハマス」が、イスラエルに向けてロケット弾などによる激しい攻撃を開始。イスラエル側も反撃し、武力衝突が激化。

 それ以来、国際ニュースはウクライナ・ロシア戦争そっちのけで、イスラエル対ハマスでもちきりだ。そして現在(10月22日)は特に、イスラエルからの攻撃にさらされるガザ地区の市民の安全・人道的支援の行方と、イスラエル軍が計画している地上侵攻がいつ始まるのか、という話題に集中している。

 国際世論の真実は不明だが国内の報道は、先制をしかけたハマス擁護では決してないが、220万人のガザ地区に住むパレスチナ一般市民がいる地域へ容赦なく反撃しているイスラエル批判に傾いているように見える。

 これは危うい。

 私の考えでは、この戦争を部外者からの視点で語る時、感情で単純に戦争反対というのは浅墓であるし、どちらかに片寄るにしてもイスラエルかパレスチナ、という構図で選ぶのはもってのほかである。間違ってはならないのは、イスラエルの敵はパレスチナではなくハマス、である。

イスラエルに行ってたことがある

こちらの画像は数日前の、現地レポーターからの報道であるが(バンキシャだったかな)、
・ここはエルサレム
・右下のアーチは、イスラエル随一の高級ブランドショップが並ぶハイソなアーケード街
・写真の左側はターミナルスクエアで広場
・前方のレンガ作りの壁の向こうがエルサレムの中心的名所が集まっている地区で、その入り口「ダマスカス門」がある

 かくいう私は5年ほど前、イスラエルに仕事で2週間ほど滞在してたことがある。
 イスラエルというとユダヤ人の国でエルサレムがある、ぐらいしか認知がない方も多いのではないでしょうか。その実は、一人当たりGDPは日本より高い先進国であり、世界有数のIT立国であり、とくにセキュリティ技術などは最先端。首都は最近エルサレムになりましたが、こちらは日本でいう京都のイメージで、それまではテルアビブだったけどこちらは東京がイメージ近い、都会です。


テルアビブの街並み 日本そっくり


かっこいいビル

ちなみに現地は意外と英語は少なくヘブライ語だけで看板や案内などが書かれていることが多いのは政策だそう。おかげでかなり分からない。


テルアビブのホテルから

海を眺められる。普通にサーファーが遊んでる上空を戦闘機が飛んでいく。


海辺のメリーゴーランド

海辺にあるIT企業が集まる地域に、ぽつんとメリーゴーランドがある謎におしゃれな風景。

 滞在中、仕事のパートナーとなったイスラエルの方々とは自宅にも招いてもらうなど親しくしてもらい、またエルサレムの名所も観光案内していただき、夜はクラブで踊りに行くなどし、楽しませていただきましたが、街には銃をもった警備兵が普通にいて怖いけど、国際的には「戦争中」「頻繁に空襲警報や実際に交戦がある」な国ですけど、少なくとも当時は市民は普通に暮らしていました。

 香るおしゃれな石鹸の「SABON」もイスラエル。これが特に身近かも。
 お土産は、それと、マメかなにかでできてる粉っぽい四角いお菓子「ハルヴァ」かな。

映画「ガザの美容室」

 こちらはガザ地区の日常を描いた2015年の映画。ガザのパレスチナ女性たちの日常の風景がリアルに描かれていると思いました。

 シーンはあくまで女性専用美容室の一室のみ。ロシア出身の女主人と宿題をしないその娘、店の外で銃を持ってうろついている恋人と電話での口論で気が気でないアシスタント、客は所狭しと10人。女性のみなのでヒジャブは必要なく肌の露出も多い中一人は敬虔な信者で防備と信仰に余念がないが隣の女性は下ネタばかり囁く。調髪されている二人からなかなか次の順番が回ってこず皆イライラしている、そのイライラをえんえんと見せつけられる映画。

 結婚式が目前の女、年長で偉そうな女、陣痛が始まる女、生理中の女など様々。皆おしゃべりでてんで勝手なことを言い争うが、店外はみな銃を持った男とライオンの世界。敵イスラエルでなくても国内のたくさんの勢力が争っている事実がある。女たちは関心がないーという人もいるが、詳しい人もいて、現状を嘆いてたり、あきらめていたり、反発していたりと様々だ。意外と、反イスラエル、という感情を強く持つ割合はこの中では少なかった。

それよりも、女だけのこの美容室で、ガザの男社会(宗教的・政治的・家庭的な)に対しての抵抗・反抗心から、この女だけの世界では必死に「女にしかできない会話」をしたもの勝ち、という戦争をしているように思えた。

 そして、暗くなってきた頃外でいつものように銃撃が始まり最初はみな余裕だが次第に激しくなってくるとみな不安が高まっていく。果たして生きて調髪されて帰れるのかーという映画。

 傑作でしょ。アマプラで(有料で)配信されてます。

イスラエル対ハマスの戦争に、巻き込まれる現地パレスチナの憂いを考える前に、見ておくと良いかもしれません。

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