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松本千秋さん×SYOさんトークイベント付き試写会実施!映画『ほつれる』

SYOさん(映画ライター)と松本千秋さん(漫画家)

本作『ほつれる』を観て・・・

試写会上映後、漫画家の松本千秋と映画ライターのSYOが登壇しトークイベントが開催。
東京在住のさまざまな人間模様が描かれる「トーキョーカモフラージュアワー」などで男女のリアルなやり取りを描き共感を集める、漫画家の松本千秋は、まず映画について「主人公の綿子が何を考えていたんだろうと謎に包まれたまま見終えたのが、初めて見た時の感想で、今皆さんがそういう状態なんだと思います。(笑)でも二回三回と見返すことで色々な台詞の繋がりに気付かされた映画」と振り返り、
映画ライターのSYOは「常に繕ったり仮面をつけたり、虚飾がだんだん剝がれていく主人公が面白い。共感するよりもむしろ“箱庭”を見ている感じ。いい生活をしている人たちが些細なミスからどんどん崩れていく過程を見ている自分に気づかされる、自分自身が画面に映る感覚。画面に映る小物だったり、部屋だったりから、登場人物がどういう生活を望んでいて他人にどう見られたいのか、への統一感が凄い。こういう“層”の人と思ってみてしまう自分もいて、自分が他人に対してランク付けしていることに気づかされる」と初見時の印象を語った。

誰に焦点を当てるかで印象がかなり変わる映画。

松本は劇中描かれる綿子と文則の“冷めきった夫婦関係”について「文則への愛が冷めいても、綿子は今の恵まれた生活を捨てるのはちょっと・・・と思わせる部屋で、文則はその部分を強みに変えることで、俺といればもっといい生活が送れるということを暗に匂わせている。
深読みしすぎかもしれませんが、文則は文則でいままで色々な人と浮名を流して離婚を経験して、そろそろ離婚するにはカッコ悪い、離婚する自分を止めたいと感じている。
離婚しないように綿子にグレードアップした生活を提示することで、綿子に決断を急かしていたんだと思いました」と“内見”のシーンひとつでも、とてもスリリングな攻防があることを推測した。
SYOは「誰に焦点を当てるかで印象がかなり変わるし、俯瞰でみてそれぞれの思惑を推測して楽しむという、若干ホラー的でもある」と映画を評した。

SYOさん(映画ライター)

また松本は「専業主婦は仕事というアイデンティティがないので、良いステータスの旦那さんと結婚していることで自分のアイデンティティが保てるところがある。それを手放す恐怖、私にはこれしかないじゃないという中で、専業主婦として愛しているか分からない旦那さんとの関係を保つには、別の男性と不倫するしかなかった。でもその恋人はいなくなってしまったことで“無”になってしまった状態だったのかもしれませんね。」と私見を語った。

松本千秋さん(漫画家)

私自身だって自分が誰のことが好きで、誰のことがまだ好きか、この人のことをまだ嫌いなのかどうか、分からないことがよくある。

 さらに後半に綿子が見せるある行動について“女性”を感じたと語る松本。「女の人って過去に傷ついた永遠にぶり返して相手を攻めるところがあるんですよね。綿子が言い返すことは全て文則の過去のこと。今話している内容と関係ないのに、それを引きずり出してくる。そこが女性として一番リアルを感じました」と共感を寄せ、
SYOは「男性が全員そうとは限りませんが、どこかその瞬間本気で土下座したら消える、という感覚はあります(笑)」といち男性の意見も挟み、自分と文則を照らし合わせて「自分も文則のように理論武装するところがある。でも映画のように過去の過ちの話をされると黙る(笑)。この映画は教訓にもなりますね」と語ると、「理論武装を聞いてくれる時は相手にまだ愛がある時。いつも向き合ってくれるいい夫と思っていたけど、途中から“この人向き合い好きだな”としか思えなくなってくる。そうなると映画の綿子のように、聞いているのか聞いていないのか分からない状態が出来上がってしまったのではないか。夫婦の歴史が、お互いのテンションの違いを生んでしまったのではないか」と綿子の変化も考察。

またそんな“無”の綿子と文則の会話について「私自身だって自分が誰のことが好きで、誰のことがまだ好きか、この人のことをまだ嫌いなのかどうか、分からないことがよくある。文則から君はどう思っているの?と聞かれても、言わないのではなく、“私も知らない”んだと思う。綿子も文則が好きなのか?愛していたのか?何回も劇中考えていたんだと思う。私は誰が好きなのか?誰が大切?私の経験上、毎日それが変わるから、それを自分で分析出来ていないから綿子の“だんまり”だったのかな、と思います」と感情を表わさない綿子について深読みした。

 最後に松本から「1回見るより、繰り返し見てどんどん分かっていく作品。考察し甲斐のある映画なので、また違った方向から見てもらいたいです」と語り、
SYOは「見た人同士で話しが弾む映画。自分が思っている恋愛の正義・価値観が暴かれてしまう映画なので、この人と今後お付き合いしていきたいと思える人と見て判断材料にするのもいい。人を“ほつれ”させる何かがある」と語り盛大にイベントは幕を下ろした。

映画『ほつれる』は9/8(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー

★映画『ほつれる』情報★






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