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ゴッホの魅力解説します!/自画像で見る!ゴッホの作風変化!

この記事では、ゴッホの魅力についてInstagramでは語りきれなかった内容を、より詳しく解説したいと思います。
現在開催中のゴッホ展(東京都美術館)を、さらに楽しんでいただける内容になっているのでぜひご覧になってみてください!
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前置きが長くなりましたが、それではどうぞ!

1.1分でわかる!ゴッホってどんな人?

本名:フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホ※(Vincent Willem van Gogh)
1853年生まれのオランダ人です。(フランス人ではないのです!)
(※オランダ人の「ファン」は性の一部なので省略しないそうです。)

ゴッホは実は画家になるべくしてなったわけではありません。
最初は画商(絵を売買する人)として働きながら、聖職者を目指していたそうです。
しかし志が叶わず、やむなく画家としての活動を始めたそうです。

その時ゴッホは28歳

そして、ゴッホが拳銃自殺してしまった(所説あり)のが37歳

なので、画家としてのキャリアはおよそ10年しかありません。

そんな中で、

油絵は約850点、
水彩画は約150点、
素描(ペンのスケッチ)は約1,000点

確認されています。処分されたものや、まだ見つかっていないものを考えるともっとあると考えられます。

10年でこの制作数は、他の画家と比べて圧倒的に多いです!
単純計算ですが、2日に1つ作品を描いていることになります!
圧倒的な活動量ですよね!!

それからゴッホとゴーギャンがコンビを組んでいた話は有名ですが、ゴッホは超絶に人付き合いが苦手だったので、たったの2か月で決裂してしまいました。

最後はゴーギャンに耳の形を指摘されたから、目の前で耳を切り取ったのだとか...(ひぇーーー)

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【包帯をしてパイプをくわえた自画像】
(耳を切り落としで逆にすっきりしたのでしょうか。。悪くない表情のように見えるのはするぞーだけ?)

そんな短期間の中でもゴッホは約40点、ゴーギャンは約20点お互いの影響がみられる作品を残しています!すごい数ですね!


また、弟のテオに経済的な支援を受けていたそうですが、その弟も
「兄はその性格で他人だけではなく、自分をも苦しめている。」
と言っていたそうです。(ちなみに弟はリア充だったそうですが、人生は兄と一蓮托生。ゴーギャンが自殺したすぐ後に亡くなってしまいます。)


するぞー調べによる、ゴッホの人物像をまとめると、

・勉強熱心で探求心がすごい!
・強いこだわりを持っている!
・精神的に不安定で、対人関係を築くことが苦手(クセがすごい)

といった感じでしょうか!!


2.作風変化の紹介

ゴッホの作品を鑑賞する上で、注目ポイントは『制作した時期』です。制作時期や場所によって様々に絵画技法が進化していくからです。するぞーはその作風を大きく4つに分類してみました

(1)初期の作品の特徴・・・自然主義期

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全体的に暗い!!

聖職者としての道が断たれたゴッホは、身近な生活や宗教を画題にしていたミレーに影響され、絵を描き始めたそうです。
その作品は自然主義の画家たちのように、暗いものが多く、宗教的な意味合いも多く含んでいるものでした。
この時期の作風は知らない人も多いのではないでしょうか。


(2)中期の作品と特徴・・・研究・実験期

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色が増えてあざやかになりましたねー!

この時期の作風は、以前のものと大きく変わります。暗かった色調は、一転鮮やかになり、様々なものから影響を受けながら、試行的に描いていた様子が見られます。
今まで狭い世界で絵の練習をしていたゴッホですが、フランスに出向いた時に、世間で流行っている最先端の絵画に驚いたのでしょう。
絵の鮮やかさや技法など、ゴッホがどんなものに感動を覚えたのかがよくわかる時期です!
主に影響が見られる要素をA〜Cにまとめたのでご覧ください!

