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達人ドラマー、ネイト・スミスが叩いた13の名曲プレイリスト

今や世界からリクエストが止まないファーストコールドラマーになったNate Smith(ネイト・スミス)。ジャズからロック、R&B、ファンクと守備範囲は幅広く、決して手数は多くなくシンプルだが独特のリズム感をもたらし、曲を心地よくさせるドラミングは唯一のもの。セッションドラマーに止まらない作曲家としても活躍する彼が叩くプレイリストを作成してみた。

Who is Nate Smith?

Nate Smithは彼のバンド「Kinfolk」を従え来日。Blue Note Tokyoで3日間(3/4〜6)、6回のLIVEを行ったが、自分も初日の2ndを観てきた。超ビッグネームではないミュージシャンで超満員になったBlue Noteを観るのは久しぶりで、後方に設けられた臨時席で観ることになった。
メンバーはスミスのドラムにギター、ベース、キーボード、サックスにゲストボーカルのAmma Whatt。

ネイト・スミスNate Smith)は1974年、アメリカ合衆国のバージニア州生まれのドラマー、作曲家で48歳。
11歳でドラムを始め、スティング、プリンスに影響を受けるも、アート・ブレイキーの演奏でジャズに魅せられた。そして大学卒業後デイヴ・ホランドに師事、その後はパット・メセニークリス・ポッターらジャズ界の重鎮アーティストから引く手数多の売れっ子ドラマーとなる。
その後はジャズからロック、ソウルまで活動範囲を広げて、ポール・サイモンノラ・ジョーンズブリタニー・ハワード等のシンガーの演奏を輝かせる現代最高の歌伴ドラマーとしてその地位を確立した。
そして作曲家/プロデューサーとしては、マイケル・ジャクソンのHeaven Can Waitを共作し、また多くの優れたソロアルバムをリリースしている。

1.Get Down, Get Down/Nate Smith

ネイト・スミスNate Smith)が自身のドラムだけで構成した『Pocket Change』(2018)より。派手なフィルインはなくリズムパターンのみだが、飽きることはなく聴いていて気持ちがいい。

2.Altitude / Nate Smith(ft. Joel Ross & Michael Mayo)

2021年リリースのソロ作「Kinfolk 2: See The Birds」より。ドラムと作曲はネイト・スミス。Michael MayoのボーカルとJoel Rossのヴィブラホンをゲストに、プロデュースワークも冴える。彼がドラマーに止まらない、サウンドクリエーターだと理解できるクオリティの楽曲だ。

3.Fly (for Mike) Nate Smith ft. Brittany Howard

引き続き「Kinfolk 2: See The Birds」より。アラバマ・シェイクス(Alabama Shakes)のブリタニー・ハワードが、ソロデビュー作でスミスがドラムを叩いた返礼でゲスト参加。ハワードと共作し、彼女をゲストボーカルに迎えている。シンプルなセットでニュアンスを醸し出すスミスの真骨頂。

4.Stay High/Brittany Howard

2019年アラバマ・シェイクス(Alabama Shakes)のブリタニー・ハワードのソロデビュー作『Jaime』に起用され、アルバム全てでドラムを担当。
グラミー賞の多部門でノミネートされた本作への参加で、ネイト・スミスの名は世界に響いたのである。そしてこのStay Highがグラミーの最優秀ロック楽曲を受賞している。 Keyboardsにはロバート・グラスパーが参加。

Nate ブリタニーは僕の動画を観て声をかけてくれたけれど、ドラム・パートについてはすでに具体的なアイディアを持っていて、デモを作っていたし、共同プロデューサーのショーン・エヴェレットはスネアだけを使った奇妙なドラム・セットを組んでいた。ベース・ドラムも、スネア・ドラムのボトム・ヘッドを外したものを使ってね(笑)。で、「Stay High」という曲ではそのキットを箸で叩くように言われたよ。つまり、彼女が僕を起用したのは、僕が彼女の求めるようなグルーヴを叩けたからなんだ。

ドラムマガジン

スミスはハワードのLIVEでも引き続き、ドラムを担当した。

5.13th Century Metal/Brittany Howard

13th Century Metalは、ロバート・グラスパーとネイト・スミスとのジャム・セッションから誕生した曲。作曲者としてハワードと共に二人の名がクレジットされている。一転して強烈なリズムパターンで曲を支配している。

6.One Man's Ceiling Is Another Man's Floor/Paul Simon

2018年にリリースされたポール・サイモンの「In the Blue Light」(2018)では、彼にとっては憧れの先輩ドラマーのスティーヴ・ガッド、ジャック・ディジョネットと共に起用されている。

