見出し画像

原生林の毎木調査~日本長期生態学研究ネットワークの会合

2023年9月に参加した原生林の毎木調査の記録を残したいと思います。

2023年9月に日本長期生態学研究ネットワーク(通常JaLTER)という、生態系を長期で観測・研究するアカデミックなネットワークの会合に参加してきました。

1日目は研究発表、2日目は調査サイトとなる原生林の毎木調査に参加しました。
いやー、大学卒業以来、おそらく初となるアカデミックな集まりに参加!
JaLTERとして、一般の方を受け入れるのは初の試みとのこと!30名くらいの参加者の中で、一般参加者は3名!毎木調査経験でいえば一般参加者で初めては自分だけ(笑)という、新鮮な体験をさせてもらいました!

偉い学者さん達ばかりで、森林も素人、修士にすらいったことない自分は場違いじゃないか?怒られたらどうしようwと不安もありましたが、皆がとても優しく、気さくな方々ばかりで楽しく、貴重な時間を過ごせました!

今回、ミリ単位で樹径を測るガチな毎木調査!
毎木調査自体初めてで面白かったので共有します


日本長期生態学研究ネットワーク (JaLTER)

JaLTER(日本長期生態学研究ネットワーク)は、長期に渡って生態系をけんきゅうしている研究者たちのボトムアップな集まり。
森林、野鳥、草原、海洋などの生物多様性のフィールドを長い時間かけて観測・調査していく人たちの集まりです。
今回の参加者は、大学の先生、森林総研の研究者さん、修士や博士課程の学生さん、ポスドクの人たちなど研究者ばかり!

参加のきっかけはサスコミュ

今回のご縁は、所属しているサステナブルコミュニティ(通称サスコミュ)のメンバーの方のお誘いでした。

その方は、学生時代に森林の生物多様性の研究をされていて、指導教官がJaLTERのメンバーの方とのこと。現在は環境系のコンサルをされていて、卒業から10年以上経ち、誘われたとのこと。

近年、産業界でも話題になっている #生物多様性 #TNFD 。研究者の方との連携が大事だよね!と言われる中、具体的にどういう活動ができるか?まずは相手のことを知ってみよう!という中で、参加してみました。
生態学と企業について、ワンセッション設けて頂きました!!

エッセンスフォーラム

偶然にも前日に、ミラツクからスピンアウト(?)したエッセンスフォーラム に参加!
「研究知を企業や社会に活かす」をテーマにした会合!
フォーラムの中で色んなセッションを聞いていたのも何かのご縁なんですかねー


カヌマ沢渓畔林


前置きはここまで。今回行ってきたところの紹介!
岩手県北上にあるカヌマ沢渓畔林試験場。
森林総合研究所(日本最大の国立の森の研究機関)が管理している原生林の森!

カヌマ沢紹介のパンフレットより


1987年から30年近く、毎年、生態系の観測をしています。
(数十年の期間で観測しないと全容が見えてこないのが、生態系の難しさなんでしょうね)

※渓畔林とは渓流沿いに繁茂する森林のこと
4.71haの広さがあり、そのうち1haは毎年、毎木調査などをしています。
今回参加したのは、この1haの毎木調査!

毎木調査ってなに?


毎木調査とは、対象となるエリアにある樹木を一本一本全て認識し、計測すること!
人の手が入っていない原生林!林道なんてものもなければ、人の手による伐採もない!
急斜面もあれば、川の水の中もある!
熊も普通に出てくる!

そんな環境で、一本ずつ、木の生態をチェックします。
直径が15cm以上の樹木は全て対象!
上に真っすぐ生えている木もあれば、地面を下に這っている木まで!
かなりの急斜面に這えている木も!

そんな中、人生初の毎木調査の一本目が超高難易度でした(笑)
チームの方から「この試験場で最も難易度が高いところの一つ」と言われた場所!

こういう斜面を登ってチェックしていきます


細くて小さいのもある

川を越えた急斜面で、木が下側に生えている!根っこから130cmのところに印があるが、地面に埋もれてて中々メジャーが入らない。
メジャーに集中していると足が滑ってズレ落ちる!

