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FARM to BARチョコレート(カカオ農園から作るチョコ)ーウガンダ Farm of Africa農園見学①

今回は、カカオ&チョコレートの話!
先月訪問したウガンダのカカオ&バニラ農園のFarm of Africaの見学について紹介したい。

まずはこの動画を紹介したい!


Farm of Africaは、ウガンダで10年来の親友夫婦が営む農園。カカオとバニラの栽培から加工までを行う会社だ。

初の農園訪問!?足の長い農業ビジネス

僕らは、ほぼ同時期にウガンダで創業しており、ウガンダでの良いところも大変なところも共有してきた同志みたいな存在。
経営上の大変なことがあれば真っ先に相談していたし、中々人に見せられない悩みも相談していた。ウガンダにいた間はしょっちゅう、家を行き来して遊んでいて公私ともに仲良くしていた。

彼らとは10年以上前からとても親しくしているのに、今回が初の農園見学なのだ!

なぜか?

2年半前にウガンダを離れたときには、まだ農園は始まったばかり!
コロナ禍も重なり、上手く予定が合わず、当時はタイミングが合わなかった。

9年くらい前に起業して、農園が始まったのは3年前!

いやー、ホント農業ビジネスは大変!その中でも栽培に年月のかかる木種を選んだ友人には尊敬しかない!
野菜や穀物(コメ、麦、大豆)でも土地を買い、開墾し、種付けから収穫まで何年もかかる!それだけでもすごい。。
その間は全く収入が入らない。。もし天災や事故があれば、さらに期間は伸びる。。

まして、カカオもバニラも木だ。種から苗を育てるのに半年。苗から木になり最初の収穫が出来るまでに3-4年!!そこから収量が伸びて安定するまでに、さらに数年がかかる。

さらに、ウガンダで、一定規模の生産に適した肥沃な土地を探すって超大変!
土地の登記簿が二重登記されていたり、土地の中に不法で住んでいる人がいたり。
※多くの国と同じく、他人の土地に不法で住んでいても、長年住んでいると、所有者ではなく居住者の権利が強くなる。大きな土地に少しでも住んでいたら農業などできない。。
土地探しの苦労話からずっと聞いていたので、今回訪問して、広大な土地に、カカオ農園、バニラ農園があり、そしてカカオ加工を見学して、ひたすら感心していた。

彼らも自分の土地の作物が育つまでずっと待っていたわけではなく、カカオやバニラを買い取り加工して輸出して、繋いでいたわけだけど、、
それでも、法人登記から始まり、土地探し、土地の購入、開墾、種植え、栽培、収穫まで7-8年かかっているのではないか。。

投資から回収までめちゃ長いキャッシュフロー!!
文字通り、人生を賭けて取り組む事業。。

そして、今回見学して痛感したけど、カカオとバニラは他の農産物と比べても栽培が超大変。
さらに、加工も物凄い労力と繊細なプロセスが求められる。

彼らのように、汎用品ではなく、丁寧に作られたファインカカオやバニラとして出荷するには、緻密な生産管理が必要になる。

カカオもバニラも発酵食品。工業製品の品質管理も大変だけど、生き物を伴う生産(微生物による発酵)。
天候にも左右されるし、温度や湿度管理も大変。原料となるカカオポットもバニラ鞘も植物なので大きさも条件も異なる。

それを加味して加工条件を変えて品質を高めていく。。。
これをウガンダのスタッフに根気強く伝えていく。。
※ウガンダ産のローカルのものと差別化するには、この丁寧なオペレーションをどれだけ徹底できるか。

投資回収の長い(それだけリスクの高い)事業であることも、綿密なオペレーション工程を作り上げることも、、
それを始めて、やり遂げて、続けていることも、、、ホント尊敬しかない、、、!

そんな二人の姿を見ていて、とても誇らしくなりました!

