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英語が楽天を変えた 単行本 – 2018/8/17

社内に発布されたのは、2010年のある日のことだったそうです。楽天株式会社では、いきなり「社内公用語を英語にします!」ということで、当時メディアでニュースとして複数取り上げられたことを思い出します。

公式文書はもちろんのこと、メールのやり取りや普段の会話もすべて英語を使おうという号令だったそうで、本書によると、三木谷社長がほとんど周囲の役員と相談することもなく、いきなり全社に発表してスタートしたんだとか。外国籍社員も多く働いている会社ですし、事業のさらなるグローバル展開や、そのための人材獲得を考えると理屈にはかなっています。しかし、果たしてどのくらい現実的なのか。実現のためにどんな施策を打っていくのか。そして数年後の結果はいかに? たいへん興味深い実験だなぁと思った記憶があります。

しかし同時に、企業の人事担当である私としては、単によそから見物しておもしろがっている場合ではないという危機感に煽られるような気持ちもありました。今後ますます人材不足が予測される中、“日本語ができる人”という採用条件で絞った瞬間、マッチ件数が激減していく恐れがあるからです。

そんな危機が現実であることがわかってもなお、日本語ネイティブだけが参加している会議でも英語を使えと社員に命じるとすると、にわかには「無理だろう」と言わざるを得ません。そのハードルを越えてこそのブレークスルーなのですが、それを具体的にどう進めようとしたか、その中で働いている実際の社員はどのように感じ、どんな変化が顕在化しているのか。本書は、開始当初から社内に入り込んでアドバイザー的立場で協力してきたハーバードビジネススクール教授がレポートする形で書かれています。

英語公用語化が、日本のすべての会社に必要とはもちろん思いません。しかし、日本と人口減少とテクノロジーの発達を背景に、社会構造がハイスピードで変化しています。事業推進のための人材獲得というテーマに限っても、どこかでドミノ倒しのような問題が急浮上する予感があり、この挑戦価値の評価はまだまだ先になるだろうと思っています。

(おわり)


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