この環境で毎年観測されている研究者の方々、頭が下がります。
今回は天気も良く雨も降らず。
これを雨の中も実施するとのこと。みな、ホント凄い。。

この可愛い干支のiPadに自作のアプリが入っていて、ここにデータを入力していきます。


一本ずつマーキングしていきます。

直径15cmに育つ前も先にマーキングだけはしておくそうです。
素人にはどれが木になるかは分かりません(笑)

これは「木」ですか?「草」ですか?

裏側に胞子がある。(これは草)


推定樹齢1000年を超えるカツラの木


試験場の中には巨大なカツラの木が2本あります。
推定樹齢は1000年を超えるとか!
カツラは比較的成長が速い木で、かつ一本の木から多数の幹が生えています。

左右両方とも一つの木です。

1000年を超えるという巨木は、40本以上の幹が生えていて、それら全てを一本ずつ計測するとのこと。
研究者が4名でチームを組んでも1日がかり!とのことです。
今回の1haの区間で認識されている直径15cm以上の木は約550本。
平地に真っすぐ生えている木もあれば、急斜面にあったり、何十本も萌芽している木もある!

大変な作業ですねー。。

草と木の違い


今回の毎木調査は直径15cmなのでかなり成長した木を対象としてますが、ここでは、稚樹(ちじゅ:子供の木)、さらに地面に小さな葉っぱしかない実生(みしょう)の状態までチェックしています。

実生の木なんて、小指よりもずっと小さいサイズの葉っぱ。
草と区別できませんww


原生林なので、樹木以外にもたくさんの植物、動物がいます。
シダとかの草もあれば、キノコもいたり。


僕では、雑草と木の違いなんて全く分からないのに、
「あ、これはイタヤカエデかな?」「これはサワグルミ」なんて葉っぱが1-2枚の状態でも判別しているww
専門家の皆さんはホント凄い!


森の解像度が上がる!


これまで、風景として見ていた森の解像度がぐっと上がった気がします。
乾燥地帯が好きな木、湿ったところが好きな木。日光の陰に隠れても成長できる木。

木の種類で全然違うようです。
ここだけでも木だけで50種類以上あるとか!
僕は成木を見ても何の木か判別できませんが、周りに聞いたらすぐに答えてくれる!
森林学者さんとのトレッキング!めちゃ贅沢な時間でした。

アプリの使い方を教わっているところ

長期観測の成果で分かったこと(研究成果)


素人からするとマニアックな研究発表ですが、理解できない部分もあったけど、興味深かったです。
少し紹介。

老齢林

  • ・ある程度成長した森(老齢林)は、ある時点から炭素貯留量は一定になるはずと考えられていたけど、実は何百年の歴史のある森でも活発に成長していると。(こちら

上記のPDF
  • どの種類の木が生き残るのか?マクロ的な種別の特性(環境に応じた競争力とか)と、ミクロ的な各個体が実際に生き残ったかどうかを比較。種によっては番狂わせも多い。どれかが一強にならない。まさに多様性。弱肉強食しながら、上手いバランスを取っているのはおもしろい!(こちら

あとこちら


草原は生物多様性の宝庫!

草原って見過ごされがちだが、実は物凄い生物多様性の宝庫であり、地面の炭素貯留も多い。(長期間草原として維持してきた草原)

森林ばかりが取り沙汰されて、「草原を潰して森林にしてしまおう」なんて安易な活動もあるけど、絶滅危惧種の3割は草原にいる。

100年で9割が消失すると言われる草原。皆の認識を変えないといけない領域。

※追記:田中先生の記事

草原の研究者である田中先生に、夜遅くまで色々教えてもらいました。

とっても貴重で、有意義な時間でしたー!


※読んでいただいて、良いなと思ったら「スキ」「フォロー」をつけていただけると嬉しいです! 今後の励みになります~!


記事を読んでいただきありがとうございます!サポートしていただけると、より良い記事の励みになります!