前置きが長くなったのだけど、カカオの栽培と加工、バニラの栽培と加工を素人の僕が見てきた目線で紹介したいと思う。

こちら、Farm of Africaのウエブサイト

※タイトルにFARM to BARと書いていますが、Farm of Africaでは、自社でチョコレートは製造・販売していない。
10年くらい前に、Bean to Bar(ビーン・トゥー・バー)という言葉が流行った。

Bean to Bar(ビーントゥバー)とは、カカオ豆からチョコレートバーになるまで一貫して製造を行うこと。安価で大量生産されていたチョコレートの製造を見直し、下記の製造工程を自社で行う。産地ごとに異なるカカオ豆を使用し、さらにオリジナルの製法で販売することにより、他社と差別化されたおいしいチョコレートを生み出すことができる。

生産者と直接取引することから、顔の見える透明性が確保され、公正な取引(フェアトレード)の一種と捉えられる。

Farm to Barは、さらに上流のサプライチェーンまで巻き込んで、カカオ農園でカカオ作りからチョコまでを一貫して作るスタイルのこと。
Farm of Africaでは、基本的にはカカオの状態でB向けに卸している。ただ、少量は作れるわけで、今回、サンプル用に作ったチョコも食べたので、私個人としてはFarm to Barを体験させてもらった。

カカオの栽培から加工まで

では、ここからはカカオ豆の栽培から、収穫、加工してチョコになるまでの流れを追っていく。

まずは全体的な流れから抑えよう

  1. カカオ栽培

  2. 収穫

  3. カカオの実を取り出す

  4. 発酵

  5. 乾燥(一次乾燥・二次乾燥)、選別

  6. 皮むき(※今回のケース)

この時点で、生のローストしていないホールのカカオニブが出来上がる。

どういう状態のカカオで卸すか?により、乾燥より先のプロセスは変わる。
また、この先の工程は、チョコレートの用途、消費国による違い、職人の好みなどにより分かれる。

7.焙煎
(ここで皮むきが入るのが一般的)
8. 粉砕
9. 送風

ここからはチョコレートづくり。

10.混合
11.磨砕(グラインディング:すりつぶし)
12.精錬(コンチング:練り)
13.エイジング(寝かす)
14.温度調整(テンパリング)
15.成型(型に流し込む)

今回、後半の10番以降はFarm of Africaではやっていないし見ていない。
ここはBean to Barのワークショップとかでも体験できるし、調べると色々な記事が出ているので興味ある人は見て頂きたい。

この記事では、現地でしか体験できない前半を中心に紹介する。

0.栽培の前に、、、

栽培に入る前に、カカオってどんな植物か見て行きたい。
原産地は熱帯アメリカ。今から4000年前ほどから使われ始めた。
最初は貴重性から通貨として使われていた。その後、コロンブスがアメリカ大陸からスペインへ持ち帰り、砂糖を加えてチョコレートとして加工された。

その後、チョコレートだけでなく、ココア(飲み物)としての楽しみ方もでて、世界中に広がる。
今ではアフリカ諸国が大きな生産地になっているが、それは1800年代に病害により生産が激減し、アフリカに移った。


1.カカオ栽培

カカオを育てる為に必要な環境は、赤道に近い年間の平均気温が27度程度の高温多湿な場所で、通称「カカオベルト」と呼ぶ。赤道の南北20度、いわゆる亜熱帯の地域となる。
さらに、高度30〜300mで、年間の気温差が小さく、年間降水量は1000mm以上の地域がカカオ栽培に適した地域となる。
※ちなみにコーヒーベルトは赤道の南北25度。カカオよりは少し広いがほぼ同じ場所だ。

暑い所で育つので、強い太陽の日差しが必要なように思うが逆だ。カカオは光に敏感で影がないと実がつかない。
そのため、通常、背の高い木の日陰の下で栽培する。他の森林やバナナなどの果樹が適する。ウガンダの場合は主食である「甘くないバナナ」=マトケを使う場合が多い。
※ベトナムだとカシューナッツを使うようだ。

カカオが面白いのは、花や果実が幹や大枝から直接的に生育することだ。
調べると、植物学的には「カリフラワー」というらしく、パパイヤ、ジャックフルーツなどが同じなようだ。