A:印象派画家からの影響

ゴッホは印象派の絵画を見て、その色の使い方に感動したそうです。
模写などで、その色遣いや、筆のタッチを練習した作品が多く見られます。
鮮やかな色を使って、筆致を利用する印象派の影響を受けてから、鮮やかな色を並べる描き方になりました。

決定的な違いは何を捉えようとしたかだと思います。
印象派画家は色を使って何かを忠実に捉えようとしましたが、ゴッホは色と筆づかいの組み合わせや配置の仕方で、絵にしかできない叙情的な表現を求めたのです。

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モネ

クロード・モネ《印象・日の出》1872年
印象派の特徴は
荒々しく残った筆跡
色を混ぜない塗り方
鮮やかな色使い
などが挙げられます。描き方がかなり似ていますよね!


B:新印象派からの影響

スーラの点描画を見て、色を並べて新たな色を作る並置混色を研究しました。
描かずに色を計画的に並べて表現する点描画法に影響されて、ゴッホ独自の「色の線の集合体で物の形を起こしていく」線描画法ともいわれる技法を編み出しました。

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点描での作品も多く残しています!

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スーラ

新印象派の代表画家、ジョルジュ・スーラの作品です。
拡大図でわかるかと思いますが、全て点の集合体で形や光を表現しています。
C: 日本絵画からの影響

日本絵画、浮世絵の主な特徴はこちら↓

♦物の輪郭をくっきり描く平面的な形の描き方
♦これまでの西洋画にはなかった斬新な色遣い
♦浮世絵ならではの大胆な構図

ゴッホは日本文化にあこがれて、日本人になりたいとまで思っていたそうです。

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【坊主(ボンズ)としての自画像】
日本人に憧れて、自分が日本の坊主になったつもりで描いたそうです。色の使い方や輪郭線がはっきりしている描き方にも浮世絵の影響が見られます!

ゴッホ

ゴッホ

どれも左が日本の浮世絵で、右がゴッホの模写です。

日本の浮世絵は、主役をあえて端に描くことで、余白を大切にする構図が多く見られます。

これまで主役はかならず真ん中!が当たり前だった西洋画家には衝撃的な構図だったことでしょう。

ゴッホらしく、自分なりに再定義しながら写しとっているのがよくわかります。 

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フィンセント・ファン・ゴッホ
《タンギー爺さん》1887年 

この肖像画の人物の人柄はどう見えますか?

この人物は当時ゴッホを含めた無名の画家を応援してくれていた画材屋さん兼画商で、画材をゴッホに譲ってくれていたそうです。

普段の感謝の気持ちが、後ろに見える浮世絵の色鮮やかさや、人物を描く丁寧なタッチから伺えそうです。

それから、日本の気候や風土への憧れも伺えます。
次章で出てくるフランスのアルルという土地にたどり着いた、ゴッホの感動がわかる手紙が残っています。友人ベルナール宛の手紙で「この土地(アルル)の空気の透明さと明るい色彩効果が、僕には日本のように美しく見える」と綴っているのです。
故郷のオランダは年間日照時間が日本よりも短く、晴れた日も少ないので、日本のような四季に恵まれて色鮮やかな景色に憧れていたのかもしれません。

(3)後期の作品と特徴・・・自分流確立期

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ずいぶん作品の雰囲気が変わってきましたね!

この時期になると独自の筆致や色遣いが確立されてきます。
その作風に大きく影響したのは、

・アルルという土地
・ゴーギャンとの共同生活
・そして住んでいた黄色い家

でしょう。

ひまわりシリーズや、夜のカフェテラスに見られるような、
補色効果を使った黄色が映える絵をたくさん残しています。

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《夜のカフェテラス》1888年
黄色と青紫の補色効果で、カフェの明るさと賑わいがより際立ってるように感じます。(この時期のゴッホの絵はこういった補色を使ったものが多いです!)

