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あるおばあさんとの話

私が大学野球で活動していたころ、大学の近くに住むおばあさん、おそらく70歳は超えていると思うのですが、時々山の上にある野球場に練習を眺めに来られていました。
私は大学野球では学生コーチと兼任で主務として活動しており、練習の合間に、いつも接待の準備をしてくれているマネージャーにお茶を持ってきてもらい、おばあさんによかったら飲んでくださいと、お茶をお渡ししてから話しをしたりしていました。

いろいろ話すうちに、どうやらずっといろいろな高校野球チームを見ていて、近隣の高校野球部の様子に相当精通しているようでした。
数年前に私が在籍していた大学の麓に引っ越して来た際、私のいた大学野球部も見にこられていたようなのですが、あまり良いイメージを持たず、しばらく来なかったそうです。

その後偶然、何年かぶりにグランドに上がって練習を眺めに来たところに、私が声をかけたということでした。
その後も何度も足を運んでくださるようになり、時間が空けば私も挨拶に行っていました。
私が引退する四年生の秋のリーグ戦の時に、「もう歳でここまでよう上がられんから、お会いできるのが最後かもしれない。今までいろいろな指導者を見て来たけど、あなたほどの人間は初めてだった。面白いお話をしてくれてありがとう。」
と話してくださり、それ以来お会いできていません。

私は、女子マネージャーにはよく、
「野球場に立ち寄って練習を眺めに来てくださった方には、必ずお茶かコーヒーを出すようにしよう。そして、必ずお渡しするときには見に来てくれたお礼と、何かしら一言でも話をしてから戻るようにしてみて」
と話していました。

理由としては二つあって、その一つ目は、ここの野球部はただ見にきただけなのにここまで気を使ってくれるのか!と思っていただくことで、少しでも自分たちの野球部のことを今後も気にかけてくれればいいなと思ったことです。
もしかしたら、こうした習慣を続けることで、見にきてくれた方達が友人など他の誰かに野球部の様子を話したくなるかもしれません。

これが、口コミとなってちょっとずつでも広がっていけば、応援してくれる人が増えるかもしれないし、本学野球部を選ぶ学生や保護者も増えるかもしれない。
もしかすると、声をかけたことがきっかけで新たな出会いがあるかもしれない。
そうしたことが私の考えにありました。

また二つ目は、こうしたお茶出しによる外部の方達との会話を通して、普段はグランド外で事務仕事や雑務に励んでいるマネージャー達のコミュニケーションスキルを高めていく機会になればいいなと思っていたことでした。
普段はどうしても雑務等でスタッフルーム内に長時間籠ることもあり、マネージャー同士や選手との会話のみで1日が終わってしまいます。
しかし、マネージャーに求められる業務としては、オープン戦や公式戦等での他チームとの対応も含まれており、そうした対外面における対応スキルを磨く練習として、まずは練習を見にきてくれた人たちをお迎えして対応することを頑張ってもらうことにしました。

こうした取り組みを私が指導していたことを、よく見にきてくれていたおばあさんと話しており、そのことをよくお褒めいただいていたことを覚えています。
野球だけではなく、野球を通した様々な活動の中でも、何か一つにこだわりを持って取り組んでいけば、何かしらの学びを得ることができ、また誰かを喜ばせれられることもあるのだろうと思います。

いつか、おばあさんにまた会えたらと思いながら、また、会えた時にはまた成長した姿をお見せしたいと思い勉強の毎日です。

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