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Foodies! 127. 旅するル・クルーゼ、ディジョン・イエロー

ずっと昔ですが、すごく身の丈に合わない買い物をしていました。
お金を何ヶ月も溜めて、一つ一つ、ル・クルーゼの鍋を買って行ったのです。

叔母さんからル・クルーゼを貰い受けた友達が、叔母さんに

「私ぐらいになると重くて使わなくなるから」

と言われたというのを聞いて、今だけなのかと思って決心したのです。

最初に買ったのは、ココット・ロンドという、丸型でツマミの黒いもの。
色は、今はもう無い、サンド・ベージュというものだと思います。

ル・クルーゼは蓋もしっかり重いので、蒸気が漏れてきたり、
強火にしてもコトコトと蓋が踊る、ということがありません。

ですので、火にかけていたのを忘れてしまうことが、よくありました。
タイマーをかければ解決できる問題だったのに、よく失敗しました。

決定的に琺瑯が剥がれるほどに焦げ付かせたのは、
今も忘れませんが、大根を煮ていた時です。
子供に授乳しながら寝落ちして、美味しい出汁の匂いが眠りの中まで漂い、

出汁・・
出汁・・・
おでん?

あっ、しまったぁ〜

と 飛び起きました。

台所に走っていって鍋の蓋を開けると、
その頃マイブームで、やたら丈高く切って並べた大根が、
鍋底は真っ黒に、大根達はかの、ストーンヘンジのように、
悲しく湯気を立てながら、林立していました。


「琺瑯が剥がれても問題ない、焦げ付かないタイプのスープなどを作れば良い」
というのと、
「ル・クルーゼ本社は何も言っていないが、それを使うのは良くない」
という意見を見て、悩みました。

結局、「鉄瓶は貧血の人がむしろ鉄分補給につかうんだからこれも大丈夫」
と勝手に決めて、ワックスペーパーを敷いて炊飯したり、汁物も作っていました。

次に買ったのは、これも今では無い色のようですが、ライム・グリーンで、
直径は27センチだと思います。

ローストチキンを作ってみたかったのと、
子供達がよく食べるようになり、おでんやカレーを大量に作りたかったからです。

大きさに関わらずですが、ル・クルーゼはとても重いので、

持ち上げようとした時、中身があるのかなと思って蓋を開けたら、空だった、

ということがよくありました。

空だった、なら別に問題ないのですが、逆に、

持ち上げて、あら、重くても、騙されないわよ?
あんた、空なんでしょ?

と思ってしまうことがあって、中身が入ったまま放置、
気がついた時には、うわぁ・・・ということも、度々ありました。

このライム・グリーンでは、念願のローストチキンも作り、
子供達が高校ビー部男子並みに大食になっていっても、全く困りませんでした。



最後に買ったのが、今は無い色の、ディジョン・イエロー。
直径は16センチでした。

2010年から10ヶ月、夫が名古屋に単身赴任をする際、
自炊をするのでこのディジョン・イエローを持って行きたいと言いました。
ええ〜、持っていくの?
味噌汁作るさえ、かっこつけてこの小さいル・クルーゼでやっていたけれど。
でも、やる気のあるのはいいことなので、持って行ってもらいました。

そうしたら、夫の一人暮らしの楽しみの一つが、料理を作ることになりました。
遅く帰ってきて、スーパーの見切り品のひき肉やステーキを買い、
ほとんど何でもかんでも、この小さいル・クルーゼで作っては、
写真を送ってくるようになったのです。
夫の元気な様子が知れて、鍋も大活躍で、言うことなかったです。


ちらっと見えている、ディジョン・イエロー、直径16センチです。

さてこの16センチ径、2020年に長女が京都に引っ越す際、持って行きたいと言いました。

ル・クルーゼは重いので、なかなかしっかり洗わないでいたのですが
そうすると、微妙に残っている鍋底や蓋の油分が、熱によって茶色っぽい被膜を作ります。

そうか、またこの子は引っ越すのかと思ったもので、磨いてみました。
本当は、ル・クルーゼ専用の pots and pans という微粒子のクレンザーがありますが、そんなものでは到底歯が立ちません。
普通のクリームクレンザーをつけ、最後には金属タワシで磨いたら、ほぼ、新品のようになりました。
勢いづいて、他の二つも磨きました。
ほんと、大変でした。
二度とやりたくないかな!

長女も京都では、たま〜〜〜〜〜〜に、
一口しかない電気コンロにディジョン・イエローをかけ、
料理をした時は、写真を送ってくるようになりました。

料理は、娘達にいつかは教えたいと思っていましたが、
長女・次女とも、就職が決まった2週間後には引越しで、
こんなに早くいなくなるとは思わなかったので、全然そんなことはできませんでした。
まあ、熱伝導のいい鍋は渡したので、ククパなどを見て頑張っていたのでしょう。
私に習うと、大変な上から目線で、嫌でしょうしね😅

去年その長女が、今度はシドニーに引っ越した時ですが、
家電は一人暮らしを始める人にもらってもらい、
台所用品ぐらいが私たちの狭い賃貸に戻ってきました。

(戻ってきたら、もらいたいな〜)と思っていた食器や什器はほぼ、友達にあげていましたが、
幸いにも、ディジョン・イエローは帰ってきました。

東京〜名古屋〜京都〜東京、か・・。

今は、食器棚も置けない狭小キッチンであるのと、
3qtと6qt(1クォーとは1リットル弱)のインスタントポットを使っているので、
フィスラーの大鍋と圧力鍋、3つのル・クルーゼは置き場所がなく、
この部屋におまけでついている小さな倉庫に入っています。
倉庫がなかったら、鍋の間で寝るような仕儀になっていたかもしれません。

お世話になったル・クルーゼ。

持ち上げるのも洗うのもまあ大変ですが、
いつかもう少し広い住まいに引っ越せたなら、使うこともあるのかな。

バイオロジカル・クロックは、

「それは・無理・無理・無理・無理・・・」

とカチコチ言っているような気もするのですが、希望だけは捨てません。


重いけれど、上手に料理ができるような気がするのですよね。

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