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東京の中心で森林浴!?~近場の自然から生物多様性に触れる

2023年11月に参加した、大手町の樹木をみる会!
樹木について知りたいけど、「時間かけて地方や郊外に行かないと見れないんでしょ?」って思っているあなた!

全然そんなことない!

東京のど真ん中、大丸有エリア(大手町、丸の内、有楽町)エリアにも多様な樹木生態が作られていて、めちゃくちゃ学びになったので、共有致します。

エコッツェリア協会のイベント

このイベントは大手町の3×3Labを運営するエコッツェリア協会が企画のイベント。

講師は樹木医の石井誠治さん。初めてお話聞いたけど、めっちゃマニアックで好きな会でした!
外気温6度。小雨の降る大手町・丸の内エリアを2時間歩き、実際に木々を見ながら聞く会!

石井先生はこんな本も書かれています。


多様な樹木が育つ大都会、大手町・丸の内・有楽町

まず驚いたのが、これだけ多様な樹木が生育されていることです。

9月に原生林保護のサイト(日本森林総研が管理する岩手県のカヌマ沢)に訪れていますが、その時に見てきたのと同じ種類の樹々が多く生育されています。(ホウノキ、ミズナラ、カエデ各種、クヌギ、コナラ、コシアブラ(キズタ)などなど)

特に、大手町の森がスゴイです!(後述)

大丸有エリアで見られる冬の生き物

※9月の原生林の毎木調査の記事はこちら

さらに、ヨーロッパから輸入したオリーブの木、アメリカから明治に持ってきたユリノキ(半纏木)なども見られました。


以下で印象に残った点をいくつか紹介します!

環境に適応する樹木たち

乾燥耐性から寒さ耐性を得た落葉樹と紅葉

常に葉っぱをつけている常緑樹は寒さに弱い。
熱帯地域は落葉する必要がないので常緑樹ばかり。

しかし熱帯地域でも乾季が長く、乾燥がある地域では落葉樹となる。
常に葉っぱがあると水分が蒸発するため、水を節約するために葉っぱを落とすのが落葉樹。

葉っぱを落とすことで乾燥耐性を得た樹木が北上していく中で、寒さ耐性にも応用できた。
寒くなると葉っぱを落としてエネルギー消費を抑える。紅葉とは秋になり葉っぱを枯らせて落ち葉にする現象。

冬に雪の中で耐える常緑樹

なので、一般的に常緑樹は厳しい冬の世界では生育しない。
ただし、常緑樹の中でも、秋田や山形で生きているものがある。枝がしなるように進化し、雪の中に埋もれる。

水は凍ると膨張する。常緑樹は膨張して細胞が壊れて死んでしまう。
しかし、雪の中で、0度で湿度100%の環境で冬を耐え忍ぶ常緑樹もいる。笹とかアオキ。雪椿とは雪に順応した椿である。

大島桜

日本にある野生の桜は10種類程度。ヤマ桜(吉野桜)を筆頭に、霞桜、江戸彼岸、大島桜など。

この中で大島桜は氷河期時代に、伊豆諸島と本州が繋がっていた時に、本州から伊豆諸島(大島など)に陸伝いに伝わった桜。

海面が上昇して、島に取り残された多くの桜は、強い風など環境に適応できずに死に廃れるが、残ったのが大島桜。枝が下がっていてしなやか強風にも強い桜。

紅葉の早い木と遅い木


街路樹にあるイチョウの木。
同じ場所に植えても早く紅葉する木と遅い木がある。

イメージと逆で、生育が早い木は早く紅葉するのだとか。
日当たりがよく、早く育つと葉っぱが多くつく。葉っぱが多いと水も多く蒸発するので、先に紅葉して枯れやすいからだ。

逆に育ちが遅いと、水ストレスが低く、枯れずに緑のまま。


ライトアップされた街路樹

ライトの影響で街灯の光が当たる部分だけ、緑になり紅葉が遅れる。ライトに影響されて遅くなる。
これを批判する人もいるが、遅くなるといっても1週間程度。生理現象としては微々たるもの。

熊が人里に降りてきたワケ

高度経済成長で、森林から木質バイオマス燃料を採らずに石油燃料で賄うことになり、森林密度が増えている日本。
ミズナラ、コナラ、クヌギという良質な落葉樹の炭や薪を使わなくなった。

