見出し画像

2021年に読んだ100冊からの1冊レビュー

2021年に読んだ本から1冊レビューをしようかなと。

今さら「2021年」を振り返ると言うのは、そもそも2021年の読書が不作だったという理由(言い訳)があり……。

それでもなかには印象的な本もあります。今回は、2021年の皮切りとなった1冊を紹介します。

エドワード・ホッパーにインスピレーション『短編画廊 絵から生まれた17の物語』

紹介するのは2019年にハーパーコリンズ・ジャパンより発行、ローレンス・ブロック編著による短編集『短編画廊 絵から生まれた17の物語』。

3つのポイントで紹介すると……

  1. アメリカの画家、エドワード・ホッパーの絵が18点フルカラーで

  2. 絵からインスピレーションを受けた短編集

  3. 17人の海外作家、12人の翻訳による豊富なラインナップ

良いところ1「エドワード・ホッパーの絵が18点フルカラーで」

アート好きな私たちBIRTH VERSE BERTHとしては、まずこの本はアメリカの画家、エドワード・ホッパーの絵が18点フルカラーで載っているところを第一に挙げたいと思います。

ホッパーで有名なのは『ナイトホークス』でしょうか。

私も『ナイトホークス』は知ってますが、あと知ってるのは他数点という感じ(…)。
なので、ほとんど知らない状態。

一冊から18点も見られると、ちょっとした「ホッパー展」を歩くような感覚にもなります。
適当にパラッとめくりながらお気に入りを探すのも楽しい。

良いところ2「絵からインスピレーションを受けた短編集」

そして、その絵からインスピレーションを受けた短編が載っています。

絵の説明をしているわけではないんですが、キャプション(長め)の代わりになる。

ホッパーの絵って、スナップ写真みたいな雰囲気もあるから、ともすると、さらっと見流してしまいそう。

それが、物語になっていることで、絵と向き合う時間も長くなり、ちょっと印象深くなるのは良いですね。

良いところ3「17人の海外作家、12人の翻訳による豊富なラインナップ」

しかも、その短編の作者はそれぞれ違う。

そのラインナップはスティーブン・キングやジェフリー・ディーヴァーといった有名作家も含む17人。翻訳者も12人います。

なので、アラカルトで、知っている作家、知らない作家の作品を読み漁れて、自分のお気に入りを知れるという一冊です。

気に入った作品「夜のオフィスで」(ウォーレン・ムーア作)

そのなかで私が気に入ったのを選ぶと「夜のオフィスで」。

テネシー州グリーンズバーグからニューヨークにやってきた女性、マーガレット。
彼女はすでに死んでいる。
田舎町の“ラージ・マージ”(181.2cmの彼女を揶揄するあだ名)でなくなるために、街に出た。お金もなく、街のルールも知らず。ようやく就職できた、小さな弁護士事務所で半年ほど働き、そして死んだ。ドラマチックなことはない。
その彼女が勤めていた弁護士事務所に赴く。そこには彼女が淡い思いを抱いていた上司がいる。彼女は彼が書類を探す様子を見ながら――

そんな、20ページほどしかない話。

何が印象深いかって、この絵(OFFICE AT NIGHT)の女性は確かに、顔が異様に白いんです。なるほど、そっか。これはすでに死んだ者の顔色かも。

亡くなってしまった秘書と上司と、小さなオフィス。そこからの小品として、いい空気感なんですよね。開いた窓から、ちょっとだけドライな風が吹く感じ。
その風の温度や湿度が、なんか好きです。

でも、残念なポイント

でも、本としては、私は3つ星になっちゃうんです。

つまり、まあ普通。

この本、全480ページあって結構厚い。そのなかで17人が書く。短編とは言え、結構、長距離走です。
しかも、好みの話もあれば、別にというものもある。後者のほうが個人的には多く、ちょっと「人に読んでもらいたい」とまで思えなかった。
人にレビューするための星ではないんですが、私自身、読み返したいというポイントには欠けていました。

ホッパーの絵は好きだけれど、本でなくても読める。

というわけで、ホッパーの絵も、海外作家も、様々なストーリーも、それぞれつまみ食いできる本ですかね。

決してわるいわけじゃない。印象にも残りました。
実際、このシリーズ、続編も出ていて『短編回廊 アートから生まれた17の物語』というものもあります。

もし、興味が湧いた方はどうぞ。

2020年に読んだ100冊からの一冊レビューは以下より


この記事が参加している募集

読書感想文

海外文学のススメ

よろしければサポートお願いします!いただいたサポートは、活動費や応援するクリエイターやニッチカルチャーハンターへの支援に充てたいと思います!