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ハンニバル、アルプスを越える。酢を使って。


 カルタゴの将ハンニバルと言えば、共和制ローマを苦しめた敵の中でもローマを崩壊の瀬戸際に追い込んだ武将として名高い人物です。僕自身も小学校の入学祝いにもらった子供向けの人物事典の中でハンニバルとジャンヌ・ダルクの二人がお気に入りだったことを記憶しています。その記憶が塩野七生女史の「ローマ人の物語」の2巻にあたる「ハンニバル戦記」に手を伸ばさせることになりました。それが塩野作品に触れた初めとなります。僕はローマ人の物語を2巻から読んだんです。
 このハンニバル戦記はベストセラーになり広く読まれ、テレビ番組「世界ふしぎ発見!」では、ほぼ本の内容にそった形でハンニバルが取り上げられ、藤崎竜氏の漫画「封神演義」では殷周革命で起こった牧野の戦いがまるきりカンネの戦いそのものの展開で描かれたりしました。少年チャンピオンだったと思うのですがハンニバルをテーマにした読み切りが載って、「ローマからの自由」を唱えるハンニバルと、カンネでローマ軍を破ってめでたしめでたしの展開に頭を抱えた記憶もあります。
 ところで塩野七生がハンニバルを描いた前後で、決定的にハンニバルのイメージが変わってしまったように感じます。現在ではハンニバルと言ってまず思い浮かべるのは、騎兵を駆使して数に優るローマ軍を包囲殲滅したカンネの戦いであり、またハンニバルの戦術を模倣したようなスキピオとのライバル関係だと思います。
 しかし塩野作品以前にハンニバルと言えば、ゾウを連れてアルプスを踏破した進軍行であったはずです。今日、呟きで紹介した記事も、ハンニバルのアルプス越えのルートを確定できたかもしれない、という内容の物。

 これは作家の唐沢俊一氏も同様のようで、氏が著書かサイトに載せていた日記かで、ローマ人の物語の2巻を取り上げた際に「真面目なこの本では出てこなかったが、ハンニバルが道を塞ぐ大岩を酢で溶かした話が好き」という内容のことを書いていました。その時の唐沢氏の書きぶりから、真面目に取り上げることもない奇説の類だと長く考えていたのです。
 ですが最近、変な話であっても同時代の記述が根拠になっているんだろうか?この話の初出は何だろう?と気になって、ちょっと検索してみました。「ハンニバル 酢で岩を」と。すると、出てくるのですね。ハンニバル軍が酢を使って岩を砕いたという話を真面目に考察しているサイトが。

 そのうちの二つをここで紹介しておきたいと思います。

 これらのサイトによると、ハンニバルが酢で岩を砕いた(どうやら溶かしたのではなく、砕いたようです)という話を最初に記録に残したのは、古代ローマの歴史家リヴィウスであったようです。僕でも名前を聞いたことのある人物が出てきました。
 古代の軍隊が行軍に酢を用意していることがあるのか、という点については、ローマ軍の話ですが酢を水で薄めて、清涼飲料として兵士たちに与えていたということです。これはまるで古代のスポーツ飲料ですね。漫画「OL進化論」で、子どもがスポーツ飲料を欲しがるけど値段に納得できないので、クエン酸やレモン汁で自作しようとする話があったのを連想しました。
 この飲用に水で薄めた酢は「ポスカ」と呼んだそうで、ますますスポーツ飲料めいてきました。

 さてよそ様のサイトの内容を要約して自分の記事にするのも気が引けますので、そこからどのように考察されているのかにご興味のある方は、紹介先のサイトをご覧ください。
 与太話だと思っていた話が真面目に研究されていたことと、古代の兵士もスポーツ飲料のようなものを飲んでいたことに驚いたことが伝われば幸いです。

 最後までお読みいただき、ありがとうございます。よかったら本業のサイトもご覧ください。


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