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イヴ・サンローラン展に行ってきた話

イヴ・サンローランといえば

イヴ・サンローランといえば私の中の印象はYSLな感じのデパコスで、コンパクトが綺麗でリップの発色がめちゃくちゃ綺麗なところだ。
そういえば服飾もやっているらしいという話も聞いたことある気がする。なんかYouTubeでみた。

そんな印象を持って、イヴ・サンローラン展に出かけてきた。

私は服飾やらオートクチュールの歴史というものにはさっぱりで、でもオートクチュールの文化や世界観というものには大いに憧れる。
そんな、オートクチュールの世界にイヴ・サンローランという人はいたということがわかった。
なんならDiorのクリスチャン・ディオールにスカウトされて初めはDiorに入ったらしい。そこで働いていたがまさかのクリスチャン・ディオールが急死、Diorの主任デザイナーに抜擢されてしまう。それが21歳の話。その後独立して自分のメゾンであるイヴ・サンローランを立ち上げた…………………という来歴。
かなり才能ある人だった。

イヴ・サンローランのデザインした服

そんな人のデザインした服はどんな感じかと思って見てみると。
例えば金ボタンのPコートにパンツを合わせたスタイルやレディース用のスーツなどが初めにあった。これを見た時に「今これらのデザインは世にたくさんある!」と思ったのでもしかするとここが発祥かもしれない。防寒服を女性用にアレンジしたデザインだったらしい。
他にもサファリでよく見る4つポケットがついたジャケットやら、襟の大きなジャケットスーツなどもあった。時代的に働く女性が増えていたことがなんとなく伺えた。

次にイブニングドレスというジャンルの服を見た。
本当に無知ですまないけどこれは晩餐会とか夜会用の女性用ドレスらしい。
初めに目に止まったドレスはさっぱりとした黒地にAラインがすらっとひろがり、スカートになってる部分に赤い薔薇がたくさん描かれている。描かれていると思った。
近寄ったらそれは描かれているのではなく、全てビーズ刺繍だった!!しかも花弁はもはやビーズを縫い付けるのではなく揺れるパーツになっていて、これは歩くと綺麗に揺れたことだろう。
このドレスを見た瞬間に、こんなに自由に何の成約もなくデザインを形にできる世界があるのか!と私は衝撃を受けてしまった。そのまましばらく固まってずっとドレスを見ていた。今回の展覧会のお気に入りの一つだ。
他にもイブニングドレスはたくさんあった。
まさしくセレブが着るような首まわりにふわふわがすごいボリュームでついたドレス、ハロウィンで着るのかと思うくらい奇抜なドレス、華奢な人が着たらもうそれはみんな釘付けになってしまうくらいに背中が清楚にあいたドレス‥などなど。
すごくたくさんのドレスを見られて目がまわるくらいだった。


服が形になるまで

一方で今回の展覧会には服がどうやって形になるのかという過程も展示されていた。
イヴ・サンローランの場合は初めにスケッチがあり、その中から選んでバイブルを作る。ここで初めて仕様とか使う布を決めて作って行って、最後に発表するコレクションを台割みたいなのに纏めていた。
先ほど「なんと自由な」などと私は思ったけど、これをみるときちんと仕事だった
私のイメージだと、すごいデザイナーさんというのはもうスケッチの時点から浮かび上がったものを繊細に紙に書き写しているイメージだったけど、今回は違うようだった。
スケッチは名の通りスケッチでシンプルに型を描いているイメージ。そこからバイブルで布や仕様を決めて初めて肉付けされるイメージだ。
でもバイブルに描かれたデザインも進化はしているけどごちゃごちゃはしていない。つまり、イヴ・サンローランは自分の持つ服のイメージを伝えるのがめちゃくちゃ上手い人だったし、実際に手を動かして作る技術職の人もめちゃくちゃ上手い人だったんだろうということが伺えた。

私が感じるイヴ・サンローランのこだわり

イヴ・サンローランがたくさんの服を作っていたのはよくわかったが、その中でも私が気になったのは2点ある。

まずは、ジャケットの脇腹のラインだ。脇腹に切り替えラインが入っているとウエストがキュッと細く見えて、女らしさが控えめながらしっかり主張されるようになっている。ここへのこだわりがすごかった。
例えば刺繍で草木模様みたいな柄のジャケットがあった。模様を組み合わせた総柄なのに、しっかりその脇腹のラインで模様が小さくなって切り替えの役割を果たしている。
もう一つ例をあげるとゴッホを尊敬して作ったジャケットがあった。これは総ビーズ刺繍で600時間以上かかる超大作だったみたいだ。ビーズでゴッホの筆跡を表しているもうすごい服なのだが、これも脇腹のラインに沿うように草木が刺繍されていた。
よく見ないと全く気がつかないけど、一度見つけてしまうと探したくなるこだわりのポイントだと感じた。

そしてもう一つ気になったのはランウェイの写真や映像を見た時のことだ。
映像や写真がカラーになるにつれて、メゾンのあったパリの人だけではない多様な人種をモデルに起用しているのがわかる。
でも写真を見ると1990年代などと書いてある。もう今から30年は前の話だ。
今こんなに世界が躍起になっているのに、イヴ・サンローランはもうそれよりずっと前から多様な人種をモデルに起用していたらしい。
これは私はすごいことだと思った。
イヴ・サンローランは今世界が思うよりもずっと前から服は誰が着たって美しく自分を表現できるということを知っていて、実現していたのだろう。

最後に

今回イヴ・サンローランのことをよく知りもせずに行ったけど、本当に収穫の多い展覧会だと思った。
さして服飾知識のない私でも美しいと感じられるデザインがたくさんあったし、知識としての学びもたくさん得られた。
そして遺した言葉にこんな言葉があった。

ファッションは廃れてしまうが、スタイルは永遠だ

イヴ・サンローラン

まあその通りで、初めに書いたPコートスタイルやスーツスタイルをはじめとして、現代のレディースの服に今もなお受け継がれているだろうと思われるものは多い。(本当に歴史に疎くてごめんなさい)
それをすでにわかっていてたくさんのデザインを残したこのイヴ・サンローランという人はかなり偉大な人なんだろうな、と思った。

イヴ・サンローラン展は東京都代々木にある国立新美術館にて、2023年12月11日(月)まで開催中だ。
今回のnoteでは語りきれなかった羽や舞台衣装なんかもあるので、お時間のある方は是非。

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