Nate それはもう、最高だった。僕は2曲に参加したけれど、彼はとても親切で寛大で、演奏する前に自分の好き嫌いについて教えてくれた。スティックじゃなくてブラシを使ってほしいとか、シンバルはあまり使わずにスネアとドラムを中心に叩いてほしいとかね。
そのおかげで、2、3テイクで作業を終えることができた。でも、注文はその程度のもので、あとは自由にやらせてくれたんだ。あれほどの音楽性の持ち主があれほど自由にやらせてくれたというのが面白かったね。

ドラムマガジン

ポール・サイモンのセルフカバーだが、オリジナルはDrums: Roger HawkinsでBass: David Hoodというマッスルショールズサウンドのリズムセクションが起用されている。リズムの違いを比較すると面白い。

7.Lovely Day/ José James ft. Lalah Hathaway

ホセ・ジェイムズのビル・ウィザーズへのトリビュート・アルバム「Lean On Me」(2018)に全面参加。ホセの来日公演でネイト・スミスを知ったのだが、派手なフィルインを用いずにハイハットとスネアだけで構成するスミスのドラムソロに度肝を抜かれた。アルバムのベースは達人ピノ・パラディーノ。いつもはリズムをリードするスミスだが、先輩格のピノのベースに導かれるように気持ちよく叩くリズムが印象的。

Nate あの音楽はすでにツアーで2、3年くらい毎晩演奏していたから、曲は身体に入っていたんだ。最高だったのはピノ・パラディーノ(b)と共演できたことだった。彼は人間としてもミュージシャンとしても素晴らしくて、音楽のあらゆる部分を把握していたから、僕はとてもリラックスして演奏できた。ただ彼についていけば良かったんだ。

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8.Skip Step/Nate Smith

グラミーにノミネートされた曲を含む2017年にリリースされたソロ作品「POSTCARDS FROM EVERYWHERE」より。かつて師事したデイヴ・ホランドがベース、リオーネル・ルエケがギターで参加したラテン~ブラジリアン風のフュージョン・ナンバーでも、スミスのドラムが冴える。

9.Ace of Aces/THE FEARLESS FLYERS 

VulfpeckのスピンアウトプロジェクトTHE FEARLESS FLYERS は2018年結成。メンバーはVulfpeckからJoe Dart(b)、Cory Wong(g)、スナーキー・パピーからMark Lettieri(g)、そしてのNate Smith(ds)。ドラムはスネア、ハイハット、バスドラの3点セットのみで「ミニマム・ファンク」を展開。

10.Nate Smith is the Ace of Aces/THE FEARLESS FLYERS 

2020年リリースの次作より。「Nate Smith is the Ace of Aces」は「Ace of Aces」をリメイク。スミスをフィーチャーした楽曲で、この日初めて使ったという巨大なドラムセットを使用した。

11.Cosmic Sans/Cory Wong Feat.Tom Misch

2019年のCory Wongのソロ「Motivational Music For The Syncopated Soul」より、Tom Mischをフューチャーした作品。リズムギターによるカッティンを全面に押し出していくプレイを生かすスミスのドラミング。

12.To Live/Norah Jones

ノラ・ジョーンズ『Pick Me Up Off The Floor』(2020)から。ノラと言えば、ブライアン・ブレイドだがこのアルバムでは一曲スミスが叩いている。映像でもわかるようにスミスの代名詞ともなりつつあるスネアとハイハット、バスドラにシンバルのシンプルなセットで飾り気のないリズムを提供している。

13.Home Free (For Peter Joe)/Nate Smith

グラミーのBest Instrumental CompositionとBest Arrangement, Instrumental or A Cappellaにノミネートされた曲。もはや彼はドラマーだけではなく作曲家としての評価も高いことを証明した。

日本人との共演

ネイト・スミスは日本人との共演も多い。トランペットの黒田卓也との共演。NYに住む若手ピアニストの大林武司とのトリオにも何度も参加し、昨年11月には来日してTBNというユニットとしてプレイしている。今回の来日でも大林が鍵盤で参加。大林はホセ・ジェイムズのバンドにもいたため、そこで親交を深めたと思われる。
10歳ほど年下の大林に対しても紳士的でリスペクトを忘れない態度は好感が持てる。

そして、意外なこの方とも。

想像を絶するテクニックを有しながら、決してそれをひけらかさずに全体のアンサンブルの中でのドラミングを心掛けるのが彼の特徴。
演奏を見ていても人柄が滲み出ると同時に凄味を感じる。
スミスが参加した楽曲を聴いていても、彼のリズムに身を委ねるだけで気持ち良くさせてくれる、そんな凄腕ドラマーだ。

今回の来日が全てソールドアウトと聴いて意外な気もしたが、ここ数年での彼の参加作品を聴くと、一気に彼のファンが増えたのも納得。

そして、ここに来てTBNトリオの公演で6月にネイト・スミスが来日すると言うGood Newsが。これは見逃すことができない。


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