幹から飛び出して小さい実をつける。

他の果樹と同じく、種を小さなポットにいれて、苗を育てていく。
葉っぱがつくまでに6か月くらいかかる。

そこから、苗を農園に移して木として育てていく。

2.収穫

カカオの樹は大人の木になると高さ6〜7m、幹の太さは10〜20cmまで大きくなる。苗から育てた場合、3〜4年でやっと実をつける。そこから収穫量が上がるにはさらに数年が必要だ。

こうやって実が育つ

カカオの実は年に2回収穫できる。カカオの実は「カカオポット」と呼ばれる。生育すると重さ300-500gほどになる。

成長するとこの大きさに

一本の樹に平均20〜30個の実がつき、色は緑、黄、オレンジ色など種類によって異なる。上の写真で緑や赤などあるが、種類の違いだ。

収穫したカカオポット

3.カカオの実を取り出す

カカオの実は、1cmの厚さの堅い殻に覆われていて、その中に白くぬるぬるした甘酸っぱい果肉(パルプ)がある。

カカオポットを割ると中に果肉がある

木から取ったカカオポットは、硬い殻に覆われており、それ自体はすぐに腐敗は起きない。
しかし、開けて空気に触れた瞬間から腐敗が始まる。

ちなみに、このパルプ自体は舐めると甘くて美味しいフルーツだ。
ライチっぽい味で癖になる。噛み砕くとカカオの実が割れて苦くて不味いが、舐めてる分には美味い。

4.発酵

ファインカカオと呼ばれる質の高いカカオは、この殻を開けてからすぐに適切な発酵環境に入れる必要がある。
カカオ、チョコレートの品質を決めるのは、この発酵のプロセスだ。

木箱やプラスチックの箱にいれて発酵させる。地域や温度による差はあるが、だいたい6-7日かけてじっくり発酵させていく。
単に放置する場合もあるが、高品質なカカオを作るには、一日に何度も温度を測り発酵状態を確認する。

発酵中のカカオ豆

最初は嫌気性の発酵条件を整え、後半は好気性の発酵に移していく。途中から一気に温度が上がっていく。温度が低いと発酵しない。逆に温度が高すぎると、せっかくのカカオのフレーバーが消えてしまう。
ここの温度・湿度を通した発酵管理が肝となる。

発酵とは微生物を使った生物プロセスだ。腐敗と紙一重である。ここで管理を誤ると、カビが生える。カビが生えたら高品質なカカオとしては販売できない。とても繊細な管理が求められる。

現在では、カカオの発酵の技術も色々な研究が進んでいるらしい。

イマイチなのは取り除く

※安価な大衆のチョコレート用のカカオは、殻を開けて数日放置したものなども普通らしい。。腐敗に近い環境で期間も短いまま、未熟な発酵のまま乾燥させているものも多いらしい。
適切に発酵していないカカオ豆では不味いし苦いし、食べることはできない。それにpH調整や化学調味料をいれて、食べられるカカオにしていく。

5.乾燥(一次乾燥・二次乾燥)、選別

発酵が終わったカカオ豆は、水分量の多い茶色の豆となる。
発酵後のカカオ豆は僕らのイメージするカカオ豆の見た目になる。

とはいえ、発酵が終わったばかりの豆は湿り気が多いので、このまま放置すると、カビが生えてしまう。
カビが生えないように、頻繁にひっくり返して注意しながら乾燥させていく。

ある程度水分が抜けたら、別の場所で乾燥(2次乾燥)させていく。

この段階で、割れている豆などは弾いていく。発酵時に割れた隙間から菌が入っている可能性があるからだ。

乾燥と選別

また、この後の工程にもよるが、小さいサイズの豆も弾いていく。
日本の場合は、ホールのまま焙煎して、その後に砕く。サイズの小さい豆が混じると焙煎の時に火が入りすぎてしまい、バラツキが出る。
砕いた後に焙煎する国もあるので、その場合は小さいサイズでも問題ない。

