#2 日記 「中華丼を越えて」

とにかくお腹が空いている。
空腹という二文字だけが頭の中を占拠している。

女性なら分かっていただける方も多いかと思うが、生理前の異常な食欲に私は毎月心を乱されている。

この間なんて、たしか18時くらいに夜ご飯を食べ終わって、そこから1時間もしないうちにしっかり空腹になっていた。

その時は家に1人だったので、普段ならしないが、声に出して自問自答を続けていた。

私「あぁ、お腹すいた。今なら、どんぶりの中華丼食べれる。いやでも、さっき一食分は食べたわけだし、そんなやり過ぎだよな…でも、でも、」

人には聞かせられない、見せられないとはまさにこのことだと思った。ありがたいことに今日明日のご飯に困っているわけではないのに、その姿はまさに困窮そのものだった。

この時、私がターゲットにしていたのはレトルトの中華丼であった。米は冷凍のがあったし、レンジという文明の利器を使えば今すぐに中華丼にありつくことができた。

私「中華丼、中華丼食べたいなぁ…でも、せっかくの一食分、明日食べる分なのに…」

そう、この時私は少しばかりの冷静さも持ち合わせていた。生理前においては奇跡だと思う。
今、中華丼を食べれば明日の分はない。この分だと、どうせ明日もお腹は空いている。この中華丼、生かすも殺すも自分次第…!

急に少年漫画風な思想になったが、この時の私は必死だった。

1人悶えているうちに、仕事を終えた姉が帰ってきた。

姉「ただいま〜。」

私「おかえり…お腹空いた…」

帰ってきたばかりの姉にそんなこと言ったってしょうがないのに言わずにはいられないのが女の性。

姉「なにさ、別に食べればいいしょ。」

姉はあっさりそんなことを言ってきた。確かに、食べたい食べたいと壁を見つめる妹を見ればそう言うに決まってる。

姉からの援護を受けて、いよいよ中華丼を食す準備に取り掛かるかと思いきや、ここで私の中にいる変な頑固娘が登場し、なぜか歯を磨くと言い始めた。

私「私、歯磨くわ。うん、そうだ、ここで歯を磨くことで抑制する。打ち勝つわ!!」

一体自分は何と戦っているのか、今思い返すとよく分からない。たださっきも言ったようにとにかく必死だったのだ。

夜の静かな部屋に、歯ブラシのシャカシャカ音だけが響く。あぁこれでいいんだ。

翌日、私は起きると同時にレトルト中華丼を手にしていた。昨日の自分に勝ったのだ。

少しだけ勝利の味がした。

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