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日本語教師日記176.みなさん早く慣れてくださいね

日本に勉強、結婚、仕事などで長く住むことになった人から、

最初の頃やった(自分の馬鹿な)失敗

を聞き取るのが私の楽しみです。
今日は割といろいろな人から聞くお話をご紹介しますね。

【あんこ編】

「先生、あんこ は危ないものです。
最初の頃、日本のパンやサンドイッチが本当に素晴らしいので、
すぐに馴染みのパン屋さんができて、通うようになりました。
ある日、おお、美味しそうなペストリー!と思って買って、
チョコレートの入ったペストリーだと思って、ぱくっと食べたら、
『うおお!』
と、思わず吐き出しました。
それはチョコレートではなくて、私の初体験のあんこで、
私にとっては、「甘味のついた、泥」だったのです。
あんこを初めてガイジンは、本当にびっくりします」

ーー今はどうですか?

「今は大好きです。先生は粒あんと こし餡とどっちが好きですか?」

【熱い水】

「子どもが生まれてからも、日本のレストランはとても親切なので、
一人でも平気で行っていました。
あるとき、ミルクを作るお湯をもらおうと思って、先生と日本語を勉強していますから、そんなのちょろいと思って、頼んだんです。
すみません、熱いお水 お願いします、って」

ーーー あ、やりましたね。レストランの人はなんだって?

「『はい?』と言われたので、発音が悪かったかと思って、
『あつい・お水を・お願い・します』
とはっきり言いましたが、その人は、首を傾げて、
上司みたいな人を連れてきました。
しょうがないので、赤ん坊を指差して、ボトル(哺乳瓶)を指差して、
Hot water, please. Baby.
と言ったら、お二人が声を合わせて、
『あああ〜あ、ホットね!』
とおっしゃったので、恥ずかしかったです」

ーーーごめんなさい、私が教えてなかったですね。
「お湯」です。
はい、忘れないうちに、書いて書いて。
日本語で「水」と言ったら、もう冷たいに決まっているので、
熱い水と言ったら、それでもう、通じないんですよね。

【納豆】
「妻の両親に会うと、これは食べられる? これは?
と、ニコニコしながら、いろいろなものを出してくれます」

ーーーうん、明らかに楽しんでいますね。
ニックさんは、食べられないものはほぼ、ないでしょう?

「ないです。でも・・」

ーーーでも? あれ?

「はい、あれです」

ーーー納豆?

「納豆です」

ーーーニックさんわかりやすいですね。
納豆は、あれはいいです。
あれは幼児期から食べていないとなかなかいきなり、
おいしいと思うのは困難です。

「食べなくてもいいですか? 失礼に当たりませんか?」

ーーー大丈夫です。
だけど、納豆パスタや納豆オムレツは、おいしいものです。

「なるほど・・・・食べなくてもいいですか?」

ーーーいいですよ、失礼に当たりませんよ。

「安心しました」


納豆については、このニックさんぐらいが標準ですが、最近増えてきた、
「なんでも味わおう」
「京都・奈良なんて物足りない!」
「着物体験なんて陳腐! お香を習いたい」
みたいな人の中には、納豆なんか全く、ものともしない人がいます。

居酒屋で。
「先生今日はひとつ、先生の教えに従って、
納豆を食べてみることにいたします」

ーーーえ、教え・・そこまでのものはありませんが、食べてみますか?

「はい、是非。
納豆には、ブルーチーズに対する抵抗感、みたいなものがあるわけですよね?」

ーーーあ、なるほど。
あれも、おいしいと思う人は好きだけど、苦手とする人も多いですね。
そういえば、北欧のどこかに、世界一強烈な、発酵し続けるものの缶詰っていうのがあるんですよね?

「あります。あれですよね、シュー、なんとかっていう・・」

ーーー そうそう。
あとほら、ドリアンとか。
食べ物体験は人それぞれですから、納豆だけを指差して、
くっさ〜!
とか言ってはいけません。
私の生徒は特に、そういうことを言ってはいけません。

じゃあね、この「納豆」とだけあるのはちょっと避けて、
「焼いた揚げに納豆が載っているやつ」と、「納豆オムレツ」で行ってみましょう。

「はい、お願いします!」

・・・・果たしてこの人は、

「あれ? おいしいです」

と言いながら完食しましたので、いまどき

「外国の方って、納豆だけはだめよね」(日本人)
とか、
「腐ったソイ・ビーンだけは、人間の食べ物ではありません」
(外国人)

などと言っているようでは、「遅れた人」との称号をもらってしまいます。


ちなみにこの人は「納豆の糸」には苦労して、
箸から糸を切り離そうとして、椅子からちょっと立ち上がっていました。


いやいや、それはお箸を、ぐるぐると回して切ることにしましょう。
教えなかった先生が悪かった、ごめんなさい。

以上です。

サポートしていただけたら、踊りながら喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。