Farm of Africaのカカオが、世界的にも特別なのは、ここの菌の管理が非常に優れているからだ。

通常、チョコとして使うカカオ豆は多少の菌が残っていても問題ない。後で焙煎で熱を加えて滅菌するためだ。
しかし、Farm of Africaのカカオは、優れた管理をしており、生のカカオ豆(未焙煎)でも菌が非常に少ない。生のカカオ豆で食用レベルなのは世界でも非常に珍しいとのこと。
焙煎しなくても生のカカオ豆として加工できるのがFarm of Africaの強みとのことだ

ここで無菌で適切に乾燥さえさえれば、常温で長期間保存しても問題ない。

6.皮むき(※今回のケース)

ここからは、作り方により異なる。
通常は上で書いたように、皮むきせずに焙煎して、その後に砕く。
皮と一緒に砕いてしまえば、風を送ることで軽い皮は飛ばされて砕いた実だけが残る。

上記の7.焙煎、8.粉砕、9.送風はこの工程にあたる。

しかし、Farm of Africaの場合は、生のホールのカカオ豆を出荷する。
そのため、ここで皮むきをする。

砕いてしまえば、機械で送風して皮を飛ばせるが、ホールのままでは無理だ。人の手が必要になる。
地道に一つずつナイフで豆の皮を剥いていく。

ナイフで丁寧に剥いていく

職人技で慣れれば一つ数秒で剥けるのだが、、僕がやったら40秒もかかった。。これを一粒ずつ行う。とても地道な作業だ。

皮を取り除いた状態をカカオニブと呼ぶ。
※焙煎してから砕いて皮を飛ばしたものは、砕いたカカオニブ。

10-15のチョコレートづくりの工程

チョコレートづくりの工程は、見ていないので省略する。

残りは以下のサイトなどで見て頂きたいが、一言ずつ説明する。

10.混合:カカオマス、砂糖、カカオバター、乳製品などを混ぜる。(カカオマスはカカオニブをすりつぶしたもの。ニブの成分の半分はカカオバターなのですりつぶすとペースト状になる)

11.磨砕(グラインディング:すりつぶし):20ミクロンくらいまで超細かくすり潰す。ここまで細かくすると舌触りが滑らかになる。

12.精錬(コンチング:練り):長時間練っていく。この工程で舌触りの良いチョコになる。

13.エイジング(寝かす)

14.温度調整(テンパリング):冷やす前にここの温度調整が大事になる。温度調整しながら攪拌することでチョコレートの脂肪分が安定し光沢が出る。

15.成型(型に流し込む)

最後:ファインカカオ・スペシャリティカカオとは?

Farm of Africaのカカオは、収穫、発酵から乾燥、皮むきに至るまで非常に丁寧なプロセスで作られている。

一般の安いスーパーに並ぶチョコレートのカカオはここまでしていない。ここまで丁寧に作っていては、あの値段でチョコは食べられない。

この丁寧に作ったカカオをファインカカオまたはスペシャリティカカオと呼び、コモディティカカオと比較して、高品質で取引価格も高い。細部にこだわって作られたカカオのことだ。

国際ココア機構(ICCO)によると、Ultrapremium fine(超高品質)とfine(高品質)を合わせても、カカオ生産量の全体の6%にしかならない

上記で発酵が非常に大事と述べた。
以前にコモディティのカカオ豆を食べたことがあるが、苦くて食べられたものではない。
しかし、Farm of Africaのカカオは、カカオ豆のままだけでもめちゃ美味しい。もちろん、チョコではなく砂糖も入っていないので甘くはない。甘くはないのだが、フルーティーな酸味もあり美味しいのだ。

この香味成分は加熱処理によりメイラード反応が関係している。
メイラード反応には、糖分とアミノ酸が必要だ。適切に発酵していないカカオ豆は、糖分もアミノ酸も少ないため、加熱してもメイラード反応が起きない。チョコレートの香りは生まれない。

さて、今回はカカオの栽培から加工についてを紹介した。
時間があったら、バニラについても紹介したい。

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