ひまわりシリーズ
ゴッホはゴーギャンに宛てて7枚のひまわりを書きました。
色調が違うひまわりにはいくつかの秘密があります。

ひまわり

《ひまわり(4枚目)》1888年
黄という色に対する確たる意思、幸福感、自信を感じます。
もはや主題はひまわりというより「黄色」そのもの。
リズム感も安定感も併せ持つこの構図も素晴らしいと思います。
憧れていた南仏の地で仲間と共に画業ができる喜び。
太陽を象徴するかのような黄色のひまわりが、希望に満ち溢れた感情を様々な表情で訴えかけてきているようです。

知識なんてなくても、このひまわりを近くで見れば、もはや実物を超えたひまわりのボリューム感や、命を吹き込まれた黄色の素晴らしい魅力がすぐわかると思います!ロンドンナショナルギャラリーで観ることができます!
(この構図を基に、少し色味を抑えたものが、かの有名な53億円の5枚目のひまわりです。SOMPO美術館で見ることができますよ!)

(4)終盤の作品と特徴・・・覚醒期

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何やら不穏な雰囲気ですね…

精神的に不安定になっていたゴッホは、しばしば入院をしていたそうです。
精神的な発作に苦しみながら、気持ちが落ち着いている時は、病院から見える景色や、信頼できる医師を描くことが多かったそうです。

この頃見つけた、らせん状に描くタッチはゴッホ自身もとても気に入っていたようで、

「表現としてはすごくいい出来だ!しかし、精神的には危険な状態になりそうだ。」

と言っていたそうです。

【糸杉シリーズ】

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《糸杉と星の見える道》1890年

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《星月夜(ほしつきよ)》 1889

ゴッホの激しく目まぐるしく変化する精神状態が、色や形に現れているように思えます。

完全に余談ですがこんなお話もあります。

アブサンとゴッホ
アブサンはスイス発祥のお酒で、値段も安かったことから19世紀のパリで大流行し、あらゆる生産者がアブサンを作っていました。しかし、あることが原因で1915年から世界的に製造・販売禁止となりました。
その原因となったのは、原料のニガヨモギに含まれている「ツヨン」という成分です。この「ツヨン」が幻覚や錯乱を引き起こすと言われています。

アブサンはゴッホやピカソやランボーなど名だたる芸術家が好んで愛飲していたとされていますが、ゴッホに至っては、この幻覚症状が原因で耳を切り落としたのではないかとも言われています。そのためか「悪魔の酒」と称された時期もあったそうです。

なお、現在は1981年に世界保健機関 (WHO)がツヨンの許容量を設けたことで製造が再開され、現在では安全基準を満たしたアブサンだけが流通しています。

激しい立ちくらみの時のような感じで、幻覚によって本当に世界が歪んでいるように見えたのかもしれませんね…

激情が感じられることが多い糸杉シリーズですが、
こんなものもあります。↓

糸杉

《糸杉》1889年

他の糸杉の作品とは、雰囲気が違うように感じます。
空の色からして、時間帯は昼でしょうか。

これまでのトゲトゲしい杉とは違い、細かく螺旋を描くそのディテールは、どこか祈りのようなものすら感じます

後ろの暗い糸杉は無視できませんが、迷いながらも希望を持って取り組んでいる様子が思い浮かぶのは、するぞーだけでしょうか。

ちなみに糸杉というモチーフは、日本でいうところの菊の花。
墓に供える花のような役割で、死を意味しているそうです。

その糸杉を死の直前に何枚も描いたゴッホ。(1年後になくなります)
糸杉の描き方によって、自らが死と向き合う感情を巧みに描き切っているように感じるのです。

3.まとめ

いかがでしたか?

ゴッホは人付き合いに苦しみながらも、飽くなき探求心で様々なものを吸収して、自分のものとして昇華していたんですね!

ゴッホが自分のスタイルを確立するまでに影響を受けた要素を簡単にまとめると

自然主義 → 実生活を主題にすること
印象派  → 鮮やかな画面にする技法
新印象派 → 色を計算して並べる技法
浮世絵(錦絵)→  平面的な表現と大胆な構図、新しい配色

となります。
(その他ハーグ派からの影響なども欠かせない要素ですが、ここでは割愛します!)