常緑樹は葉っぱにエネルギーを溜めているが、落葉樹は樹体内にエネルギーを蓄えている。
これまで、コナラやクヌギなどの落葉樹は燃料に使われたので、大きく育ち高齢樹になることは少なかった。近年高齢樹が増えたことで問題になっているのがにカシナガキクイムシという木を食べる虫。

大手町の森

#カシナガキクイムシ

この虫は若くて細い木には住みつけない。高齢樹なら住みつける。この虫が高齢の木に住み着いて1シーズンで枯らしてしまう事例が増えている。

2000年代に日本海側でカシナガキクイムシが増えてミズナラの木が大きな被害を受けて一気に減少した。

本州にいるツキノワグマなどは草食の熊で、どんぐりの実などを食べている。秋にたくさんのどんぐりで栄養を取り冬眠して冬を越す。
しかし、ミズナラの木が減りどんぐりが減ると熊は困る。

この頃、秋田や山形では限界集落で、元々人間が住んでいた場所が減っていった。
そこには人間が育ててきた柿や栗の木がある。熊にしてみれば、小さいドングリを食べるよりも、柿や栗を食べた方が大きくて栄養もある。
それで栄養を付けた熊が冬眠して、多くの子熊を生んだ。

現在、柿や栗の味を覚えた熊達は、人里に降りてきて、人間と接触する機会が増えている。。
※ちなみに、人間を食べる肉食の熊は、北海道のヒグマなど。本州は草食メインの熊の方が多い。

同じ問題が、「大手町の森」に起こっているという。
大手町のビル群のど真ん中に広がる、豊かな森林地帯!
大手町タワーの敷地面積の1/3となる3600m2の広大な敷地だ。

2023年で10年を迎えた大手町の森。ここに生える落葉樹も使われない。
カシナガキクイムシによる被害が出始めているようだ。


丸ビルにある大きな松の木

丸ビルの中に、大きな松の木が展示されているのをご存じだろうか?

現在の丸ビルは2000年付近に立て直したもの。それ以前の旧丸ビルの話。
明治時代の東京駅周辺は、三菱村と呼ばれ田舎。30駅前後の山手線の駅の中で東京駅は25番目くらいとかなり遅い。

丸ビル1階にあるレプリカ

大正3年にレンガ造りの東京駅が建設される。当時は丸の内側のみ。八重洲側は皇居のお堀で町はない。
10年後に関東大震災で煉瓦造りの東京駅は倒壊。その瓦礫が行幸通りを進んだ皇居側のお堀の埋め立て資材に使われた。

この辺りは元は海の埋め立て地。日比谷の入り江で軟弱地盤。
1923年当時、軟弱地盤に高い建物を建てる技術は乏しく、土台としてアメリカから5400本以上の大量の松の木を輸入した。

松杭の説明

樹齢200年越えの松の木を地中に埋め込んで土台とした。
丸ビル1階の地面に展示されている大きな松はその時の名残の1本。2000年に現在の丸ビルを作る時に残したもの。

土中から出てきた柱を保存したもの

軟弱基盤に大木を埋めるのは世界各地にある。
イタリアの水の都のベネチア。湿地帯に作った街。ヨーロッパのアカマツを大量に使ってルネサンスの建築の土台を作っている。

実は歴史の深いアメリカ大陸


アメリカ大陸は、大陸としては日本列島よりもずっと古い歴史がある。(アメリカ合衆国の歴史は短いけど大陸自体の歴史)
そのため、針葉樹の種類も豊富。日本は五葉松か二葉松が多い。アメリカは三葉松。
ヨセミテ国立公園あたりにはポールに使われる長い松の木も多いとのこと。

日本を代表する不動産デベロッパーによる共催

ちなみに今回のイベントは、東京建物、三井不動産、三井物産、三菱地所という日本を代表する不動産デベなどがスポンサーし、エコッツェリア協会によるイベントでした。

丸の内という都市にこれだけの自然を遺すように努力してくれている方々に感謝です!

大都会東京のど真ん中でも、これだけ多様な樹木、森林に出会えるのですね。
もちろん、田舎や郊外の広大な森林に行くのも良いですが、そんな時間がなくても、こんなに近場から触れ合うこともできます。
近場にふらっと立ち寄って興味を持つことから始めてみませんか?
身近な自然の魅力に目を向けると、新しい発見と感動があるはずです。

自分で訪れても良いし、エコッツェリア協会が頻繁に主催しているシゼンノコパンに参加してみるのも良いかもですー(今回のイベントのこちらのシゼンノコパンでした)

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