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エッセイ488.家庭内英会話(3) 決まり文句

決まり文句というか、各国には面白い言い回しがあるものです。

あるサウジアラビア人の生徒に教えてもらったのですが、誰かと喧嘩になり、
「お引き取りください」「出て行ってちょうだい」
というとき、

「ラクダの出口はわかるわよね?」

と言うそうです。
ラクダって大きいので(VIVANを見て、馬より大きいんだぁ、と思いませんでしたか?) 出入りするにはそれなりの大きなドアが必要でしょう。
「あんたが出て行く戸口は見えてるよね」
という意味だそうです。

私の 今は亡き義母は、子供がすねて下唇を突き出すと、
「誰か、早く薬缶(やかん)を持ってきてあげて」
と言うんだ、と言っていました。
薬缶が掛けられるぐらい、口を尖らせているっていうことだそうです。
これをウチの娘たちに言うと、すんごく怒っていました。

ぐずっている子供に、
「ああ、眠いんだね」
と言うと、
「ねーむーくーなーいー!」
と余計怒るのと同じで、面白かったです。

私にもあります。
私のヘッドフォンやイヤフォンは、なぜかわかりませんが英語で話しかけてきます。
ちゃんと設定すれば良いのですが、やりません。
女性の声で、
Power on!
Power off!
Connected!
Disconnected!
Battery low!
と言ってきます。

で、私は夫が毎朝出勤する時に、いくつかの決まり文句がありますが、上記のことも、毎朝夫に言っています。
我が家の朝は、お互いに決まり文句の応酬で、こんな感じです。

前にも書きましたが、夫が
グッモーニン
と言いながら布団から這い出してきたらまず、
イエス、プリーズ
と返事をします。
必ず Do you want coffee?
と訊いてくるので、先に返事をしているわけです。

そのあとは各々、黙々と朝の用事を済ませていきます。

私は一応毎朝(か前の晩に)、
ドゥ・ユー・ウォント・アン・オベントウ?
と訊きます。
たまに仕事ランチだったり、半休で帰ってきて、お弁当が無駄になるからです。
a Obento  じゃなくて、an Obento
というのが、芸が細かいでしょうか。

作り終わると、夫の通り道にある独立型の冷凍庫のてっぺんにお弁当箱を載せ、
ドント・フォーゲット・ユア・オベントウ
と言っておきます。
夫は、言われれば忘れませんが、私がこれを言い忘れると、寂しくお弁当が家に置き忘れられていることがあるからです。
持って行くのを忘れて出て行っても、すぐ気がつけば、バス停に向かう夫のあとを走って、または自転車で追いかけることもありますが、だいたい間に合わないタイミングで気づくので、諦めて、自分が食べます。

夫は朝の決まりきった行動を、なぜか言葉で伝えてきます。

夫:おはようございます。
私:おはようございます。はい、お願いします。(コーヒーを)

夫:私はコーヒーを作り、今からシャワーを浴びてきます。
私:はいどうぞ。

夫:私はあなたにコーヒーを注ぎます。I'll pour you coffee.
カップがありますか? Do you have a cup?
私:ありますよ。はいどうぞ。Yes, I have. Here you are.
夫:おべんとうを包んでくれますか? Would you pack up my Obento?
私:あ、はいはい。

私:あなたのお弁当は冷凍庫の上にありますよ。
Your Obento is on the corner of the freezer.
お弁当を忘れませんように。Don't forget your Obento.
夫:おお、ありがとう。忘れるところでした。I nearly forgot.

 夫:さて、出かけます。Well, I'm leaving.
私:はいはい、靴紐結んでからもう一回声かけてください。
Give a shout when you finish doing your shoe races.

靴紐って、シュー・レースと言います。外人によくありますが、夫もスリップ・オン・シューズは意外と好きではなくて、紐靴を履いていて、いちいち靴紐を解き、きちんと結びます。それに時間がかかるので、玄関で立ち尽くしてい待っているのが面倒なため、靴紐を結んでから声をかけよ、と言うわけです。
ところが私はそう言っておきながら、せっかちなものですから、布巾などを片手に玄関に出て行って、やっぱりそこに立って、夫が靴紐を結び直すのをじっと見ています。

夫:じゃ、イテキマウス。(これは日本語)
私:はい、新聞とってくれますか。Would you get me my newspaper?
夫:はいはい・・どうぞ。Sure, here you are.
私:ありがとう。
私は電気を消して鍵をしめます。
(これを言わないと、
君、玄関の電気を消して、鍵を閉めてくれたまえ
と言われるからです)

さて、夫はここで必ずバックパックを開けて、ケースに入った大きなヘッドフォンを出して装着します。
私は挨拶がわりに声をかけます。

バッテリー・ロウ  
 電源がありません
ミュージック・オール・イレイスト  
音楽全て削除
パワーオフ  
電源が切れます
ディスコネクテッド  
接続を切断します

夫は日本語で
「うるさいです。行ってきます」
と言いますので、

私は最後に、
 
Walk carefully.   歩行に気をつけて

と声をかけ、お弁当を背中にしょった夫は出勤していきます。

かつて、NZへ帰省している間、私たちが出かけるときは義父母は必ず戸口まで来て、
Drive Carefully   👴👵
と言ってくれまして、私も名古屋時代は車出勤の夫にそう言っていました。

今は徒歩通勤なのですが、道中の安全を祈願して、やはり
ウォーク・ケアフリー
と言わないではいられません。



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