そしてこれらが合体して、線描画法(色線の集合体で物の形を起こしていく)を作り出したのです。

(2021年9月現在、開催中の「ゴッホ展」(東京都美術館)では、その作風の変化の様子や、影響を受けた画家たちの作品が、わかりやすく展示されています!そういった目線で鑑賞を楽しむのもおすすめです!)

4.最後に

ゴッホは弟との手紙でのやりとりが多く残っています。
それには、ゴッホの暮らしぶりや、その時感じていること、絵の構想などが詳しく書かれているそうです。
作品に対する思考がこんなにわかりやすく、赤裸々に語られている画家は珍しいです。
そのわかりやすさも人気の理由の1つでしょう。

こうして歴史的なことや、技法のことを中心に述べてきましたが、

ゴッホの最大の魅力は、やはり絵画による感情表現です。

知識なんかなくとも見る人に感覚的に伝わる迫力が、今も根強い人気の理由の一つだと思います。

今回紹介した知識を使って、鑑賞するものもちろん楽しいですが、

最初はやはり絵画に込められた心情を直接感じ取ってみたり、絵そのものの迫力を純粋に楽しむことをおすすめしますよ!

美術史には革命的な出来事がたくさんありますが、
「顔の表情や物に頼らず、感情的な要素を色や形で直接的に表現すること」
を当たり前の価値観にしてくれたのはゴッホと言っても過言はないように思っています。
多分本人はそんな壮大な目論見なく、ナチュラルにやっていたと思いますが、だからこそ感じ取れる絵画の慟哭のようなものは実物を見てこそだと思います!

どの作品もそうですが、ゴッホの作品は実物ならではの迫力と色彩の鮮やかさがわかりやすいんです!
美術館に行ったらいろんな距離、いろんな角度から見てみてください!
ゴッホが目の前で筆を動かしながら描いている臨場感が伝わると思います!


今回はここまで!この記事が少しでもみなさまのお役に立てますように!

この記事が少しでもおもしろいと感じていただけたら、こっそりハートマークを押して行ってくださいね。(小声)

記事の感想や、リクエストなどのコメントもお待ちしています!

ではまた!

5.おまけ

お気に入りの作品を1つ紹介します!(ゴッホ展で実物がみられますよ!)

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ゴッホの《種をまく人》1888年
色やエネルギーが地面から湧き出てくる感じ  
美しい色が増殖していく感じ

ミレーの作品が印象派に影響を受けたゴッホによって、全く別の定義で生まれ変わっています。

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ミレーの《種を撒く人》1850年
躍動感が美しいこの絵は、キリストが種(信仰)を地面に振りまいている様子を暗示しているそうです。宣教師を目指していたゴッホは、聖職や宗教に高い関心を持っていました。

ゴッホが昔から大切にしているものと、流行の印象派技法、新しく見つけた自分のスタイル…
全てが合わさってゴッホがたどり着いたひとつの結論が、この作品から感じるように思います。(この作品はいつ見てもゾワゾワするお気に入りのひとつです!)

どの画家にも様々な作品がありますが、練習や研究、実験的に描いたような作品と、「これは想いが溢れ出てきてしまった!」というような完成度の高い作品があります。この作品はその中でも特に「完成度の高い作品」だと、するぞーは思っています。

今回のゴッホ展では他にもそんな想いが結実したような作品がたくさん展示してあります!ぜひその違いも感じてみてください!
きっと専門知識がなくても一作一作大きく異なるゴッホの感情がズーンと伝わってきます。妙にウキウキしたり、少し苦しくなったり筆跡からダイレクトに伝わってくる感情に、こちらの理性を保つのが難しい時もありますが、きっと素晴らしい鑑賞体験が待っていると思います!

(ここまで読んでくれたあなたは本当にいい人のはずなので、おまけにハートマーク押してください!お願いします!笑)

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