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近年屈指のメシ映画 仕掛人・藤枝梅安

トヨエツが仕掛人をやると聞いて、「これは観に行かなければいけない!!」と意気込んでいたら、年度末の忙しさに飲み込まれ、気づいたら一が上映終了…。何とか二には間に合い、観てきました。


トヨエツの藤枝梅安は思っていた以上に似合っていました。トヨエツの喋り方が冷静さ、落ち着きを伴っていて、妻子の復讐で後先が見えなくなっている彦次郎を諌めるところにバチンとハマっていました。その上で

「仕掛けを受けてきた…。手伝ってくれるね?」

トヨエツ梅安、素晴らしい!!


敵役の佐藤浩市さん、椎名桔平さんも良かったです。

梅安の仕掛けを半十郎が暖簾を刀でめくって覗く一連のシークエンスは画面のルックの美しさと佐藤浩市さんとトヨエツの表情が合わさり、鳥肌が立ちました。やっぱり、必殺シリーズは光と影を使った美しい画作りが魅力の一つです。今作は影を使った演出は少なかったものの、光を取り入れた明るい中での画作りは見事でした。

「あんたほどの侍を、仕掛人なんかにして悪かった。」

梅安と半十郎の決着の場面でトヨエツが言ったセリフです。仕掛人の後ろめたさを見事に表現している名台詞だと思います。

椎名桔平さんはネジが何本か飛んでいってしまった狂人ド畜生を見事に演じていました。回想シーンで彦次郎を見る眼。仕掛けの対象として申し分なしです。決着の付け方ですら、あれでもまだ甘いと思うくらい憎々しい悪役でした。

そして、一ノ瀬颯さんが素晴らしい!全く知らなかった役者さんでしたが、冒頭の登場シーンから佐藤浩市さんでなければ止められない危うさを醸し出していましたし、中盤の殺陣では二刀流で流れるような刀捌きを披露。時代劇でまた観たいと思える俳優さんでした。一ノ瀬さん主演で岡田以蔵とかどうですか?

と、見どころが多く、もともとパチンコや再放送で必殺シリーズに親しみがあったこともあり、とても楽しめた映画でした。

しかし、この映画で最も印象に残っているのは、ハゼの煮込みと卵かけご飯と焼きおにぎりです。

京都から江戸に戻り、高畑淳子さん(高畑さんもめちゃくちゃよかった。張り詰めた空気を一瞬で和ませて日常に戻してくれる近所のおばさん感が画面から伝わってきました。)から出されたハゼの煮込みをトヨエツが手掴みで食べるシーン。ハゼが黒くなるまで煮詰めて骨まで丸ごと食べるトヨエツ。そのハゼの美味しそうなことと言ったらないです。トヨエツもまた美味そうに食べる食べる。別になくてもいいシーンだったかもしれませんが、確か3、4匹食べるところをじっくりと観ることが出来ます。

半十郎の襲来に備えて、診療所で待ち構える梅安と彦次郎。屋根裏の彦次郎に向かって、「俺はご飯に卵と醤油をかけて食うよ。」ザルには卵が何個か用意されており、大きめの茶碗に盛られたご飯に卵と醤油をかけて食べるトヨエツ。またこれもすごく美味そうに食べていました。対して彦次郎は、俺はこれだ、と言わんばかりに焼きおにぎりを取り出して頬張る。シンプルだけど美味そう。最後になるかもしれない食事が互いにシンプルだけど、とても美味そうに食べていました。

この映画を観ると、シンプルな日本食を食べたくなります。ここまで食事が美味そうに感じる映画はほとんど見たことがありません。

さて、映画を観た後、ぼんやりと公式YouTubeを見ていたら、日本料理の分とく山の総料理長さんが料理を作ってくれていたとのこと。すごい力の入れようです。その結果、仕掛人・藤枝梅安は屈指のメシ映画として公開されることになりました。シンプルな日本料理の魅力をご堪能あれ。



彦さん、俺はこれから毎日の食事をもっと味わって食うよ。

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